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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編 / 村上春樹

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エッセイで披露した健全なる創作活動で書かれたであろう村上春樹の新作、新たな文体に挑戦はしているが、相変わらずの性描写の氾濫には辟易。オートグラフとマランツ#7&9(多分)で奏でられるショルティ&VPOの薔薇の騎士は聴いてみたい。

 

聖なる怠け者の冒険 / 森見登美彦

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 シリアスな幻想小説だった「夜行」とは対極にある、いつもの森見登美彦節が楽しめる京都シリーズ。「有頂天家族」「宵山万華鏡」と通底するとの作者弁だが「夜は短し歩けよ乙女」と表裏一体な感じがする。「僕は人間である前に怠け者なのです」の主人公と「マグロのように泳ぎ続けて疲労の向こうに突き抜ける」ぽんぽこ仮面の対比が面白い。

シンドローム / 鬼束ちひろ

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長いブランクを経ての「剣と楓」以来久々の新作。2011年の神戸でのコンサートでもうだめだなと思っていただけによく帰ってきたなと思う。しかし声質が変わった、独特の狂気を孕むようなハイトーンが影を潜め凡庸な声になってしまった。あの声で相変わらずの難解な歌詞を歌われても心に染み入ってこない。しかしとにもかくにも復活おめでとう。初回限定のライブ盤もやはり歌えないところはわざと崩してごまかしてはいるものの一聴の価値あり。

不時着する流星たち / 小川洋子

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小川洋子の新作。ヘンリー・ダーガーパトリシア・ハイスミスグレン・グールドエリザベス・テイラー牧野富太郎等、実在の人物や出来事を題材をとって小説世界を構築した短編10編が収められている。で、十話とも現実と非現実の狭間を行きつ戻りつするような、独特の美しくて醜くて残酷で暖かいまぎれもない彼女独自の世界。まあ結局何を題材に書いても小川洋子になるのだな。

 

 

 

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アドルフ・ヴェルフリ展@兵庫県立美術館

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二萬五千頁の王国 ファンタスティック・エキセントリック アール・ブリュットの「王」が描いた夢物語。とはいえ、幼女嗜好の犯罪者が半生を統合失調症で精神病院で過ごした男。約50の意匠が執拗に繰り返される画面の隙間をドイツ語と音符が埋め尽くし、コラージュの写真がかろうじて意味を伝える。エラそうに解釈できるような絵ではなかった。

 

兵庫県/特別展「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」(兵庫県立美術館)

 

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下はヤノベケンジのSUN SISTER

yanobe.hatenablog.com

恋妻家宮本

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お気楽ドタバタコメディと思いきや、意外によく脚本の練られた良質なコメディ。キャストもよい。天海祐希を初めて女性として見ることができた。昔の天海役が元ももクロ早見あかり!信じられないくらい奇麗になってた。エンドロ―ルの吉田拓郎の「今日までそして明日から」のフラッシュモブ的処理もGOOD。

 

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新釈走れメロス / 森見登美彦

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二回目の直木賞候補も惜しくも落選したモリミンこと森見登美彦の、名作パロディ集。安定の京都大学腐れ大学生シリーズだが、さすが名作を下敷きにしているだけあって暴走気味の走れメロスを除いては以外にシリアスだったりする。私の大好きな漱石夢十夜を用いた千野帽子の解説に見事やられた。

笹まくら / 丸谷才一

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丸谷才一ジェイムズ・ジョイス的手法を駆使し、徴兵忌避者の戦中戦後を描いた傑作反戦小説。戦中の行きずりの女との優れた恋愛小説ともなっている。