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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

椿宿の辺りに / 梨木香歩

⭐︎⭐︎⭐︎ 梨木香歩さん五年ぶりの新作は「f植物園の巣穴」の続編。前半のまったりしたユーモアは楽しめたが、後半「非常な不幸に見舞われている佐田家の子孫」の原因を実家と椿宿全体の治水の話に結びつけていくあたりは牽強付会過ぎて、というか「異界譚ファ…

f植物園の巣穴 / 梨木香歩

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 新刊「椿宿の辺りに」がこの作品の続編だそうで、先にこちらをレビューしておこう。2008年の作品で、同傾向の作品である「家守奇譚」(2004)と続編の「冬虫夏草」(2013)の間に書かれており、また、彼女の最高傑作との呼び声も高い「沼地のある森…

ゆんでめて / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️⭐︎ しゃばけシリーズも九作目に入る。短編五本で一冊というのがもう恒例となっているが、毎回色々と趣向を凝らせ飽きさせないように努力されているのは立派。 今回は離れの火事で行方不明になってしまった屏風のぞきをめぐり、四年後から始めて、一年…

我らが少女A / 高村薫

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私が尊敬してやまない、現代日本を代表する作家、高村薫女史の新作がついに発表になった。題名は「我らが少女A」、かつては光り輝いていた女優志望の少女Aが社会の底辺で無惨にも殺される、その前に残したある証言がお宮入りした12年前の未解決殺人…

天使も怪物も眠る夜 / 吉田篤弘

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 螺旋プロジェクトもいよいよ最終刊、八冊目となる未来編。アンカーを託された作家はクラフト・エヴィング商會の吉田篤弘。作品名は「天使も怪物も眠る夜」。螺旋プロジェクトのルールである「海族」と「山族」の争いにアンカーとして終止符を打つこ…

ウナノハテノガタ / 大森兄弟

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 螺旋プロジェクト#7。このシリーズもいよいよあと二冊、今回は大森兄弟の「ウナノハテノガタ」。 楽園ウナノハテノガタを信仰する海の民「イソベリ」は、死を知らない。精霊を司る少年・オトガイだけは真実を知り、死を恐れ、激化する山の民「ヤ…

月人壮士 / 澤田瞳子

⭐️⭐️ 螺旋プロジェクトも六作目に入り、いよいよ古代編。題名は「つきひとおとこ」と読む。これについては最後に解説。気鋭の歴史作家(といっても初耳だが)、澤田瞳子さんの作品。 時代は奈良時代後半、主人公は聖武天皇。歴史の教科書的には東大寺を建立…

ころころろ / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️ しゃばけシリーズ第八作。いつものように五編の短編が並んでいるが、今回はその全てを貫いて、若だんなの失明騒動を描いているところが面白い試み。 まず一作目の「はじめての」では、若だんな一太郎12歳の頃のほのかな初恋が描かれる。その初恋の少…

チコちゃんに叱られる! / NHK「チコちゃんに叱られる!」制作班

⭐︎⭐︎⭐︎ ボーっと生きてんじゃねーよ! チコちゃんラインスタンプ といきなりかましてみましたように、わたくし、今や国民的番組となったNHKの「チコちゃんに叱られる!」が大好きで毎週録画して観ております。 この番組、小生意気で何でも知ってる「永遠の5歳…

ポーの一族 ユニコーン編

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ ついに出ました、世界にその名を轟かせるJapanese Shojo Manga「The Poe Clan」こと、萩尾望都先生の「ポーの一族」の最新巻「ユニコーン」。 いよいよ40年前の「ポーの一族」の最終章「エディス」と、前作「春の夢」の世界が融合し、新たなポーの…

コイコワレ / 乾 ルカ

⭐️⭐️⭐️ 螺旋プロジェクト#5、ここから女性作家が二人続く。まずは乾ルカの「コイコワレ」。「蒼色の大地」の明治と「シーソーモンスター」の昭和後期の間を埋めるピースで昭和前期が舞台。具体的には太平洋戦争末期の1944-5年の出来事を海族山族二人の少…

いっちばん / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️ しゃばけシリーズ第七作。安定の短編五編構成。にぎやかに妖勢ぞろいで始まるが、後半はちょっと退屈、このシリーズのお約束の設定に沿った話でまあまあ予定調和の世界。 兄の松之助が長崎屋を出て所帯を持ち、親友の栄吉は菓子作りの修業へ。普段か…

蒼色の大地 / 薬丸 岳

⭐️⭐️ 螺旋プロジェクト第四作目は薬丸岳の「蒼色の大地」。天野純希の「もののふの国」の1000年近くに渡る武士の時代についで、今回は明治が舞台。 薬丸岳の新境地にして新たな代表作。 壮大なスケールで贈るエンタメ巨編! 一九世紀末。かつて幼なじみであっ…

ちんぷんかん / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️ しゃばけシリーズ第六作。いきなり若だんなが冥土送りになりびっくりさせるが、全体を通じては、貰い火で焼け落ちた長崎屋の新築と腹違いの兄松之助の縁談の成り行きが語られる。 「私ったら、死んじゃったのかしらねえ」長崎屋が大火事に巻き込まれ…

何様 / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 先日紹介した、まだ何者でもない大学生たちの就活模様を描いて秀逸だった「何者」のアナザーストーリー集。六作品それぞれによく出来ており、彼得意の思わせぶりな題名と最後のツイストもきっちり効いていて、朝井リョウって本当にこういうの上手い…

何者 / 朝井リョウ

⭐️⭐️⭐️ 「桐島、部活やめるってよ」「死にがいを求めて生きているの」を読んで俄然朝井リョウに興味が湧いた。そこでまずはこの作品。 就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。…