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備忘録、採点表

ピュタゴラスの旅 / 酒見賢一

⭐️⭐️

    中島敦賞受賞作の初期短編集。作者自身は「バランスを取り過ぎている」と思っておられるが、「そうか~?」という雑多な短編の寄せ集めで出来不出来はあり。話としては「虐待者たち」が一番面白く、歴史ものとしては表題作より「エピクテトス」の方が充実している。

語り手の事情 / 酒見賢一

⭐️⭐️  これも酒見賢一の未読の落穂ひろい。英国ヴィクトリア朝のある屋敷を舞台とした妄想と倒錯の性の饗宴。作者が父親にかんかんに怒られたという異色作だが、あとがきがさらに凄い。酒見賢一に性的タブーはない!

童貞 / 酒見賢一

⭐️⭐️

    酒見賢一の中国史ものではあるのだが、異色の作品。太古の黄河の氾濫に悩まされるある邑は完全な母系社会で女尊男卑の世界。いきなり治水を成し得なかった男の酷たらしい処刑で始まり、それを見ていたある少年が成長とともにこの邑のしきたりを拒否し、村の女を拒否し、女性である黄河を犯し、支配しようと旅を始める。最後にこれは夏の禹の物語であることが示唆されるが、酒見氏はそんなことはどうでも良いことと嘯く。解説の激越さにも驚く。

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木漏れ日に泳ぐ魚 / 恩田陸

⭐️⭐️

    大風呂敷広げっぱなし、エンディング投げっぱなしジャーマンの恩田陸にしては珍しく、あっさりと破綻もなく語り終える物語。明日同居を解消する男女が夜を徹して語りあう二人の複雑な家庭事情と互いの思い、そしてそれにまつわるある変死事件。交互に綴られていく二人の心理の変化・綾は興味深いが、今ひとつ現実感がない。

美しい星 / 三島由紀夫

⭐️⭐️⭐️⭐️

  三島由紀夫が冷戦時代に書いた異色SF。UFOを見た家族が自分たちが宇宙人だと信じ込み人類啓蒙救済を目指すが、一方同じくUFOを見た仙台の助教授たち三人も宇宙人であることを悟るが逆に人類は滅亡すべきだと考える。両者を仲介する右翼半日教組政治家(中曽根康弘がモデル)が偶然仲介する形になり、両者の「大審問官」を思わせる論戦が始まる。そこがハイライトではあるが、前~中盤のライトなユーモア、UFOなどのサブカルチャーに興味があった三島の一面、やはり他を圧倒する美文、このあたりも読みどころ。

 

祝・Kazuo Ishiguroノーベル賞受賞!

嬉しい、本当に嬉しい!ほとんどの作品を原書・邦訳で読んできたファンとして感無量だ!

 

mainichi.jp

アミダサマ / 沼田まほかる

⭐️⭐️⭐️⭐️

    今映画界はちょっとしたまほかるブームだが、沼田まほかるの長編小説は五作しかない。この作品はその中でも特異な、彼女の僧侶としての宗教観を前面に押し出した作品。悲痛な最終章とそれを救済するエピローグは、まほかる渾身の文章だ。