風とともにゆとりぬ / 朝井リョウ
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朝井リョウを読むシリーズ、ゆとり世代のトンデモ大学生活を綴った「時をかけるゆとり」に続く第二弾「風と共にゆとりぬ」です。堂々と巻頭に「マーガレット・ミッチェルに捧ぐ」と書いてあります。よう言うた、というか、どの口が言う、というか。。。
読んで得るもの特にナシ! 500枚超の楽しいことだけ詰まった大ボリュームエッセイ集。 対決!レンタル彼氏/ポンコツ!会社員日記/冒険!朝井家、ハワイへ/諦観!衣服と私 失態!初ホームステイ/本気!税理士の結婚式で余興/阿鼻叫喚!痔瘻手術、その全貌等
・ダヴィンチBOOK OF THE YEAR 2017 2位
・ブクログ大賞2018 ノミネート
・読書メーター OF THE YEAR 2018 3位
『桐島、部活やめるってよ』で鮮烈なデビューを飾り、 『何者』で戦後最年少直木賞作家となった著者のユーモアあふれるエッセイ集が待望の文庫化。 日経新聞「プロムナード」連載エッセイや、壮絶な痔瘻手術の体験をつづった「肛門記」を収録。 また、その顛末が読める「肛門記~Eternal~」書き下ろし!(AMAZON解説)
とにもかくにも猫毛で馬面、胴長短足猫背で痔持ちのスットコドッカー、さくらももこさんの「少し長め、かつ、メッセージ性皆無のくだらないエピソードばかりで編まれたエッセイ集」をお手本に仰ぐ朝井リョウの快進撃は続きます。今回は三部構成となっており、順番に見ていきます。
第一部「日常」は
小説に込めがちなメッセージや教訓を「込めず、つくらず、もちこませず」をモットーに綴ったエピソード12編
ですので、基本的に前回と同じノリ。前作でものすごい存在感を示した謎の眼科医の先生が再登場し、いきなり笑わせてくれます。
とは言え、前作以降のエッセイですので必然的に大学卒業後就職生活についての記事が多くなりますので、学生時代とは違っておふざけ度はやや控えめとなっています。そんななかでもバレーボール愛に満ちた奮闘ぶりは微笑ましい。4人で出られるビーチバレー大会にエントリーしたらきっちり一人が大寝坊で間に合わず、「四人います」とウソをついた当の相手である受付けのオバサンをスカウトしてくる仲間の行動力には脱帽。
それでも社会人生活にはそれなりにまあまあ大人の雰囲気が漂うわけですが、高校時代のエピソードは本領発揮、前作並みにおバカ度満開。
インキンタムシをカナダにもたらしたホームステイ、高校卒業と大学入学のはざまのモラトリアム時期に友人と初体験するアルバイトが「結婚式場の披露宴フロア係」といういきなりハイレベルすぎる仕事でお決まりの大失敗する話など、楽しめました。
ちょっと驚いたのは「ままならないから私とあなた」収録の短編「レンタル家族」を編集者と一緒に実地で実験しているくだり。レンタル家族っていう仕事、やっぱり本当にあるんだ〜、と妙に感心しました。
第二部「プロムナード」は
日本経済新聞で2015年下半期の半年間連載というフィールドオブドリームスに錯乱した著者が、新聞購読者を増やしたいという野心に司られつつ綴ったコラム21編
なのでさすがにマジメ度数アップ、ここまでの1.5巻ほどのバカ笑いはできませんが、相変わらずの面白さです。
そして最後に地雷ならぬ「痔雷」が待っていました。第三部「肛門記」です。
学生時代から痔と粉瘤に悩まされていたリョウですが、仕事の忙しさにかまけて痛くても治療を先延ばしにしていたところ、ついに一番厄介な「痔瘻」になっていることが判明。
がこの第三部となっています。作者には悪いけど思いっきり笑わせてもらいました。
いやあ、これだから朝井リョウはやめられない。