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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

夢印 / 浦沢直樹

⭐️⭐️⭐️

   浦沢直樹の最新作「夢印(むじるし)」。珍しく一巻完結の作品長崎尚志の名前がないのも久しぶりじゃないかな?フジオプロの協力とあるのは、今回の主要登場人物として、赤塚不二夫の名キャラクター、「おそ松くん」のイヤミが登場するから。

 

そのあたりの経緯は、小学館HPから引用すると、

 

 今から4年あまり前、2014年頃にルーヴル美術館から浦沢直樹氏に漫画作品の執筆依頼がありました。ルーヴルは漫画を「第9番目の芸術」と認め、ルーヴル×漫画の共同プロジェクトを企画していたのです。浦沢氏は当時抱えていた連載作品で忙しく、長いことその企画に取りかかることができませんでした。その詳しい経緯は、単行本『夢印』豪華版の浦沢氏のあとがきに詳しく書かれてありますが、「9番目の芸術」としてではなく「日本漫画」として描く。漫画は、漫画であって、より自由で、馬鹿馬鹿しくて、美しい。果たして、浦沢直樹氏が出した答えは、「イヤミ」を主人公にするというものでした。赤塚不二夫先生の生み出した『おそ松くん』のキャラクター「イヤミ」。今も東京のどこかに生きていて、日本、フランス、世界の壮大なドラマのうねりを生み出す中心となる。浦沢直樹氏が生み出す「日本漫画」の自由、馬鹿馬鹿しさ、美しさに、是非、酔いしれてください。

 

ということだそうだ。おフランス=イヤミ、は我々の世代にとっては馴染みのものだけど、若い世代はほとんど知らないんじゃないかな。その点、エヴァ―グリーンな「鉄腕アトム」の浦沢版「PLUTO」ほどの支持は得にくいかもしれない。

 

  とは言え、やはり浦澤の絵の巧さはやはり超一流、現代漫画家の中でも群を抜いている。鉄腕アトムの主要登場人物を見事にリアル化した腕は健在で、イヤミにしても、浦沢らしい精密に描かれた人物として登場するんだけど、どうみても赤塚不二夫の造形したイヤミそのもの。また、ルーブル美術館サモトラケのニケフェルメールなどの描写も惚れ惚れするほどリアルだ。

 

  長崎尚志がいなくても、プロットもそれなりに練られている。随所にちりばめた小ネタにも笑える。最後の一コマのギャグはいつ出るかいつ出るか、と期待していたものではあったけれど、なるほどそう処理するか、と感心した。

 

  故赤塚不二夫と、その時代の漫画への素晴らしいオマージュである。

 

浦沢直樹×ルーヴル美術館プロジェクト!!

ある一つの家族。

ある一枚の絵。

ある一人の謎の男。

 

多大な借金を負った父と娘が、藁をもつかむ気持ちで訪れた古い館。 看板には“仏研”と書かれている…… 館内の暗がりを親子が歩き進むと、一人の男が静かに座っていた。 その男は初対面の親子に告げた。 「夢を見る人にしか、ルーヴルから美術品を拝借した話なんて、してあげないざんす」と………“ざんす”? (AMAZON解説より)』