薔薇のなかの蛇 / 恩田陸
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初期の恩田陸ファンにこよなく愛されてきた「理瀬シリーズ」の最新刊「薔薇の中の蛇」です。焼き粉の早速のレビューに書いてあるように待たせること
17年! 長すぎるわ!!
ということで「三月は深き紅の淵を」(1997)、「麦の海に沈む果実」(2000)、「黒と茶の幻想」(2001)、「黄昏の百合の骨」(2007)と順調に進んできていきなり17年空いたわけですが、その間全く書いていなかったわけではなく、「メフィスト」という雑誌に不定期連載を続けて何とか完成したというのが実情、ご本人のインタビューを読むと
ひとえに私の体力が落ちたことや、他の仕事との兼ね合い
が原因だそう。今更直木賞とらんでもええから、こっちを先にして欲しかった、というファンは多いはず。
さてこのシリーズ、北海道、屋久島、長崎と舞台を変えつつ、水野理瀬という深窓の令嬢的お嬢様が結構タフなヒールに育っていき、欧州マフィアの後継でいかにもな青年ヨハンとのコンビも確立し、ファンはその将来を嘱望していたわけですが、何と今回は日本を飛び出して英国はソールズベリーが舞台となります。
ストーンヘンジで有名なところですが、早速その環状列石を利用して陰惨な殺人事件を導入部として描き、本編に入ると「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった某成り上がり貴族の屋敷にリセ・ミズノは登場。
そこでド派手に殺人事件やら毒殺未遂やら主人失踪やらが起こり、お決まりのお宝鑑定団もあり〜ので盛り沢山。いかにもな本家英国の本格推理小説的に話は進んでいき、そこにスコットランドヤードやMI6、どっかのスパイさんたちも立ち回る中、我がリセ様は神秘的な雰囲気を湛えつつ、いろんな蘊蓄や推理を随所で披露し大活躍、当然ながら貴族の御曹司たちもドキドキ(笑。
一方のヨハンはそこには登場せず、自分の邸(別荘?)で誰か友人の男性と会話している様が随所に挿入されるだけ。こちらは安楽椅子探偵小説の雰囲気。
ということで古今東西のミステリを読み込んできた恩田さんらしい、圧倒的な筆致でグイグイ読者を引っ張っていくのはいいのですが、Kindleで90%読み進んでも一向に事件収束の気配がなく、謎解きが始まらない。
そう、恩田陸ファンなら思い当たるはず。
これは、典型的な恩田流「投げっぱなしジャーマン」「風呂敷広げすぎの畳み忘れ」で終わるのではないかと!
結論を言うと、一応何となくこれはこう言う事件だったんだな、と言う謎解きはなされ、理瀬とヨハンがソールズベリにやって来た目的意図は明かされますので「投げっぱなしジャーマン」ではないのですが、風呂敷広げすぎ感は否めない、みたいな感じでした。
恩田陸ファンにはこのスカされかたがたまらないんですが、本格推理小説ファンなら怒り出すんじゃないかと思います。
終わり。。。
最後に一言: 題名4割、内容6割がモットーの恩田陸さんなので、まあバランス的にはこんなもんかもしれない。