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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

朝日のようにさわやかに / 恩田陸

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    やってしまった。超多作の恩田陸さんなので、重複買いには十分気をつけていたかいこが、初めての二度買い。目次の一作目の題名を見て愕然。「水晶の夜翡翠の朝」。。。そう、理瀬シリーズのヨハン君の話じゃないか。

 

  まあせっかく買ったんだし読んでみるか、と読み進めると、ネタが割れていても意外と面白い。短編だと陸さん大風呂敷も広げられず、畳み忘れもないし。

 

  推理系にせよ、幻想系にせよ、ホラー系にせよ、ブラックユーモア系にせよ、きっちりと物語は終わる。なかなか良い出来である。「おはなしのつづき」なんて、最初は落語の「ももたろう」的な笑い話かと思いきや、最後には泣かせてくれるのだ。どうした、恩田陸(笑。(すっかり忘れていたが、ブクレコでおんなじこと書いていた、下記参照)

 

  AMAZONのレビューに「福袋のよう」というのがあって笑えた。言い得て妙。

 

  そんな中で不思議な雰囲気の「邂逅について」だけは異色。中井英夫へのオマージュだそうだ。彼の代表作「虚無への供物」への大長編オマージュ「鈍色幻視行」を連載中、と文庫版あとがきに書いてあるが、これまた陸さんらしく、まだ完結していないようだ。

 

 

『葬式帰りの中年男女四人が、居酒屋で何やら話し込んでいる。彼らは高校時代、文芸部のメンバーだった。同じ文芸部員が亡くなり、四人宛てに彼の小説原稿が遺されたからだ。しかしなぜ……(「楽園を追われて」)。ある共通イメージが連鎖して、意識の底に眠る謎めいた記憶を呼び覚ます奇妙な味わいの表題作など全14編。ジャンルを超越した色とりどりの物語世界を堪能できる秀逸な短編集。(AMAZON解説)

 

追記; ブクレコのレビュ―探したらあった。下記に追加記載しておく。

 

    恩田陸の短編集。いろんな雑誌に掲載された短編を14作品も収録してありますので、しっかりとした構成のものからショートショート程度のものまで内容は雑多です。

 で、お目当ては「麦の海に沈む果実」のスピンオフ作品、「水晶の夜、翡翠の朝」ただ一つ。これで「理瀬シリーズ」は(未完作品を除いて)すべて読みました。

 青い丘の学園の雰囲気をもう一度感じられたのは嬉しかったですが、やはり短編なので登場人物が少なく「犯人」は容易に推定できてしまうので内容は今一つ。留学生のJやJが、サトーハチローの詩にそんなに詳しいわけないだろ、てなツッコミも入ったりして。

 まあ理瀬シリーズのスピンオフという一点に読む価値のある作品です。

 以下13作品は、このシリーズとは全く関係ありません。で、「水晶の夜、翡翠の朝」を☆三つと規定して点数をつけ、簡単な紹介をしておきます。

 

「水晶の夜、翡翠の朝」 ☆☆☆

「ご案内」 ☆☆ ショートショートブラック

「あなたと夜と音楽と」 ☆☆☆ 会話と推理とジャズスタンダードと

「冷凍みかん」 ☆☆ 珍しくSF系ミステリ

「赤い毬」 ☆☆☆☆ お得意の幻想系、やっぱりイイネ

「深夜の食欲」 ☆☆ ホラー系ショート

「いいわけ」 ☆☆ ショートショートブラック、おまえはブッシュか!

「一千一秒殺人事件」 ☆☆☆ 和風ホラー、足穂系

「おはなしのつづき」 ☆☆☆ 落語の「桃太郎」系かと思いきや、一転感動児童文学系に早変わり

「邂逅について」 ☆☆☆☆ 文学少女系、恩田陸の詩はやはりいい

「淋しいお城」 ☆☆☆☆ 恩田陸風「本当は怖い童話」系、出色の出来

「楽園を追われて」 ☆☆☆ ミニ「黒と茶の幻想」的な普通の話

「卒業」 ☆☆ 一切状況説明のないスプラッター・ホラー

「朝日のようにさわやかに」 ☆☆ 恩田陸の好きなジャズを題材にした半エッセイ風ミステリ、内容よりジャズ。「まじめすぎて面白くない」ととかく評判の悪いW.Mはやっぱりすごい人なんだあ、と再認識。

 

 以上平均は☆2.6となりました。やっぱり恩田陸は長編ですね。で、あとがき見たら、恩田陸が詳しく解説しててびっくり、というオチがついておりました。