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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

ミステリー

薔薇のなかの蛇 / 恩田陸

⭐︎⭐︎⭐︎ 初期の恩田陸ファンにこよなく愛されてきた「理瀬シリーズ」の最新刊「薔薇の中の蛇」です。焼き粉の早速のレビューに書いてあるように待たせること 17年! 長すぎるわ!! ということで「三月は深き紅の淵を」(1997)、「麦の海に沈む果実」(200…

キャプテンサンダーボルト(下) / 阿部和重、伊坂幸太郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 純文学の旗手阿部和重と超人気ミステリ作家伊坂幸太郎が組んだ「完全合作」小説「キャプテンサンダーボルト」下巻です。「徹夜本」という煽りも伊達じゃない(仙台だけに、なんちゃって)、ノンストップアクションで最後まで突っ走ります。 まずは簡…

キャプテンサンダーボルト(上) / 阿部和重、伊坂幸太郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 伊坂幸太郎の小説で唯一未読だった「キャプテン・サンダーボルト」(文庫版上下巻)です。2014年に発表された作品なんですが、伊坂単独ではなく、純文学の阿部和重との合作だったため、なんとなく一番後回しにしていました。 いやあ、早く読んどきゃ…

狐火の家 / 貴志祐介

⭐︎⭐︎⭐︎ 防犯探偵榎本シリーズ二作目です。一作目の「硝子のハンマー」が好評を博し、シリーズ化の要望に応えて書かれた4篇の短編をまとめたのがこの「狐火の家」で、さらに4篇を編んだのがカドフェスで読んだ「鍵のかかった部屋」ということになります。ち…

硝子のハンマー / 貴志祐介

⭐︎⭐︎⭐︎ 先日TVドラマ「鍵のかかった部屋」の原作(同名短編集)の(やや辛口の)レビューをしたのですが、文庫本であと二作あるとのことで、乗りかかった舟、とにかく読んでみることにしました。 まずは「硝子のハンマー」です。テレビでは本作が最終話で二…

ゴールデンスランバー / 伊坂幸太郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 伊坂幸太郎の代表作の一つ「ゴールデンスランバー(A MEMOERY)」です。今回「新潮文庫の100冊2020」のリストに入っており、本サイトでは未レビューだったので久々に読み直してみました。初出は2007年、ライトでウィットに富んだ独特の作風のミステリ…

盤上の夜 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 「宮内悠介を読もう」シリーズの五冊目はデビュー作「盤上の夜」です。本来なら真っ先に読まねばならないところなのですが、本作のテーマであるボードゲーム類が全く不得意であることと、紹介文やレビューで「盤上の夜」の主役の設定が嫌だったことで…

巴里マカロンの謎 / 米澤穂信

⭐︎⭐︎⭐︎ 本が好き!で風竜胆さんがレビューしておられて、え、今頃新作?と驚きました。私の大好きな米澤穂信の11年ぶりの「小市民」シリーズ新作「巴里マカロンの謎(THE PARIS MAKARON MYSTERY)」です。 ご存知ない方のために一応説明しておきますと、この…

世にも奇妙な君物語 / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ もう「その昔」と呼ばないといけないのかと時代の流れを感じますが、フジテレビが隆盛を誇っていた頃の看板番組の一つに、タモさんが司会進行役をつとめる「世にも奇妙な物語」がありました。日本版「ヒッチコック劇場」とでもいうべき内容で、君塚良…

アノニマス・コール / 薬丸岳

⭐︎ 本が好き!で塩味提督が褒めておられた本。ブックオフ で見かけたので買って読んでみた。よくできた和製ハードボイルド風味誘拐ミステリではあるのだが、私には合わないなあ、というのが率直な感想。 いきなり不祥事で警察を辞め離婚もしたらしい中年男が…

昨日がなければ明日もない / 宮部みゆき

⭐️⭐️ 宮部みゆきの杉村三郎シリーズ第五弾。私立探偵になって初めての「希望荘」に続き再び短編集で出版された。昨年末の単行本化なのでようやく現在まで追いついたことになる。 杉村三郎vs.“ちょっと困った”女たち。自殺未遂をし消息を絶った主婦、訳ありの…

希望荘 / 宮部みゆき

⭐️⭐️⭐️⭐️ 宮部みゆきの杉村三郎シリーズ第四弾。「誰かーSomebody」「名も無き毒」「ペテロの葬列」長編三部作において、巨大コンツェルンの入り婿という「ドールハウス(解説杉江松恋氏の表現)」から、何故か事件に巻き込まれる運の悪い一市井人杉村三郎が…

楽園 / 宮部みゆき

⭐️⭐️⭐️⭐️ 大作「模倣犯」はあまりにも登場人物が多く、一人一人取り上げていくとレビューが煩雑になるため、敢えて言及しなかったキャストも多かった。その一人に、前畑滋子というフリーライターがいた。事件を追いかけるルポライターとなり、主犯のピースこ…

ペテロの葬列 / 宮部みゆき

⭐️⭐️⭐️ 宮部みゆきの杉村三郎シリーズ第三弾にして文庫本上下巻に渡る大作。「ペテロの葬列」という題名のうち、ペテロはレンブラントの名画「聖ペテロの否認」に描かれたイエスを裏切った弟子ペテロである。葬列とは被害者が加害者になり連綿と続く悪の連鎖…

