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備忘録、採点表

日本文学

なんて素敵にジャパネスク2 / 氷室冴子

⭐︎⭐︎⭐︎ 氷室冴子の「なんて素敵にジャパネスク」復刻版2。最初は前巻のかろみを踏襲して、あいもかわらず瑠璃姫は 「冗談はよしのすけ。」 なんてセリフを連発して笑わせてくれるが、中盤から後半にかけて徐々に物語はヘビーになっていく。 ネタバレになる…

なんて素敵にジャパネスク / 氷室冴子

⭐️⭐️⭐️ 先日読んだ「ザ・チェンジ」の系譜をつぐ氷室冴子の代表作の一つ、私でも題名くらいは知っている「なんて素敵にジャパネスク」。冊数が多いのでためらっていたが、あかつき姐さんによると第二巻までで十分ということで、復刻版がそこまで出ているので…

屍者の帝国 / 伊藤計劃 X 円城塔

⭐️⭐️ 伊藤計劃の未完の遺作「屍者の帝国」を、円城塔が遺族の了解を得て、3年という年月を費やして完成させた壮大なスケールのSF作品。 とは言ってみたものの、パラレルワールドSFと呼べばいいのか、スチームパンクと呼べばいいのか、19世紀オールスター・…

Self-Reference ENGINE / 円城塔

⭐️⭐️ P, but I don't believe that P. で始まる円城塔の短編集。二部20編で構成され、プロローグとエピローグがつく。 第一部: Nearside う~ん。。。。。 下記のキャッチコピーはよくできている、としか言いようがない。 円城流「夢十夜」だと言われれば、…

The Indifference Engine / 伊藤計劃

⭐️⭐️⭐️ 盟友円城塔の「Self-Reference ENGINE」とよく似た題名の伊藤計劃の短編小説集。実際円城塔と合作した「解説」という実験的な(あまり面白くはないが)作品もある。 元々一つのまとまった短編集として書く(描く)意図があったわけではなく、彼の遺し…

ハーモニー / 伊藤計劃

⭐️⭐️⭐️⭐️ 伊藤計劃の第三作である「ハーモニー」。処女作の「虐殺器官」の後の世界を描きながらも、打って変わって穏やかな題名。巻末対談によると、「虐殺器官」という題名だけで母に本を捨てられてしまった、という少年のブログ記事があって申し訳なく思い…

虐殺器官 / 伊藤計劃

⭐️⭐️⭐️⭐️ 読んでおかねばと思いつつ、未読という作家が何人かいるのだが、伊藤計劃もその一人。この度やっとこの処女作を手に取った。 私は日本のSF小説は海外、特にアメリカのSFに比して停滞気味だと長く思ってきた。実際SFマガジン700の海外篇と国内篇を比…

とっぴんぱらりの風太郎 / 万城目学

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ マキメーこと万城目学の長編時代小説。いやあ畏れ入った。傑作だ。 最初はマキメー流の、ヒョウタンの物の怪(因心居士)に憑りつかれた忍び崩れの少年風太郎(プウタロウ)を主人公としたコミカルな忍者小説かと思わせておいて、最後は大坂夏の…

天子蒙塵 第三巻 / 浅田次郎

⭐️⭐️ 浅田次郎先生のライフワークとも言える、中国史シリーズ「蒼穹の昴」「中原の虹」に続く「天子蒙塵」も早や第三巻。読まねばと思いつつ、他に積読が多くて後回しになっていたが、この壮大なシリーズの完結巻になるという噂の第四巻の予約が始まっている…

月の輝く夜に/ザ・チェンジ / 氷室冴子

⭐️⭐️⭐️ 今年は氷室冴子没後10年とのこと。私はコバルト文庫には縁がなく一冊も読んだことがなかったが、ジブリの「海がきこえる」もこの人の作品だと「本が好き!」で全作レビュー中のあかつき姐さんに教えてもらった。ついでに、初めて読むのなら何がいいか…

偶然の祝福 / 小川洋子

⭐️⭐️⭐️ いやあ、これは驚いた。例えばポール・オースターなんか自分の作品に過去の自作の主要人物を登場させることを得意としているが、記憶に残るかぎり小川洋子ではそんな作品はなかった。 ところがこの短編集には「バックストローク」「ホテル・アイリス…

ヤモリ、カエル、シジミチョウ / 江國香織

⭐️⭐️⭐️⭐️ 久しぶりの江國香織、2014年の作品で谷崎潤一郎賞受賞作。それも、文庫本で460P以上ある長編。内容は江國香織そのものだが、二人の子供、周囲の大勢の大人たち、と多数の視点で細かく小節分けされて物語が紡がれていくため、ものすごく集中力を要す…

私の家では何も起こらない / 恩田陸

⭐️ とことんつまらない。昔読んだホラーだか幽霊話だかのオマージュらしいけれど、どの話も水準以下。もっと凄いものを書ける人がこの程度の短編でお茶を濁しておいて、最終話で一丁前のゴタクを並べている。ファンをなめるなよな、という感じ。内容は書く気…

銀河英雄伝説 全15巻BOX SET / 田中芳樹

⭐️⭐️⭐️⭐️ 銀河英雄伝説、通称「銀英伝」、SFファンのみならず、本好きアニメ好きの方なら知らぬ者はないだろう傑作大河スペースオペラ、田中芳樹の代表作である。 もともとは徳間書店から出ていたが、田中芳樹曰く「創元SF文庫を終の棲家と定めた」そうで、…

