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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

書籍

猫を捨てる 父親について語るとき / 村上春樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 先日紹介した村上龍の新作「MISSING」では、龍が初めて母の歴史を語っていましたが、この最新エッセイでは村上春樹がついに不仲だった父について重い口を開いています。 あとがきで彼自身も語っていますが身内のことを書くのはけっこう気が重いことで…

失われた時を求めて 11 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐ 「失われた時を求めて」第五篇「囚われの女」も後半に入ります。まずは本篇の構成をおさらいしておきます。恋人アルベルチーヌの同性愛疑惑に駆られた「私」が、避暑地バルベックからパリに彼女を連れ帰り、自宅に半幽閉状態にした秋から春までが語ら…

失われた時を求めて 10 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎ 岩波文庫版の「失われた時を求めて」も第10巻、第5篇「囚われの女」に入ります。ここから先はプルーストの死後、遺稿を元にして出版が続けられたので、本文の解読や配列、改行の有無、イタリック体使用の有無等、刊本による異同がかなりあるそうです…

超動く家にて / 宮内悠介

☆☆☆ 宮内悠介を読もう、三作目は前作に続きお笑い系作品「超動く家にて」です。宮内さん待望の初「あとがき」によりますと、 これまで未収録であった短編やショートショートのうち、ネタに偏った作を集めた 16編 が収められています。 最初にちょっと真面目…

失われた時を求めて 9 / マルセル・プルースト、吉川一義

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」岩波文庫版も第9巻に入ります。サブタイトルは「ソドムとゴモラ II」で、後半第二、三、四章が収められています。 舞台は前巻に引き続き避暑先であるノルマンディー地方ですが、ホテルのあるバルベッ…

逆ソクラテス / 伊坂幸太郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私のお気に入りの作家伊坂幸太郎待望の新作で、少年少女の学校生活の思い出を描いたライトな作品集となっています。 あいかわらず飄々とした筆致なのでファンとしては安心して読めるのですが、彼にしては珍しく低年齢層を主人公に持って来たな、と…

失われた時を求めて 8 / マルセル・プルースト、吉川一義

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 20世紀フランス文学の記念碑的大作「失われた時を求めて」もいよいよ後半、第四篇「ソドムとゴモラ」に入ります。ってか、これだけ読んできてまだ折り返し地点なのか、と思うと気が遠くなりそうなんですが。。。 題名の「ソドムとゴモラ」は皆さん…

スペース金融道 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読もうシリーズ2本目は面白いのが読みたくて「スペース金融道」にしました。なにわ金融道スペース篇みたいなベタな作品かと思いきや、SFと経済小説を融合させて結構ドライでシニカルな笑いをかぶせた、かなりハイブロウな作品になっていま…

彼女がエスパーだったころ / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ ポスト伊藤計劃として注目され、今や日本を代表するSF作家となっておられる宮内悠介さん。以前「人工知能の見る夢は」というアンソロジー集でショートショートを読んだだけだったのですが、最近efさんが精力的にレビューされておられるので気になって…

時代へ、世界へ、理想へ 同時代クロニクル2019→2020

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私が尊敬してやまない孤高の作家高村薫女史の新刊である。今回は小説ではなく評論集、週刊サンデー毎日誌の「サンデー時評」に2019年1月から2020年3月まで掲載された時評の単行本化である。 歯に衣着せぬ高村薫女史のこと、帯からして煽ること煽る…

ドミノ IN上海 / 恩田陸

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ こういう時節ですから、お気楽脳天気な作品を。。。 こういう時節に中国が舞台の作品をレビューしてどうする、という声も聞こえますが。。。 めげずにいきます! 「蜜蜂と遠雷」で直木賞を獲ってしまい、すっかり真面目な作家だと思われてしまって…

ままならないから私とあなた / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、今回は「ままならないから私とあなた」です。2016年の作品で昨年文庫化されました。 「レンタル家族」 「ままならないから私とあなた」 の二作が収録されています。なお単行本化されるにあたり「ままならないから私とあ…

MISSING 失われているもの / 村上龍

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私の世代には絶大な影響力のあったW・MURAKAMIの一人村上龍の、 「オールド・テロリスト」以来5年ぶりの長編となります。 1976年の衝撃のデビュー作「限りなく透明に近いブルー」以来、殆どの小説につきあってきましたが、今回は本当に驚きました…

もういちど生まれる / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、今回は2011年の「もういちど生まれる」です。大学4年時に書かれた「星やどりの声」(2010)の一年後、西加奈子さんの解説によると、サラリーマンと作家の兼業時代の作品ですが、前作から著しい進境を見せていると感じま…

バベル九朔 / 万城目学

⭐︎ 面白くてサクサクっと読める本がないかな、と探していてみつけたのがこの文庫本。モリミーのライバル、マキメーこと万城目学の「バベル九朔」です。2016年の作品で、昨年文庫化されました。 俺は5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしながら作家を…

