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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

春になったら苺を摘みに / 梨木香歩

⭐︎⭐︎⭐︎ 梨木香歩さんの下宿の女主人ウェスト夫人の思い出に心打たれるエッセイ集。まるで「西の魔女」の英国での生活を読むような心持がする。表紙の素敵な写真は星野道夫氏の手になるもの。

家守綺譚 / 梨木香歩

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 琵琶湖疎水に近い旧家を預かることになった綿貫征四郎なる駆け出し小説家の書く物語なのだが、サルスベリに懸想されるわ、掛け軸からこの家の息子で同級生で琵琶湖に沈んだはずの高堂がしょっちゅう出てきて平然と話をするわ、河童は出るわ人魚は…

アノニム / 原田マハ

⭐︎⭐︎ 原田マハ版ミッション・インポッシブル、アメリカ現代アートだからハリウッド的ポップさでいいのかもしれないが、ジャクソン・ポロックへの入れ込みように比べれば軽い軽い

すばらしい新世界 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 風力発電機をチベットの秘境に設置に行く企業人と現地の人や自然や宗教との触れ合いが清々しさを感じさせるとともに、オルダス・ハクスリーの同名ディスユートピア小説に挑戦するかのように、20世紀末の彼の持てる全ての世界観を平易な物語の中に…

黒書院の六兵衛(上)(下)

⭐︎⭐︎ 浅田次郎の幕末ものという事で期待して読んだが、とんでもない期待外れ。上巻退屈、下巻で種明かしなしに唖然。何だこりゃ、といいたい。

骨は珊瑚、眼は真珠 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎ 「南の島のティオ」「マシアス・ギリの失脚」の後に出版された、池澤夏樹が新たなる方向性を探っているような印象の習作的・実験的な短編集。表題はシェイクスピアの「テンペスト」の「エアリアルの歌」からとられている。

タマリンドの木 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹が初めて東南アジアを主舞台に据えた、これまた初めての長編恋愛小説。誠実過ぎるほどの大人同士の恋は、東南アジアの複雑な政治情勢との対峙を迫られる。池澤夏樹の暖かい視線と優れた自然描写が光る作品。

天子蒙塵 第二巻 / 浅田次郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 浅田次郎の「龍玉」シリーズ五作目も第二巻。いよいよ満州立国を柱に物語は大きく動き始め、舞台も満州・北京・東京と多彩に展開され、「マンチュリアン・リポート」の主要人物も顔を見せた。これでなくっちゃ、と思わせてくれる浅田節ついに復活!

村上春樹は、むずかしい / 加藤典洋

⭐︎⭐︎⭐︎ 硬軟双方持ち合わせる文学評論家加藤典洋が、村上春樹のデビューから2015年執筆時点までの内的変化と小説の変容について分析している。リアルタイムで知っているものからすると突っ込みどころは結構あるが、自分なりの春樹観を持って読む限り良書では…

天子蒙塵 第一巻 / 浅田次郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 浅田次郎久々の「龍玉」シリーズ、第五作目。まずは「蒼穹の昴」「中原の虹」の懐かしの主要メンバー顔見世で、ラストエンペラー溥儀と側室の世紀の離婚劇が描かれる。

マリコ/マリキータ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹の五編からなる短編集。表題作はグアム島が舞台で個人的な思い出とリンクして楽しかったが、真の傑作は最後の「帰ってきた男」。短編ハードSFとしてかなりいい線いってると思う。

Lion Loose / James Schmitz

⭐︎⭐︎ 日本ではあまり知られていないアメリカのSF作家の二流スペースオペラ。恐怖の異生物Hlatはなかなか魅力的ではあるのだが、全体的な構成に難あり。

バビロンに行きて歌え / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹シリーズ、ようやく日本を舞台としたストーリーのしっかりした作品が登場。アラブ人青年兵士が逃亡者として現在のバビロン東京に放り出される。日本語も知らず、パスポートもなく彼は生き延びることができるのか?オムニバス形式で描く大…

真昼のプリニウス / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ つづいてまたまた池澤夏樹シリーズ。敢えて物語性を排除し理系脳と詩人脳の間での言語の揺らぎ実験をしたような作品。火山学者がプリニウスの向こうを張って、易者の預言に反発して「何かが起こる」その時に浅間山に登るが。。。 「プリニウスさん、…

ヤー・チャイカ / 池澤夏樹

🌟🌟🌟 中公文庫版の「スティル・ライフ」に同時収録されている芥川賞受賞後第一作、ファンタジー性と冷戦当時の世界のある断面を表現した二面性が興味深い小品。そして娘のカンナと庭の草原で飼う草食恐竜「ディプロドクス」の最後の別れが切ない。ちなみに「ヤー…

スティル・ライフ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎ 池澤夏樹の芥川賞受賞作だが、彼のキャリアからすると、らしくない作品。詩人的表現に見るべきものがある程度。