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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

星やどりの声 / 朝井リョウ

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  朝井リョウを読むシリーズ、今回は「星やどりの声」です。

 

星になったお父さんが残してくれたもの―喫茶店ビーフシチュー、星型の天窓、絆、葛藤―そして奇跡。東京ではない海の見える町。三男三女母ひとりの早坂家は、純喫茶「星やどり」を営んでいた。家族それぞれが、悩みや葛藤を抱えながらも、母の作るビーフシチューのやさしい香りに包まれた、おだやかな毎日を過ごしていたが…。(AMAZON解説より)

 

  建築士である亡父が残してくれた喫茶店星やどり」を守りながらも三男三女はそれぞれに成長していき、母は疲れていく。

 

  章ごとに子供たち6人の名前がつけられ、その名前にも一工夫あるあたりはいかにも朝井リョウなんですが、典型的なホームドラマで、最後はビターハッピーな終わり方。デビュー作「桐島」は文章が荒かった分かえって斬新さがあったんですが、この作品は文章が整って内容に破綻がない分だけ、朝井リョウらしさを求めて読む分にはつまらない印象を受けます。

 

  最新作「死にがいを求めて生きているの」とデビュー作「桐島、部活やめるってよ」を読み朝井リョウという作家に大いに興味が湧いてその間の作品を読み進めているわけなんですが、本作は相当若書きの印象を受けます。

 

   Wikipediaで調べてみると、この作品は予想通り初期も初期大学四年生の時に書いて、なんと卒論として提出した作品だそうです。この程度の作品でよく通ったなと思いますが、なんとゼミの指導教授だった堀江敏幸氏がこの文庫版の解説を書いておられます。なるほど、そういう風にこの卒論を解釈されたのか、と眼から鱗でした。(ってか、深掘りしすぎ?)

 

  まあ後年の朝井リョウの成長を知っているので微笑ましくは読めました。逆に言えば、もし時系列で読んでたらここで挫折したかも。。。