名も無き毒 / 宮部みゆき

⭐️⭐️⭐️ 続いて杉村三郎シリーズ第二弾。杉村三郎と彼を取り巻く人々、環境が「誰かーSomebody」で提示されているので、二作目はすっと作品世界に入っていける。 『今多コンツェルン広報室に雇われたアルバイトの原田いずみは、質の悪いトラブルメーカーだっ…

誰か-Somebody / 宮部みゆき

⭐️⭐️⭐️ 宮部みゆきの杉村三郎シリーズ第一作。2003年の作品なので、2001年の「模倣犯」とそう離れていない時期である。「理由」「模倣犯」で心身共に疲弊した宮部が再び社会派ミステリーに挑んだわけだが、さすがに「模倣犯」ほどの重さはなく、主人公を刑事…

ソロモンの偽証 / 宮部みゆき

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐️ 宮部みゆきが心血を注ぎ完成させた傑作「ソロモンの偽証」。1990年のクリスマスイブから1991年8月20日までのわずか8カ月間の物語であるが、それを宮部は小説新潮に2002年から2011年まであしかけ9年をかけて連載し完結させた。その量たるや、原稿…

模倣犯 / 宮部みゆき

⭐︎⭐︎⭐︎⭐️ 宮部みゆきの本領、社会派ミステリーの傑作「理由」に続く超大作「模倣犯」である。読んでもいないし、映画も見ていないがそんな私でも大体どうい内容かは知っているほどの有名作品。こういうタイプの犯人は怖気が振るうほど大嫌いなので読んでいな…

ネクロポリス / 恩田陸

⭐️⭐️ 投げっぱなしジャーマンとの評価も高い(?)恩田陸さん。今回は投げっぱではなかったものの、例によって例の如く上巻上々、下巻はひどい。前半星四つ、後半一つで平均2.5と言いたいところだが、結末があまりにもひどいので星二つ。 この作品、興行プロ…

ICO イコ霧の城 / 宮部みゆき

⭐️⭐️ クローゼットから発掘した宮部みゆきの二冊目は「ICO」。RPGで有名なICOのノベライズである。うちの子がやっていたのは時々見ていたが、寒色系で繊細なグラフィックの印象的な作品だった、と記憶している。宮部みゆきもこのICOの大ファンで、SCEの制作…

理由 / 宮部みゆき

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ どこかに書いたことがあるが、宮部みゆきが「怪物」的な悪を描くようになった時期と自身の阪神淡路大震災による心的疲労の時期が重なり、時代物以外の彼女の作品を読むことをやめてしまった。 しかしその後も彼女は「理由」で直木賞を獲ったのを始…

劫尽童女 / 恩田陸

⭐︎⭐︎⭐︎ 汲めども尽きぬ恩田陸の未読作品。今回は彼女お得意の超能力系ミステリー。題名は「こうじんどうじょ」と読む。「劫尽」の説明は物語中盤を過ぎた頃に起こる大厄災を象徴する言葉として出てくる。「こうじんか、劫尽火」、悪いことをすると地獄の劫火…

マイブック 2018年の記録

「ブクレコ」や「本が好き!」でやっていた年末恒例行事、その年の読書総括である。今年はこちらですることにした。 2018/12/20現在、公開レビューが111本、下書き中が9本ある。下書きからはおそらく選ぶことはないと思うので、この時点で思いつくままに選…

米澤穂信と古典部 / 米澤穂信

⭐️⭐️⭐️ 米澤穂信の新刊。といっても「氷菓」実写化にあわせた角川書店のメディアミックス戦略の一環。小説はおまけで、古典部シリーズの舞台裏公開的ムック本。古典部メンバーの本棚はそれぞれの個性を反映させて面白いし、古典部ファンには垂涎、読み応えあ…

木漏れ日に泳ぐ魚 / 恩田陸

⭐️⭐️ 大風呂敷広げっぱなし、エンディング投げっぱなしジャーマンの恩田陸にしては珍しく、あっさりと破綻もなく語り終える物語。明日同居を解消する男女が夜を徹して語りあう二人の複雑な家庭事情と互いの思い、そしてそれにまつわるある変死事件。交互に綴…

アミダサマ / 沼田まほかる

⭐️⭐️⭐️⭐️ 今映画界はちょっとしたまほかるブームだが、沼田まほかるの長編小説は五作しかない。この作品はその中でも特異な、彼女の僧侶としての宗教観を前面に押し出した作品。悲痛な最終章とそれを救済するエピローグは、まほかる渾身の文章だ。

首折り男のための協奏曲 / 伊坂幸太郎

⭐️⭐️⭐️ 殺し屋首折り男と伊坂幸太郎ワールドの常連探偵黒澤の織りなす短編集。マリアビートルの首折り男七尾とは関係ないようで残念。

水鏡推理5 ニュークリアフュージョン / 松岡圭祐

⭐️⭐️ ラノベ・ミステリー職人松岡圭祐のシリーズ第五弾。驚きというかお笑いのサブタイトルのダブルミーニング。残念ながらこのシリーズ、もりあがりそうにない。

いまさら翼といわれても / 米澤穂信

⭐️⭐️⭐️⭐️ 米澤穂信待望の古典部シリーズ新刊 短編集だがファンには嬉しい一冊 最後の二編は少しビターだ