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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

Voices in the Night / Steven Millhauser

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短編の名手スティーブン・ミルハウザーの16の短編集。出来不出来はあるものの、「Phantoms」、「Mermaid Fever」、「A Report on Our Recent Troubles」などはミルハウザーらしさが出ていて素晴らしい。そして最後の表題作でのユダヤ人としての自身を振り返る静謐な雰囲気と内省の深さは感動的。

 

Chopin: 51 Mazurkas / Irina Mejoueva

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ショパンの名手、イリーナ・メジューエワによるショパンマズルカ全集。格調高い演奏を若林工房の好録音で楽しめる。Music Arenaに詳細な解説あり。

ミーナの行進 / 小川洋子

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阪神大震災で損なわれる以前、1972年を芦屋の伯父の大邸宅で過ごす少女と従妹ミーナとコビトカバのポチ子の物語。懐かしさと切なさと喪失と、そこからの成長の物語。岡山出身で芦屋に暮らされているだけあり、小川洋子の作品の中でも出色の出来。

官能小説家 / 高橋源一郎

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ポストモダン作家高橋源一郎と才能のなかった小説家半井桃水の自己卑下の泥沼の中で育った蓮の台の上に咲いた美しい華樋口一葉(夏子)の物語と、、、ついでにAV男優森鴎外が夏子とヤリまくるゲスの極み的なフランス書院的お話。よく朝日新聞が掲載したもんだ。

 

4321 / Paul Auster

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ポール・オースターの新作にて70歳間近とは思えない渾身の大作、等身大の主人公の有り得た四つの人生をアメリカ現代史を背景に並行して描く。最後には恒例の大どんでん返し、相変わらず喰えない人だった。

 

Turn Up The Quiet / Diana Krall

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ダイアナ・クラール待望のジャズ・スタンダードの新譜。やっぱりダイアナはスタンダードが似合う。アレンジも凝り過ぎず派手過ぎず、好い雰囲気で彼女本来の魅力を引き出している。彼女と共同プロデュースの故トミー・リピューマに合掌。

 

南の島のティオ / 池澤夏樹

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南洋の、広い海の中の、静かな明るい島。きれいな海と椰子の木とのんきな人たち。それに親切な男の子ティオ。あなたもきっと行ってみたくなる、精霊の宿る環礁の島の不思議な物語。