吸血鬼 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀を読むシリーズもこの作品でついに(小説は)終了である。2016年の「吸血鬼」。参った。ひれ伏す思い、とはこのことだ。 この物語は限りなく陰鬱で限りなく寒々として限りなく残酷で限りなく狡猾で、そして限りなく美しい。至高の佐藤亜…

夢違 / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️ 提督とあかつき姐さんがレビューしてたので、興味を惹かれた。なんにせよ、恩田陸さんだし。 ちなみに題名は「ゆめたがい」ではなく、「ゆめちがい」だそうだ。終章で出てくるある有名な仏像の名前から題名がとられていると考えてよいと思う。となる…

激しく、速やかな死 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎ 今のところ、「天使」のスピンオフ集「雲雀」を除けば唯一の短編集である。例によって舞台はフランス革命前後の欧州がメインだが、珍しく当時の新天地アメリカも登場する。もちろん佐藤亜紀流で、ではあるが。なお本作も本文中では余計な説明一切なし…

蛍、納屋を焼く、その他の短編 / 村上春樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 村上春樹の初期短編集で、特に「蛍」は好きな作品である。この作品はよく知られているように、後に大ベストセラーとなった「ノルウェイの森」の導入部に丸ごと底本として使われた短編である。 しかし、その膨らませ方は私にはあまり好ましいものと…

金の仔牛 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀を読むシリーズ、いよいよ残り少なくなってきた。今回は2012 年の作品「金の仔牛」、元祖バブル、18世紀フランスでジョン・ローの施行した「ル・システム」という金融実験に踊り踊らされる人々を面白おかしく描いた群像劇である。 佐藤流ユ…

醜聞の作法 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀を読むシリーズ、今回は2010年発表の「醜聞の作法」。革命前のフランスはパリで起こる騒動を、いかにも翻訳フランス文学的な文章と書簡体小説という形式で描き出す。 実際ディドロの小説のパスティーシュ的な部分もあり、これを当時のフラン…

空海の風景 / 司馬遼太郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 最近司馬遼太郎先生の本を読んでいるのは、この作品を再読したいと思っていたから。「本が好き!」をやめる前から考えていたので、ずいぶん遠回りしてしまったことになるが、ようやく再読した。 できれば発刊当時の感動を味わうべく単行本で読み…

ミノタウロス / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀を読むシリーズ、前回の「1809」から、レビュー済の傑作「天使」「雲雀」を経て、いよいよ代表作「ミノタウロス」、2007年の作品に辿り着いた。この時点で彼女を新人とするのもおかしな話だが、第29回吉川英治文学新人賞を受賞している。そ…

1809 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀の長編第五作「1809 ナポレオン暗殺」(1997)。前作「モンティニーの狼男爵 」に続き欧州が舞台。でもフランスの話じゃなくて、ナポレオンのオーストリア攻めの頃のウィーンが主舞台。題名の通り、1809年の有名な「シェーンブルンの和約」…

李陵 山月記 / 中島敦

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 先日読んだ万城目学の「悟浄出立」、その表題作の執筆動機となった中島敦の「悟浄出世」を探していたところ、この小学館文庫に収録されていた。 迷いに迷って、偉い先生(と呼ばれている人)の元を次から次へと訪れ教えを乞うても、自分というも…

大盗禅師 / 司馬遼太郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 司馬遼太郎先生の作品は大体知っているつもりだが、先日本屋で司馬先生のコーナーを眺めていて、ふと目についたのがこの作品。この題名は見たことがない、未読は間違いない、ということで購入。 解説によると、全集未収録の幻想歴史小説だそうで、昭…

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 / 万城目学

⭐︎⭐︎⭐︎ 万城目学のもう一つの未読作品。前回の「悟浄出立」とは違ってユーモアを交えたほのぼのしみじみ系で、どちらかと言えばジュブナイル系である。 こういうものも書けるのだなあと感心する一方で、わざわざマキメーでこういうものを読まなくても、とい…

悟浄出立 / 万城目学

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マキメーこと万城目学の未読作が文庫本になっていたので読んでみた。中国の有名な古典や歴史に題材をとった5編の短編集。意外や意外、真面目な作品ばかりで驚いた。中島敦にインスパイアされて書いたという説明に納得。マキメー独特のユーモアは封…

朝日のようにさわやかに / 恩田陸

⭐︎⭐︎⭐︎ やってしまった。超多作の恩田陸さんなので、重複買いには十分気をつけていたかいこが、初めての二度買い。目次の一作目の題名を見て愕然。「水晶の夜、翡翠の朝」。。。そう、理瀬シリーズのヨハン君の話じゃないか。 まあせっかく買ったんだし読ん…

砂浜に坐り込んだ船 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 久々の池澤夏樹。久しぶりに何かナッキーの本を読みたいなあ、と思っていたところへのタイミング良きFBフレンドのお勧め、ありがたし。彼女ほどのレビューは書けないが、思うところを少し。 この作品は短編集だが、表題作をはじめとして、前半は3.11…

尻啖え孫市(上)(下) / 司馬遼太郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 和田竜の「村上海賊の娘」で久しぶりにその名前を目にした雑賀の孫市。この男の小説と言えばこれしかない、という決定版。司馬遼太郎先生の「尻啖え孫市」だ。 『織田信長の岐阜城下に、真っ赤な袖無羽織に二尺の大鉄扇、「日本一」と書いた旗を従…