ブライトの憂鬱 / 竹宮恵子
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竹宮惠子の名作「私を月まで連れてって!」のスピンオフ作品。あの名脇役おヤエさんの息子ブライトの憂鬱な日々。何故に?
以前竹洗会推薦の「エデン2185」をレビューしましたが、今回はもう一つのスピンオフ作品「ブライトの憂鬱」を読んでみました。なんせあのおヤエさんの息子の話らしいので、こりゃ読まなくっちゃね、てなもんです、はい。
いつも仏頂面と子供らしくない優雅な身のこなしで「憂鬱なブライト」は今日もゆく――。おヤエさんとハリアンの双子の兄妹ブライトとナナ、そしてダンとニナにまた会える! SFラブコメの金字塔「私を月まで連れてって!」続編登場!! 収録作品:ブライトの憂鬱 Vol.1 / ブライトの憂鬱 Vol.2 / ブライトの憂鬱 Vol.3 フレンドリーな悪魔 /ブライトの憂鬱 Vol.4 氷のように輝く君に (AMAZON解説より)
「エデン2185」が原作とは全く別のシリアスなストーリーであったのに比べるとこちらはスーパーハウスキーパー・おヤエさん(なんと第一話ではまだやっている!)、底抜けに明るくてライトなハリアンはもちろんのこと、原作の主人公ダン・マイルドもニナ・フレキシブル・マイルドもバンバン出てくるのでコミカルSF路線まっしぐら。サブリナもちょっとだけ顔を出しますし。
というわけで「エデン」ほどの傑作ではありませんが、「私月」ファンにはこちらの方が楽しめます。
でもそんな中で、主人公のブライトだけはいつも仏頂面で不機嫌、そして優等生。ハリアンに言わせれば宇宙事故で亡くなった兄のブライトとそっくりなんだそうで、遺伝もあるんでしょう。
でもブライトの憂鬱は、いくつものファクターが組み合わさってのこと。
・ 双子の妹ナナとともに、彼女を守るために生まれてきたこと
・ 彼はESPで人の心を読めてしまうこと
・ 彼は優秀眉目秀麗学業優秀で、ナナは贔屓目に見ても凡庸な女性でしかないこと
・ シェラトン家という巨大財閥の後継者であることが運命づけられていること
というわけで、近づいてくる女性や大人たちの下心をいやというほどESPで読ませられ続けてりゃ、憂鬱にもなります。スーパーレディである母とも対立しがちに。。。
そんな彼のESP能力を制御するためもあって家庭教師に送り込まれるのがニナ、大人のニナとあのロリコン・ニナ、双方の形態をとれるところが笑わせます。
で、彼の心配をよそにそれなりのレディに育ったナナは、あるパーティでシェラトンの取引先のテラフォーミングを多がける会社の息子の好青年、レナルド・サーペンタインに惹かれます。
気に入らないブライトは(まあそれだけが理由じゃないんですが)地球を離れ、火星ステーションのハイスクールに進学。そこで、ナチュラルで心の裏の読めないクア・テイという同級生と出会い、彼の成長の契機となります。
一方でナナはレナルドと結婚を前提としたお付き合いを始めるとブライトに報告。気に入らないブライトは、、、
まあそこからの大騒動は読んでお楽しみ、そして後半ではブライトに幻の恋人ができてしまいます。なんとSPで交感しあうこの二人ですが、彼女の方はまだ生まれてもいない!
もし生まれたら、彼との年の差は丁度ダンとニナとおんなじ。。。
ハイ、勘のいい方はもうお分かりですね。「私月」ファンとすれば読まざるを得んでしょう(w。
おヤエさんも母となっても相変わらずではありますが、本作以上に脇役に回っていて残念。でも、一か所だけ「やったね」というシーンが。おヤエさん、ダン、ニナの3ショットをちらっとお見せしておしまいです。