約束された移動 / 小川洋子

⭐︎⭐︎⭐︎ 久々の小川洋子。去年末に出た新刊です。 「ブクレコ」や「本が好き!」などで私はこれまで、 「静謐で美しい」 「どこか狂っている世界」 「独特のエロティシズム」 「小川洋子は細部に宿る」 といった表現で小川洋子を評価してきました。 今回も例…

失われた時を求めて 7 / マルセル・プルースト、吉川一義訳

⭐︎⭐︎⭐︎ 前回レビューに書きましたように、高遠弘美氏訳の光文社古典新釈文庫版「失われた時を求めて」は現在第六巻までしか刊行されていません。そこで、せめて第三篇「ゲルマントのほう」だけでも読みきっておこうと思い、進行を同じくする岩波文庫版で第七…

星やどりの声 / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、今回は「星やどりの声」です。 星になったお父さんが残してくれたもの―喫茶店、ビーフシチュー、星型の天窓、絆、葛藤―そして奇跡。東京ではない海の見える町。三男三女母ひとりの早坂家は、純喫茶「星やどり」を営んでいた…

少女は卒業しない / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、今回は朝井リョウが本領を発揮する学園群像劇「少女は卒業しいない」です。 今回は舞台を廃校が決定した田舎の高校の卒業式の一日に絞り込み、その早朝から次の夜明けまでに起こる七つの物語で、七人の少女の七つの別れ…

巴里マカロンの謎 / 米澤穂信

⭐︎⭐︎⭐︎ 本が好き!で風竜胆さんがレビューしておられて、え、今頃新作?と驚きました。私の大好きな米澤穂信の11年ぶりの「小市民」シリーズ新作「巴里マカロンの謎(THE PARIS MAKARON MYSTERY)」です。 ご存知ない方のために一応説明しておきますと、この…

世にも奇妙な君物語 / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ もう「その昔」と呼ばないといけないのかと時代の流れを感じますが、フジテレビが隆盛を誇っていた頃の看板番組の一つに、タモさんが司会進行役をつとめる「世にも奇妙な物語」がありました。日本版「ヒッチコック劇場」とでもいうべき内容で、君塚良…

Tender Is the Night / F. Scott Fitzgerald

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ Already with thee! tender is the night, ------- But here there is no light, Save what from heaven is with the breezes blown Through verdurous glooms and winding mossy ways. (Ode to a Nightingale by John Keats) すでにして汝(なれ)…

武道館 / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウの作品をボツボツと読み進めているが、今回はこの「武道館」。AKB48が隆盛を極めた時代の女性アイドルグループの成立から「武道館」公演を成功させるまでを、いつものようにちょっと斜に構えるのではなく、もうど真ん中どストライクを狙っ…

アノニマス・コール / 薬丸岳

⭐︎ 本が好き!で塩味提督が褒めておられた本。ブックオフ で見かけたので買って読んでみた。よくできた和製ハードボイルド風味誘拐ミステリではあるのだが、私には合わないなあ、というのが率直な感想。 いきなり不祥事で警察を辞め離婚もしたらしい中年男が…

EXHALATION / Ted Chiang

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 「The Story of Your Life(あなたの人生の物語)」でアメリカSF界を席巻したTed Chiang(テッド・チャン)待望の新刊「EXHALATION(息吹)」である。彼の作品はハイレベルのハードSFであり、訳なしで読むのは相当難しいと前作で感じたので、今回は邦…

黄金列車 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎ 2020年初のブックレビューである。思い起こせば、去年の今頃は佐藤亜紀の作品群に没頭していた。その最新刊を年初に持ってこれるのは大変うれしいことで、満を持して読んだ。 「吸血鬼」でヨーロッパの落日を描き切り、一転して「スウィングしなけり…

とるとだす / 畠中恵

⭐︎⭐︎⭐︎ 畠中恵さんのしゃばけシリーズ文庫版最新刊の第16巻。今回も短編五篇の構成。若だんなの父大店長崎屋の主人藤兵衛が倒れたという設定で、一太郎の成長を促す回となっている。藤兵衛の倒れ方と最終的な治り方にかなり無理があるが、それぞれの作品はよ…

失われた時を求めて 6 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 光文社古典新釈文庫版「失われた時を求めて」は2019年末現在六冊が刊行されており、現時点での最終巻となる。本巻には第三篇「ゲルマントのほうへ(I)」の後半と「同(II)」の前半が収められている。 三冊(予定)に分かれたちょうどつなぎとなる巻…

失われた時を求めて 5 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ フランス文学の傑作にして長大な「失われた時を求めて」も第三篇「ゲルマントのほうへ」に入る。第五巻はその「I」で、これまでもたびたび憧れの人として顔を見せていたゲルマント公爵夫人への恋心を主人公が募らせていく模様が語られる。 なにせマ…

失われた時を求めて 4 〜第二篇「花咲く乙女たちのかげに II」 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルースト畢生の大作「失われた時を求めて」、艱難辛苦しながらも読み進めていき、気がつけば早や第四巻。「花咲く乙女たちのかげに」も第二部「 土地の名・土地」に移る。「土地の名・名」が「私」の空想でしかなかったのに対応し、つ…