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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

天子蒙塵 第四巻 / 浅田次郎

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  浅田次郎先生の近代中国史シリーズ第五部「天子蒙塵」いよいよ完結、という事で、第三巻に次いで読了。感無量と言いたいところだが、率直なところ尻すぼみ感しか残らなかった。この巻だけをとってみれば、すべてのエピソードが中途半端なまま。恩田陸に勝るとも劣らない投げっぱなしジャーマン。期待していた西安事件まではまだ遥か遠い。何のために張学良を描き続けてきたのか、と腹立たしくなるくらい本巻での張学良の扱いはぞんざいだ。龍玉に関しては何をかいわんや。何とも言いようがない。

  これで完結だ、と言われても納得できるファンがどれだけいるのか?浅田先生の筆力が尽きた、と言うならそれまでだが。

 

  ラストは伏せておくが、「蒼穹の昴」に始まる壮大なこのシリーズはつまるところ、清朝末期の静海県の寒村の極貧家の兄弟妹、とりわけ李春雲(春児)と、放蕩息子梁文秀の物語だったのだ、ということ。そしてテーマは「没法子(メイファーヅ)(しょうがない)と言わないこと」。その点に関してだけは、浅田先生は志を貫いた。その一点だけに絞って敢えて☆三つを謹呈する。浅田先生お疲れさまでした。

 

『王道楽土を掲げる満洲ラストエンペラー・溥儀が再び皇帝の位に昇ろうとしている。そんななか、新京憲兵隊大尉が女をさらって脱走する事件が発生。二人の逃避行はパリへと向かう。一方、欧州から帰還した張学良は、上海に繰り返し襲い来る刺客たちを返り討ちにしていた。 日本では東亜連盟を構想し後に「世界最終戦論」を説く石原莞爾関東軍内で突出した存在になりつつあり、日中戦争突入を前に、日本と中国の思惑が複雑に絡み合う。 満洲に生きる道を見いだそうとする少年二人の運命は? この世を統べる力を持つ龍玉にまつわる伝説は、ついに最終章へ。『蒼穹の昴』シリーズ第5部、完結!(AMAZON解説より)』