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備忘録、採点表

日本文学

きらきらひかる / 江國香織

⭐️⭐️⭐️ シャンパンを陽の光に透かして見るようなような透明感の中に、切なさの細かい泡が立ち上っていく、江國香織らしいラブ・ストーリー。

こうばしい日々 / 江國香織

⭐️⭐️⭐️⭐️ 全く関係のない二つの中編小説が一冊の文庫本に収められ、見事に呼応しあっている。十代前半の男女を主人公に据えた語り口が上手く、初期の作品ながらもう江國香織の天性の才能が花開いている。

泣き虫弱虫諸葛孔明 第5部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 嗚呼、星落秋風五丈原。泣き虫弱虫変質者、そして最高にダンディイな諸葛亮孔明の講談、これにて机を叩くを、さて、終えなん!酒見賢一渾身の最終巻、五丈原での孔明の病死までを面白おかしくと真面目さを両立させて描き切った、その力量に脱帽。…

回転ドアは、順番に / 穂村弘、東直子

⭐️⭐️⭐️⭐️ NHKドラマ「この声をきみに」で麻生久美子と竹野内豊が朗読して話題の恋愛問答歌集。不思議なスリルと高揚感、そしてエロティシズム。う~んこれはいったい何?と、何度も読み返してしまう。 穂波(竹野内豊): 観覧車 昇るよ 君はストローをくわえ…

彼女がその名を知らない鳥たち

⭐️⭐️⭐️⭐️ 久し振りに映画を見て泣いた。沼田まほかるの原作も知っているのに、泣くような映画じゃないのに、最後には涙が知らないうちに出ていた。阿部サダヲの演技がほぼ全てだ。改めて凄い俳優だと思った。蒼井優も体当たりの演技でよく頑張った、と思う。…

米澤穂信と古典部 / 米澤穂信

⭐️⭐️⭐️ 米澤穂信の新刊。といっても「氷菓」実写化にあわせた角川書店のメディアミックス戦略の一環。小説はおまけで、古典部シリーズの舞台裏公開的ムック本。古典部メンバーの本棚はそれぞれの個性を反映させて面白いし、古典部ファンには垂涎、読み応えあ…

サロメ / 原田マハ

⭐️⭐️ 原田マハのアート小説シリーズ。オスカー・ワイルドの「サロメ」の挿絵画家オーブリー・ビアズリーと、その姉メイベルが今回の主人公。今回も現代パートと過去パートがあるが、現代パートはほとんど機能していない。文章も相変わらずの修辞の仰々しさが…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第3部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一流三国志講談第三部。いよいよ赤壁の戦いへと突入。今回の表主役は呉のスーパースター美周郎こと周瑜公瑾。呉の期待を一身に背負って赤壁の戦いに勝利し、なお戦闘意欲は衰えず劉備孔明を亡き者にしようとするも病に斃れる。裏主役は敗残の劉…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第1部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一の「陋巷に在り」に次ぐ長編。前作の雰囲気と異なり、変人酒見の面を強く押し出した、はっちゃけたシニカルで笑える三国志となっている。まずは三顧の礼、マーベラス・クレバー・ワン、スリーピング・ドラゴン、ミステリアス・サノバビッチ…

ピュタゴラスの旅 / 酒見賢一

⭐️⭐️ 中島敦賞受賞作の初期短編集。作者自身は「バランスを取り過ぎている」と思っておられるが、「そうか~?」という雑多な短編の寄せ集めで出来不出来はあり。話としては「虐待者たち」が一番面白く、歴史ものとしては表題作より「エピクテトス」の方が充…

語り手の事情 / 酒見賢一

⭐️⭐️ これも酒見賢一の未読の落穂ひろい。英国ヴィクトリア朝のある屋敷を舞台とした妄想と倒錯の性の饗宴。作者が父親にかんかんに怒られたという異色作だが、あとがきがさらに凄い。酒見賢一に性的タブーはない!

童貞 / 酒見賢一

⭐️⭐️ 酒見賢一の中国史ものではあるのだが、異色の作品。太古の黄河の氾濫に悩まされるある邑は完全な母系社会で女尊男卑の世界。いきなり治水を成し得なかった男の酷たらしい処刑で始まり、それを見ていたある少年が成長とともにこの邑のしきたりを拒否し、…

木漏れ日に泳ぐ魚 / 恩田陸

⭐️⭐️ 大風呂敷広げっぱなし、エンディング投げっぱなしジャーマンの恩田陸にしては珍しく、あっさりと破綻もなく語り終える物語。明日同居を解消する男女が夜を徹して語りあう二人の複雑な家庭事情と互いの思い、そしてそれにまつわるある変死事件。交互に綴…

美しい星 / 三島由紀夫

⭐️⭐️⭐️⭐️ 三島由紀夫が冷戦時代に書いた異色SF。UFOを見た家族が自分たちが宇宙人だと信じ込み人類啓蒙救済を目指すが、一方同じくUFOを見た仙台の助教授たち三人も宇宙人であることを悟るが逆に人類は滅亡すべきだと考える。両者を仲介する右翼半日教組政治…

アミダサマ / 沼田まほかる

⭐️⭐️⭐️⭐️ 今映画界はちょっとしたまほかるブームだが、沼田まほかるの長編小説は五作しかない。この作品はその中でも特異な、彼女の僧侶としての宗教観を前面に押し出した作品。悲痛な最終章とそれを救済するエピローグは、まほかる渾身の文章だ。

ホワイトラビット / 伊坂幸太郎

⭐️⭐️⭐️⭐️ 伊坂幸太郎最新作は、クロスカッティング手法を用いた映画的な展開とトリックが面白い。高台の家での人質立てこもり事件に「オリオン座」と「レ・ミゼラブル」を絡める語り口はやっぱ伊坂流。あの男も健在だ!

美しの神の伝え / 萩尾望都

⭐️⭐️⭐️ これも「ピアリス」と同じく、萩尾望都SF原画展を契機に発売された新刊。全くの新作ではなく以前からある「音楽の在りて」という短編小説集13作品に「クリシュナの季節」「左手のパズル」とショート漫画「いたずら らくがき」の三作を追加したもの。…

刺繍する少女 / 小川洋子

⭐️⭐️ 小川洋子1996年の短編集。十作収められているが、はっきり言って小川洋子としてはそれほどレベルは高くない。ただ、何かを喪失していく人々の、彼女らしいディテイルの書き込みはやはり奇妙で残酷で不条理で美しい。「森の奥で燃えるもの」が一番良かっ…

魔王 / 伊坂幸太郎

⭐️⭐️⭐️⭐️ 大義なき衆議院解散総選挙が噂される今読んでみるのもいいかもしれない、非政治的人間伊坂の政治的作品。ファシストはまずは正論を吐く。国民は魔王がやってきたのに気づかない。

寡黙な死骸 みだらな弔い / 小川洋子

⭐️⭐️⭐️⭐️ 11の短編が絡まり合いもつれながら織りなす残酷で淫らで静かで美しい弔いの物語。之もまた紛れもない小川洋子の世界である。

氷山の南 / 池澤夏樹

⭐️⭐️⭐️⭐️ 2009-2010年に新聞連載された池澤夏樹の長編小説。南極の流氷をオーストラリアに曳航して灌漑水に利用とする壮大な計画、その船に密航したアイヌと和人のハーフの青年の成長譚、その船の多彩な国籍、宗教を持つ人々が活写され、前半は清々しい雰囲…

インシテミル / 米澤穂信

⭐️ 米澤穂信のミステリに関する知識を総動員したクローズドサークル内の12人の殺人ゲーム。実験的作品で出世作で映画にもなったが、やっぱり無意味な殺人劇は性に合わない。

終わりなき夜に生れつく / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️ 前回紹介した恩田陸の長編「夜の底は柔らかな幻」のスピンオフ短編4編。「夜の底」はとんでもない方向に逝ってしまったが、キャラはよく書けていた。そのキャラの昔のエピソードだけあってうまくとまっており、安心して読める。

夜の底は柔らかな幻 / 恩田陸

⭐️⭐️ 短編「イサオ・オサリヴァンを探して」から恩田陸版「地獄の黙示録」に膨らましきれず、日本に舞台を移した作品。在色者というESPが勢揃いしてバトルロワイヤルを繰り広げるかと思いきや、見事に期待を裏切る恩田陸おそるべし。

四畳半王国見聞録

⭐️⭐️⭐️ 究極の森見登美彦「四畳半」「腐れ大学生」シリーズ。もうここまでくると究極の阿呆小説、最初からトライするような無謀な真似はやめたほうがいい。モリミンを極めた人にのみ許される禁断の阿呆神世界。

恋文の技術 / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 美しい装丁と題名に騙されると、大変なことになる、おっぱい満載抱腹絶倒の文通修行集。さすがモリミン、失った読書時間はプライスレス!

きつねのはなし / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 森見登美彦の表の顔が「有頂天家族」のたぬき系でだとすれば、このきつね系は底知れぬ闇を内包した裏面、彼自身が「三男」と呼ぶユーモアゼロのホラー系。同じ京都が舞台だが、芳蓮堂という骨董屋、狐の面、龍の根付け、そして闇に蠢く胴の長いケモ…

星に降る雪 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ カミオカンデのある飛騨を舞台にした短編「星に降る雪」とギリシアのクレタを舞台にした中編「修道院」の二編が収められている。どちらも亡くした友人に縛られている男と女の物語。池澤らしい語り口は健在だが饒舌に過ぎる部分もある。 ちなみにニュ…

光の指で触れよ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎ 傑作「素晴らしい新世界」の続編で、林太郎が社内不倫をしてしまいアユミが幼い可南子(キノコ)を連れて欧州へ去ってしまうところから始まる破壊と再生の物語。今回も膨大な知識・知見を取り入れた教養小説となっているが、前作のような注意深い中立性…

四畳半神話体系 / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 京都と腐れ大学生を書かせたら右に出るものはない森見登美彦、デビュー作「太陽の塔」の延長線上にある作品。新入生勧誘ビラ四枚のそれぞれを選択した四つの大学生活。結局どうやっても腐れ大学生になる運命なのだが、パラレルワールドが干渉しあい…