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備忘録、採点表

えどさがし / 畠中恵

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    しゃばけシリーズの番外編。

 

500年の判じ絵」 主人公は佐助(犬神)。ひたすら旅を続ける佐助、今は江戸へ向かう途中で三島宿にいる。街道脇の茶屋に貼られていた判じ絵がどうも妖の佐助宛てに書かれたようで、居合わせた化け狐の朝太と謎解きを始める。ヒントは五百年前に佐助が助けた男女にあるらしい。もうこれだけでシリーズを読み続けている読者には先が読めてしまうので書いてしまうが、大妖おぎんが長崎屋の孫の世話を言いつけることにより、居場所と仲間のなかった佐吉に500年前の恩返しをする物語である。

 

太郎君、東へ」 主人公は河童の大親禰々子。坂東の地である江戸が徳川という領主を迎えて発展し始めた頃、坂東太郎利根川)の機嫌が悪くなった。河童でさえ流される始末に禰々子は眉を顰めている。そんな折も折り、荒川の蘇鉄河童が襲ってきた。が、その程度の小物では相手にはならない。話はもっと大きく、禰々子は太郎君とその流れを変えようとする人間の色恋沙汰との板挟みになって悩み、最後は結構痛快な大げんかとなる。現在の利根川の成り立ちをこの程度の分量の短編に納めてしまった畠中さんの手腕はお見事。ちなみに「半鐘泥棒」という言葉が出てくるが、調べてみると、ひどく背の高い者をあざけっていう言葉だそう。

 

たちまちづき」 主人公は上野広徳寺の妖退治僧寛朝。口入屋の主人が頼りないのは「おなご妖」が憑いているから退治してほしいという(無理な)頼みを気の強い妻が持ち込んできた。当然ながら妖が見える寛朝にも秋英にもそんな妖は見えない。しかし、その主人が真っ暗な夜道で襲われ、次いで妻が夫の代わりに仕切り始めた口入屋稼業で大失敗をしでかす。窮地に立たされた夫婦を寛朝は救うことができるのか?妖は今回は賑やかし程度、よくできた人間ドラマである。

 

親分のおかみさん」 日限の親分清七の妻おさきが主人公。この物語で病弱と言えばそれはもちろん主人公長崎屋の若だんな一太郎だが、実はもう一人いる。それがこのおさきさん、それゆえ親分は長崎屋に出入りすれば手代の仁吉からもらえる薬と袖の下をあてにしていると言う設定である。しかしこれまでそのおさき自身が物語に顔を出すことは一度もなかった。まだこの人が残っていたか、と言う主人公である、畠中さんなかなかうまい。

  話はおさきが土間に置いてあった捨て子の赤ちゃんに気がつく、というところから始まり、夫婦の住む長屋でひと騒動が持ち上がる。そこへ帰ってきた旦那の日限の親分が、捨て子の赤ちゃんと見せかけての押し込み強盗の情報をもたらし、ますます剣呑なことに。その頃長崎屋にも捨て子の赤ちゃんが。。。

  勿論長崎屋は例の妖たちがいつも手ぐすねを引いて招かざる客を待ち受けているので恒例の如くの展開が予想されるが、おさきさんの方はどうなるのか。子供のいないおさきさんが最初は戸惑いつつ母性を発揮していく、これもまたなかなかの好編である。

 

えどさがし」 はじめて明治が舞台となる。頃は明治20年、当然ながら若だんな一太郎はもうこの世にいない。しかし「京橋」こと仁吉(白沢)たち妖たちはおそらく若だんなが残してくれた遺産で建てたと思われる銀座の長崎商店を根城として、一太郎の生まれ変わりを探している。そう、祖母で大妖のおぎんが長い時を経てついに思い人鈴君に出会えたように。

  そして新聞の尋ね人欄に「一」という名前をみつけた京橋仁吉は新聞社を訪れ、そこでその尋ね人欄を担当していた男の殺人事件に出くわす。そこからの展開は明治の代でもなお跋扈する妖達を交えてなかなかにスリリングであった。事件が解決してからがちょっと物足りないが、外伝である以上仕方ないだろう。初めての雰囲気の中で頑張る仁吉や妖達がイジらしい独特の、というか、当然ながら初めての雰囲気の中で進む物語は斬新であった。

 

 (明治の世は、まだまだ何もかもが途中だ)

  夜は明るくなったが一部のみだし、新しい暮らし、新たな生業をつかみ取るのも大変だ。全てを自分で、あがくように作り上げていかねばならないからだ。

  この地は、希望と興味と力強さに溢れてはいる。だが反面、厳しさと無情さにも満ちていた。時を越え、アーク灯の明かりまでたどり着いた妖、仁吉はそれを感じていた。

(それが、明治か) 

 

  

 

 

 時は流れて江戸から明治へ。夜の銀座で、とんびを羽織った男が人捜しをしていた。男の名は、仁吉。今は京橋と名乗っている。そして捜しているのは、若だんな!?手がかりを求めて訪ねた新聞社で突如鳴り響く銃声!事件に巻き込まれた仁吉の運命は―表題作「えどさがし」のほか、お馴染みの登場人物が大活躍する全五編。「しゃばけ」シリーズ初の外伝、文庫オリジナルで登場。