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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

犬とハモニカ / 江國香織

☆☆☆

  先日ブックオフから「ポイント切れるぞ使わないのかこの野郎」という有難いメールをいただきました。そういえば新型コロナが流行り出してから全く行ってなかったな。。。

  というわけで緊急事態宣言も明けたので既読本売りも兼ねて行ってまりました。で、ポイントで買ったのはやっぱり安心の江國香織さん。今回は川端康成文学賞受賞の表題作を含む短編集です。

 

 

外国人青年、少女、老婦人、大家族……。空港の到着ロビーで行き交う人々の、人生の一瞬の重なりを鮮やかに掬い取った川端賞受賞の表題作。恋人に別れを告げられ、妻が眠る家に帰った男性の心の変化をこぼさず描く「寝室」。“僕らは幸福だ”“いいわ”――夫婦間の小さなささくれをそっと見つめた「ピクニック」。わたしたちが生きる上で抱え続ける、あたたかい孤独に満ちた、六つの旅路。(AMAZON解説より) 

 

    六篇の短編からなりますが、著者が後書きで書いておられるように色々な大人の事情で今回は少し抑え気味かな、という印象を受けました。特に表題作なんかは、え、これ以外にいくらでも川端文学賞に相応しい作品を江國さんは書いておられるでしょ、と思うくらいあっさりとした空港群像劇でした。

 

  もちろん全体を通して江國さんらしさ、村上春樹にも匹敵する文章の巧さは健在なんですが、江國流の色気、狂気、無邪気な残酷さのような要素が今ひとつ感じられず、個人的にはやや物足りなかったです。

 

  そんな中でも、今も延々チミチミ亀よりのろく読み進めている「源氏物語」に題材を取った「夕顔」、陽光が眩しいポルトガルを舞台にしたゲイのカップルの旅行譚を鮮やかな筆捌きで描いた「アレンテージョ」が今までの江國さんの枠を一歩踏み出した面白い作品だったかな、と思いました。

 

  というわけで、レビューもいつもよりあっさり目になってしまいましたが、汲めども尽きぬ江國さんの作品を今後もぼちぼちと追いかけていきたいと思います。