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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

カブールの園 / 宮内祐介

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   宮内悠介を読むシリーズ、今回は2017年の「カブールの園」です。二編の中編小説が収められており、芥川賞候補になり、第30回三島由紀夫賞を受賞しています。

  で、いきなりですが、心の琴線をガリガリこすられ、ひたすら圧倒され、KOされてしましました。

 

  日系アメリカ人の日本語と文化を次世代へ継承していくことの困難さとわたしたちの世代の最良の精神は、いったい、いかなる生に宿るのかを問うた「カブールの園

 

  幼少年期に英語が自分の中の日本語を追いつめ、日本語が自分の中の英語を追いつめるアメリカ生活を否応なく経験させられる日本人少年と、食っていくためにショープロレス興行の世界に飛び込む姉を描いた「半地下

 

  いずれもアメリカにおける「日本人」のあり様を臓腑をえぐる様な容赦ない筆致で描いています。当然ながら、いじめ、人種差別、暴力、薬物、PTSDなども双方で重要なテーマとなり、ひたすら重く暗くズシンと読む者の心にのしかかってきます。

 

  ちなみに「半地下」は宮内氏が22歳の頃の処女作に手を入れたもので、打算なしに、ただ裸で皆様の目の前に立つような作品と自己評価されています。

 

  まさにその通りでそれはあしたのジョーの「ノーガード戦法」の如くであり、強烈なカウンターをくらってしまいました。特に後半姉が急変するあたりからはひたすら号泣。。。

 

  いやいや、日頃から英書を読むのが好きですとか、日系四世シンガーのレイチェル・ヤマガタの大ファンですとか、あちこちに書き散らしているのが恥ずかしくなってしまいますね。

「なんにもわかってねえだろ!」

という宮内氏の声が聞こえてきそうで穴があったら入りたい。

 

  ということで今回は完全に降参、この辺で筆を置いておきます。

 

  まともなレビューは吉田あやさんとドラひこさんが書いておられますので、興味のある方はリンク先へ飛んでください。

 

  いやあ、次は若干軽そうですが、宮内悠介畏るべし!

 

宮内悠介を読もうシリーズ

盤上の夜(2012)

ヨハネスブルグの天使たち(2013)

エクソダス症候群(2015)

アメリカ最後の実験 彼女がエスパーだったころ(2016)

スペース金融道(2016)

超動く家にて(2018)

 

 

 サンフランシスコで暮らす移民三世のレイは、旅の途中にかつて日系人収容所であった博物館を訪れる。日本と世界のリアルがここに!

「カブールの園」は、友人とITベンチャー企業を立ち上げた日系アメリカ人女性の物語。ヨセミテ国立公園にひとりで訪れるはずが、青いフォードを運転するうちに、かつて祖父母が収容されていた日系人強制収容キャンプの跡地に向かって……。「日系女性三代の確執の物語、あるいは、マイノリティとしての私たちのこと」と宮内さんも語るように、日本人とアメリカのセンシティヴな状況をクールな文体で描きます。

「半地下」は、宮内さんが22歳の頃の処女作に手を入れたもので、ニューヨークの少年少女たちを描いています。「打算なしに、ただ裸で皆様の目の前に立つような作品」と宮内さんは言いますが、80年代という過ぎ去った時間への愛惜がこめられています。その瑞々しさには胸を打たれるのではないでしょうか。 2017年、三島由紀夫賞受賞作。