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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

たぶんねこ / 畠中恵

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  しゃばけシリーズ第12弾。外伝から再び本伝に戻って短編五編が並ぶが、今回は「序」がついている。奇跡的に二月ひと月病にかからなかった若だんな、喜んだ手代二人は若だんなに五つのことを約束させる。

 

一 半年間仕事をしない

二 半年間恋はお預け

三 半年間栄吉の心配をしない

四 半年間妖のための外出をしない

五 半年間体に障るような災難に巻き込まれない

 

この無茶振りとも言える約束の半年間が始まる。それが本編五編となる。

 

跡取り三人」 一の話 

  年も改まった寒いある日、若だんなを含む三人の大店の跡取りのお披露目の食事会が開かれる。その席で両国の親分大貞が三人のうち誰が一番甲斐性があるか見たいもんだと言い出し、結局半月間でどれだけ自分で仕事を取ってきて稼げるのか競争させるため自分のところへ預かる、ということになる。

  外で働いたことのない若だんな、最初はうまくいくはずも無く、銭がないために飲み物も買えない辛さを初めて知るが。。。

  まあ結局佐助仁吉も出てきての大騒動の末に全ては丸く収まってしまうわけだが、かなり無理のある話ではあった。

 

こいさがし」 二の話

  長崎屋に於こんという母おたえの知り合いの娘が花嫁修行にやってくる。しかし、この於こん、不器用な上にやる気がない。早く嫁に行ってしまいたいとごねる。

  そこに先日の両国の親分大貞の古文富松が困りごとの相談に来る。大貞が見合いの仲人を儲け口にしたいと言って困っているというのだ。仕方なく手伝うことにした手代二人は貧乏な御家人と料理屋の娘を見つけてくる。

  その見合いの席にまたまたややこしいことに河童の大親禰々子が手下の妹の娘に縁談が二つ舞い込んだから解決してくれ、と若だんなを頼ってくる。そして持参金がわりにまたまた怪しげな三色の丸薬を置いていく。どんな怪我でも治すが飲むと死ぬほど苦しむというあの赤の他に、今回は緑と紫。

  この二組の見合いと於こんが入り乱れてのお見合い騒動はややこしいことこの上ない状況にはなるが面白い。於こんの意外な正体も最後に明らかとなる。

 

くたびれ砂糖」 三の話

  栄吉が久々に顔を見せる。奉公先の安野屋の新入り三人の教育係になって苦労している。三人は13歳、どいつもこいつもわがままだったり、態度がでかかったり、無口だったりで困り者。おまけに旦那様や番頭たちが謎の病気で寝込んでいるという。

  まあこれだけで話の筋が見えてくる。その通りに進んでいく。

  いつも思うが、栄吉の腕が上がるのが遅すぎてイライラする。まあそれでも少しずつは形になりつつあるようだが。

 

みどりのたま」 

  さあ、禰々子の丸薬の出番である。冒頭長崎屋に所縁のありそうな男が記憶を喪失して江戸の町を歩いている。スリとの一騒動があって男は古松という病気の老人と引き合わされる。驚いたことに古松は男の正体を白沢(仁吉)だと簡単に見抜いてしまう。実はこの古松、神の庭から江戸にやってきた狐だったのである。その古松は神の庭に帰りたいのだがもう老いて体も悪くそれだけの妖力がない。

  ここから先はネタバレになるので伏せておくが、久々に一太郎の祖母で大妖おぎんが束の間顔を見せ、白沢の心が動くところが微笑ましい。そのわけは「ぬしさまへ」の「仁吉の思い人」を参照されたい。

 

たぶんねこ」 四、五の話

  最終話は逆に、見越の入道が月丸という幽霊を江戸に連れてくる。ひょんなことからその月丸と若だんな一太郎が一緒に江戸の町中に飛ばされてしまう。月丸は「生きがい」を求めてもう少し江戸の町を歩きたいと言い出し、そこから場久も巻きこまれての災難が始まる。人、妖、幽霊の三人組が強盗から追われ江戸の町中を逃げ回るが、、、

 

  というわけで「終」というあとがきがついている。「約束の半年」が過ぎて、やっぱり若だんな一太郎は病に臥せっていた。でも、今回は仁吉も若だんなに心配をかけたから薬湯は手加減してくれるかも。。。。。なんてことは期待してはいけなかったのだった。

 

 

 若だんな、そんなに頑張ってだいじょうぶ?両国を仕切る親分の提案で、大店の跡取り息子三人が盛り場での稼ぎを競うことに。体の弱い一太郎は、果たして仕事を見つけられるのか。妖と恋人たちが入り乱れるお見合い騒動、記憶喪失になった仁吉、生きがい(?)を求めて悩む幽霊…兄やたちの心配をよそに、若だんなは今日もみんなのために大忙し。成長まぶしいシリーズ第12弾。(AMAZON