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備忘録、採点表

日本文学

尻啖え孫市(上)(下) / 司馬遼太郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 和田竜の「村上海賊の娘」で久しぶりにその名前を目にした雑賀の孫市。この男の小説と言えばこれしかない、という決定版。司馬遼太郎先生の「尻啖え孫市」だ。 『織田信長の岐阜城下に、真っ赤な袖無羽織に二尺の大鉄扇、「日本一」と書いた旗を従…

アンジェリーナ 佐野元春と10の短編 / 小川洋子

⭐︎⭐︎ 以前「本が好き!」で踊る猫さんのレビューを絶賛したことがある小川洋子の短編集。でも個人的にはこの本はMOTO the Lionこと佐野元春の大ファンの私としては逆にレビューし辛い。小川洋子らしい小説もあるのだが、全体としてMOTOの音楽に比べると大し…

真説宮本武蔵 / 司馬遼太郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 司馬遼太郎の剣豪を主題にした短編集。 表題作は、吉川英治版でない、漫画バガボンドでもない、限りなく事実に近いだろう宮本武蔵を活写した司馬遼太郎の真骨頂。 もちろんおつうは出てこない(あれは吉川英治の創作)。有名な佐々木小次郎との巌流島…

クレオパトラの夢 / 恩田陸

⭐︎⭐︎ オネエ喋りの神原恵弥(めぐみ)シリーズ第二弾。「MAZE」があまり面白くなかったので、随分ほったらかしにしてあったが、やっと読んだ。 恩田陸と言えば「大風呂敷広げ過ぎの畳み忘れ」が特徴なのだが、これは逆。前半思わせぶりにいろんな謎を散りば…

神様のボート / 江國香織

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ あり得ないような設定をするっと読ませてしまう江國香織。今回はちょっと狂気を孕んだ母葉子と普通の娘草子の物語。二人の語りが交互に入り、娘の成長とともに少しずつ少しずつ二人の心の距離が開いていくところが読みどころで、最後の一文まで気…

落下する夕方 / 江國香織

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 久々の江國香織の小説は慈雨のように私の心を満たした。 原田知世と菅野美穂の共演で映画化された作品「落下する夕方」です。映画は率直なところ凡庸な出来で、不思議な、というか妙な雰囲気で、この二人の魅力が今一つ伝わってきませんでした。こ…

李鷗 / 高村薫

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 高村薫流BLの極みと言える、中国人ヒットマン李鷗 。久々に再読、記憶違いも沢山あったが、やっぱりいい。李歐よ、君は大陸の覇者になれ、僕は君についていく夢を見るから。 李歐 高村薫 講談社 780円 Amazonで購入書評 先日レビューした佐藤亜紀…

スウィングしなけりゃ意味がない / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎ 「馬鹿の帝国」対「スイングユーゲント」。ハンブルグの上流階級の息子たちのナチへの反抗と悲劇をスイングジャズに乗せてコミカルにシニカルに描き尽くしているが、文章が平易すぎて佐藤亜紀とは思えない。 佐藤亜紀を読むシリーズ、年代順に読んで…

梟の城 / 司馬遼太郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 司馬遼太郎氏の長編デビュー作にしてこの完成度。直木賞受賞も当然だろう。その後のエッセイ的スタイルとは全く違う普通の忍者小説だが、そういうものを書いても一流だったことがよくわかる。 「司馬遼太郎の初長編作品にしてこの完成度。非情を旨…

鏡の影 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀第三作。舞台は再び欧州、時代はバルタザールよりはるかに遡り16世紀。異端の学僧ヨハネスの見る中世キリスト教社会の諸相。後に平野啓一郎パクリ疑惑、新潮社引き上げ事件をも引き起こした難解な書。 鏡の影 佐藤亜紀 新潮社 円 Amazonで…

戦争の法 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀第二作。日本に舞台を移したポリティカル・フィクションだが、率直に言ってラスト近くの不思議で切ないシーンまでは退屈。文章は高村薫、アイデアと情報は村上龍、の「亜(紀)流」みたいな。 戦争の法 佐藤亜紀 Tamanoir 円 Amazonで購入書評

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ四 / 夢枕獏

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ いよいよ最終部。夢枕獏先生自画自賛の大団円。全ての伏線を回収し、最後は長恨歌全文掲載の大サービス。先生見事なり。それにしてもフィクションからでも、唐で金剛・胎蔵の両密法を灌頂され、真言宗の祖となった空海の凄さは伝わってくる。 沙…

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三 / 夢枕獏

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ いよいよ佳境 沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ三 夢枕獏 角川書店(角川グループパブリッシング) 660円 Amazonで購入書評

隣のずこずこ / 柿村将彦

⭐︎⭐︎ 復活した日本ファンタジーノベル大賞2017受賞作。萩尾望都、森見登美彦、恩田陸大絶賛、全員一致で選ばれたという傑作らしいが。。。この三人が一致?かえって不安なような。。。という予感は見事に当たった。 隣のずこずこ 柿村将彦 新潮社 円 Amazon…

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二 / 夢枕獏

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 唐に渡った空海の活躍を描く夢枕獏のシリーズ、第二巻。「長恨歌」の白居易(白楽天)も登場、楊貴妃の悲劇も明らかとなる。 沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ二 夢枕獏 角川書店(角川グループパブリッシング) 660円 Amazonで購入書評

沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一 /夢枕獏

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 密教の真髄を求め唐に渡った空海の活躍を描く歴史ファンタジー、第一作。映画「KU-KAI 美しき王妃の謎」の原作。映画はイマイチだったが、さすが夢枕獏、原作は面白い。 沙門空海唐の国にて鬼と宴す 巻ノ一 夢枕獏 角川書店(角川グループパブリッシ…

バルタザールの遍歴 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀の処女小説にして第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。文章の完成度と欧州現代史の知識を縦横無尽に使いこなす技術は圧倒的。ただ、その完成度に比して着想をうまく活かしきれていない。 バルタザールの遍歴 佐藤亜紀 文藝春秋 660円 …

South of the Border, West of the Sun / Haruki Murakami

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 村上春樹の「国境の南、太陽の西」の英訳版。訳者はこれが初めての長編だったPhilip Gabriel氏。村上春樹氏の作品中最高のファム・ファタール、島本さんを英語で堪能できる。 South of the Border, West of the Sun HarukiMurakami Vintage 1101円 …

森崎書店の日々 / 八木沢里志

⭐️⭐️⭐️ 失恋した女性が、苦手と思っていた古書店を営む叔父に心癒されていく物語。古書店を扱った作品の中ではかなり好きな作品の一つ。映画では内藤剛志さんと菊池亜希子さんが好演されていた。 森崎書店の日々 八木沢里志 小学館 500円 Amazonで購入書評

天使 / 佐藤亜紀

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 気を許せば脳を燃やしてしまう火酒のような文章。知性と教養を強要する内容。思惟できない低能な者は読まなくていい、とでも言いたげな高慢なまでの読者への挑戦。大好物だ。ちなみにこれでもSF。 天使 佐藤亜紀 文芸春秋 620円 Amazonで購入書評

真鶴 / 川上弘美

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 夫に失踪された女が、現実界東京と「もてあそぶほど死は遠くにない」場所真鶴を「後ろについてくる」女と行き来する、私にはおそらく永遠に読み解けない物語だが、そうであっても戦慄さえ覚える。川上弘美の代表作と言って過言ではない傑作。 真…

となり町戦争 / 三崎亜紀

⭐️⭐️ 三崎亜紀が小説すばる新人賞を受賞した作品で映画化もされたが、映画は酷いものだった。原作はそれに比べるとよくできていた。とはいうものの文章が生硬すぎる。 となり町戦争 三崎亜記 集英社 500円 Amazonで購入書評

ニシノユキヒコの恋と冒険 / 川上弘美

⭐️⭐️⭐️ 「女の人をきちんと愛せない」のに、落とし方、キスやセックスのテクニックは天才的、別れても何故か憎めないシスコン「ニシノユキヒコ」あるいは「西野幸彦」と関わった女性たちの物語。こんな都合のいい男がいるのか、と男性作家が書いたら袋叩きに…

シュガータイム / 小川洋子

⭐️⭐️ 初期作品ながらのちの小川洋子らしさはある。終盤が凡庸。 シュガータイム 小川洋子 中央公論社 520円 Amazonで購入書評

おめでとう / 川上弘美

⭐️⭐️⭐️ ほっこり明るく深々しみる、よるべない恋の十二景、という文庫版裏表紙のアオリがうますぎて、それ以上書くことがない。川上弘美の初期のゆるさを引きずっている短編集 おめでとう 川上弘美 新潮社 420円 Amazonで購入書評

水声 / 川上弘美

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 川上弘美の比較的最近の作品。姉と弟の5五年間を第一軸とし、主人公の心を支配し続けるママを第二軸とした禁断の物語。 水声 川上弘美 文藝春秋 円 Amazonで購入書評

椰子・椰子 / 川上弘美

⭐️ 川上弘美とイラストレーター谷口マオのコラボ。うそ日記、うそ小話、シュールとまでも行かないレベルの低い話ばかり。関西弁をバカにしてるところが気に入らない。残念。 椰子・椰子 川上弘美 新潮社 500円 Amazonで購入書評

ちぐはぐな部品 / 星新一

⭐️⭐️⭐️⭐️ ショートショートの名手星新一の作品30編を収録。「殺し屋ですのよ」等からまだ短編集に収録していなかった作品を集めているので雑多な内容となっているのでこの題名にしたとあとがきで書いておられる。しかしクオリティは驚くほど一定していてさす…

溺レる / 川上弘美

⭐️⭐️ 「神様」 の次に来る1999年の短編集。川上弘美流世界観の面妖度はますます嵩じ、一方であいかわらずよく食べよく飲む。文体は確立されてきているが、内容の無さに比べて文学賞取りすぎの感は否めない。 溺レる 川上弘美 文藝春秋 450円 Amazonで購入書評

神様 / 川上弘美

⭐️⭐️ 川上弘美のデビュー作「神様」を筆頭にした九編の短編集。くまにさそわれて散歩に出る。のはいいけれど、気の抜けたサイダーのようなちょっと物足りない寓話集。 神様 川上弘美 中央公論新社 480円 Amazonで購入書評