Count No Count

続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

世にも奇妙な君物語 / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎

  もう「その昔」と呼ばないといけないのかと時代の流れを感じますが、フジテレビが隆盛を誇っていた頃の看板番組の一つに、タモさんが司会進行役をつとめる「世にも奇妙な物語」がありました。日本版「ヒッチコック劇場」とでもいうべき内容で、君塚良一三谷幸喜をはじめとして錚々たるメンバーが脚本を担当していました。

 

  朝井リョウもこの番組が好きでよく観ていたそうです。そして自分でもそういうコンセプトで書いてみたいということでできたのがこの「世にも奇妙な君物語」です。二時間ドラマ原作程度の内容ですので当然短編集となり、

シェアハウさない

リア充裁判

立て!金次郎

13・5文字しか集中して読めな

脇役バトルロワイヤル

の五篇が収録されています。

 

  ブラックあり、ツイストあり、キレの良いオチありで確かにこれは二時間ドラマにすれば面白いだろうなという作品ばかりでした。ただ、時間に制約のあるテレビドラマを意識しているので小説としてはやや荒っぽい印象を受けます。ただそういう四編が続いた後に種明かし的でコミカルな作品で締めるあたりはリョウらしいうまい構成です。

 

  もちろん上にあげた脚本家をはじめとしてこれくらいの作品を書ける人はゴマンといると思いますが、どの作品を読んでもやっぱり朝井リョウだなあ、と思わせる個性、これがリョウファンにとっては魅力ですね。

 

  それは例えば題名の付け方のうまさ(「13・5文字しか集中して読めな」などは特に秀逸)だったり、ツイストのタイミングのうまさ(「リア充裁判」の二段階ツイストはうまい)だったり、彼独特の視点の転換だったりします。シェアハウス、SNS、モンペ、ネットのジャンクニュースなどのいかにも現代的な流行をテーマとしても、一見批判的に話を進めていきながら、ある時はちょっと見る角度を変えて読者を戸惑わせ、ある時は180度転換して主人公の背後から襲いかかってみる。紛れもない朝井リョウの個性がそこには現れています。

 

  ですから、朝井リョウファンには安心してお勧めできますし、「世にも奇妙な物語」的なライトミステリを読みたい方にもお勧めです。

 

  そうそう、二時間ドラマと言えば常連の脇役俳優がいますよね、この脇役にあの俳優をあててみればどうかな、とか思いつつ読んでおくと、「脇役バトルロワイヤル」がより楽しめますよ。

 

オチがすごい! いくつもの書店で週間ランキング1位に輝いた話題の小説!異様な世界観。複数の伏線。先の読めない展開。想像を超えた結末と、それに続く恐怖。もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずに――。では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」。 オチがすごい・・・! いくつもの書店で週間ランキング1位に輝いている話題作★ 異様な世界観。 複数の伏線。 先の読めない展開。 想像を超えた結末と、それに続く恐怖。 もしこれらが好物でしたら、これはあなたのための物語です。 待ち受ける「意外な真相」に、心の準備をお願いします。 各話読み味は異なりますが、決して最後まで気を抜かずに――。 では始めましょう。朝井版「世にも奇妙な物語」。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ミステリ書評家・村上貴史氏】 世界の異様さ、息苦しさで読む者の心をとらえ、先の読めない展開でページをめくらせ、 その展開について終盤で「なるほど」と納得させる。 実に鮮やかで巧妙な読者コントロールだ。そしてそれだけでは終わらない。 最後にもうひと味。いやはや、恐れ入った。やるせない衝撃に圧倒される。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー