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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 / 万城目学

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  万城目学のもう一つの未読作品。前回の「悟浄出立」とは違ってユーモアを交えたほのぼのしみじみ系で、どちらかと言えばジュブナイルである。

 

   こういうものも書けるのだなあと感心する一方で、わざわざマキメーでこういうものを読まなくても、という気もする。

 

  ライバル、モリミーこと森見登美彦との違いは、やはり一読してわかるような文体を持っていないことかな。

 

  かのこちゃんのパートでは独特のユーモアで笑わせてくれる(ござる言葉とか、茶柱ならぬ○○○柱とか)のだが、マドレーヌ夫人(猫)パートは、文章も内容もまじめすぎて、モリミーの狸ほどの楽しさがない。泣かせるのが目的だとはわかっているが、それでも今一歩のユーモアがこちらにもほしかったところ。

 

  一番面白い、かのこちゃんとすずちゃんのお茶会を抜粋。大人の雰囲気を出すための「ござる」の応酬。

 

「では、茶会を始めるでござる」
「こちらにお菓子を用意したでござる」
「サンキューでござる」
「お暑いでござるか?」
「ちょっと暑いでござる」
「ならば、扇風機をオンにするでござる」
「かたじけないでござる」

 

 

 

『かのこちゃんは小学1年生の女の子。玄三郎はかのこちゃんの家の年老いた柴犬。マドレーヌ夫人は外国語を話せるアカトラの猫。ゲリラ豪雨が襲ったある日、玄三郎の犬小屋にマドレーヌ夫人が逃げこんできて…。元気なかのこちゃんの活躍、気高いマドレーヌ夫人の冒険、この世の不思議、うれしい出会い、いつか訪れる別れ。誰もが通り過ぎた日々が、キラキラした輝きとともに蘇り、やがて静かな余韻が心の奥底に染みわたる。 (AMAZON解説より)』