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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

夢違 / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️

  提督とあかつき姐さんがレビューしてたので、興味を惹かれた。なんにせよ、恩田陸さんだし。

  ちなみに題名は「ゆめたがい」ではなく、「ゆめちがい」だそうだ。終章で出てくるある有名な仏像の名前から題名がとられていると考えてよいと思う。となると、常識的には「ゆめたがい」だろう。ただ、ネットで調べると「ゆめちがいとも読む」と書いてあって、どちらでもいいと言えばいいようである。しっくりこないけど。

 

  さて、それはさておき、今回は陸さんにしてはきっちりとした構成で、得意技大風呂敷広げっぱなし、投げっぱなしジャーマンといった展開を期待する向きにはは残念と言えば残念。(まあ細かいところではツッコミどころ満載ではあるが。)

 

  夢を可視化できるようになったら、そして予知夢を見る能力が強い女性がいたら、という「If」は面白い設定であるし、それを陸さんならではの言葉を用いて独自の世界を構築していく力量はさすが。 

  ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」から「沈める寺」までの三連の前奏曲、和水仙八咫烏等の小道具も前半は効果的に用いられていると思う。

 

  ただ、いやな予感がしていた通り、後半奈良県が主舞台となって来ると(奈良県出身の私には)違和感を強く感じるようになる。「まひるの月を追いかけて」もそうだったが、陸さんが書くとどうも現実の奈良県と乖離してしている感が強い。それこそ夢の中の奈良県か、という感じ。途中で出てくるH市(=郡上八幡)の方にも是非ご意見を伺いたいものである。

 

  まあそれはともかく、集団無意識・集合的無意識タイムリープの扱いにかなりの無理があるとは思うが、旅情SFミステリーとしてはまずまずうまくフィニッシュしたと思う。

  提督がこだわっておられたエピローグ的な最終章とその前の真の最終章の結末の齟齬については、古藤結衣子が「夢違」に成功した、ということでいいのではないかと思う。

 

夢の映像を記録した「夢札」、それを解析する「夢判断」を職業とする浩章のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する、集団白昼夢。浩章はパニックに陥った子供たちの面談に向かうが、一方で亡くなったはずの女の影に悩まされていた。日本で初めて予知夢を見ていると認められた、結衣子。災厄の夢を見た彼女は―。悪夢が現実に起こるのを、止めることはできるのか?戦慄と驚愕の新感覚サスペンス! (AMAZON解説より)