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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

風とともにゆとりぬ / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、ゆとり世代のトンデモ大学生活を綴った「時をかけるゆとり」に続く第二弾「風と共にゆとりぬ」です。堂々と巻頭に「マーガレット・ミッチェルに捧ぐ」と書いてあります。よう言うた、というか、どの口が言う、というか。。…

時をかけるゆとり / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、小説を一通り読み終えたのでエッセイに入ります。畏れ多くも原田知世様の「時をかける少女」からお題をいただいた「時をかけるゆとり」です。風の噂でバカバカしいエッセイだとは聞いていたのですが、まあ予想をはるかに上…

楽しみと日々 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎ 「失われた時を求めて」以外で岩波文庫版で手に入るマルセル・プルーストの作品はもう一つあり、これも読んでみました。「楽しみと日々」というヘシオドスの「仕事と日々」を衒った題名の第一作品集で、短篇、散文、詩などから成っており、一つ一つが…

太陽と乙女 / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ モリミーこと森見登美彦の「太陽と乙女」です。(いろんな意味で)衝撃のデビュー作「太陽の塔」と(乾坤一擲待望の女性ファンを一気に増やした)代表作「夜は短し歩けよ乙女」を合体させたような題名からして、またまた京大腐れ大学生と妄想不思議…

盤上の夜 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 「宮内悠介を読もう」シリーズの五冊目はデビュー作「盤上の夜」です。本来なら真っ先に読まねばならないところなのですが、本作のテーマであるボードゲーム類が全く不得意であることと、紹介文やレビューで「盤上の夜」の主役の設定が嫌だったことで…

プルーストと過ごす夏 / アントワーヌ・コンパニョン他

⭐︎⭐︎⭐︎ 先日読了したマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」ですが、読み終わってホッとするかと思いきや、逆にズルズルあとを引いています。この化け物のような、この本の著者の一人に言わせれば“いささか奇怪で、見事な具合に失敗している”小説は一…

空の青さを知る人よ / 額賀澪

⭐︎⭐︎⭐︎ 人気アニメ制作チーム超平和バスターズの、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない(通称「あの花」)」「心が叫びたがってるんだ(通称「ここさけ」)」に続いて昨秋公開された「空の青さを知る人よ」のノベライズ作品で、書いておられるのは超平…

収容所のプルースト / ジョセフ・チャプスキ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」を完読できれば読みたいと思っていた本です。光文社古典新釈文庫版の翻訳をされている高遠弘美氏が第三巻「失われた時を求めて〈3〉第二篇・花咲く乙女たちのかげに I」の解説でこの書に言及し、手も…

失われた時を求めて 14 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」最終第14巻です。前巻「見出された時 I」の後半と本巻「II」全体を占めるゲルマント大公邸の午後のパーティーでこの長大な物語はついに完結し、主人公の「私」は「失われた時」を見出し、自らの物語…

失われた時を求めて 13 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 読書好きなら誰もがその名前は知っている「A la recherche du temps perdu 失われた時を求めて」、フランスの作家マルセル・プルーストが1922年に亡くなるまでの約15年間をこの一作のためだけに費やし、その原稿枚数たるや3000枚以上、日本の400…

世界地図の下書き / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ デビュー作「桐島、部活やめるってよ」と螺旋プロジェクトの「死にがいを求めて生きているの」の間を埋める「朝井リョウを読むシリーズ」もこれで最後の作品となります。2013年の「世界地図の下書き」です。前年の「何者」での直木賞受賞に続き、この…

チア男子!! / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズもあと二作、というところまできて#stayhomeで中断していました。6月に入り、ようやくブックオフにでかけてささっと二冊買ってきました。で、今回は「チア男子!!」です。 「桐島」に続く第二作、朝井リョウはもちろんまだ…

失われた時を求めて 12 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ プルーストの「失われた時を求めて」いよいよ十二巻、第六篇「消え去ったアルベルチーヌ」に入ります。「消え去った」とあるように、前巻最後に出奔したアルベルチーヌの死が本巻のメインテーマとなります。 一方で、元々の出版予告には「ソドムと…

ヨハネスブルグの天使たち / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読むシリーズ、今回は「ヨハネスブルグの天使たち」を選んでみました。2013年に発表された第二作となりますが、いやあ凄かったです、私がこれまで読んだ宮内作品中最高の出来でした。 伊藤計畫の「虐殺器官」「ハーモニー」を彷彿とさ…

猫を捨てる 父親について語るとき / 村上春樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 先日紹介した村上龍の新作「MISSING」では、龍が初めて母の歴史を語っていましたが、この最新エッセイでは村上春樹がついに不仲だった父について重い口を開いています。 あとがきで彼自身も語っていますが身内のことを書くのはけっこう気が重いことで…

失われた時を求めて 11 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎ 「失われた時を求めて」第五篇「囚われの女」も後半に入ります。まずは本篇の構成をおさらいしておきます。恋人アルベルチーヌの同性愛疑惑に駆られた「私」が、避暑地バルベックからパリに彼女を連れ帰り、自宅に半幽閉状態にした秋から春までが語ら…

失われた時を求めて 10 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎ 岩波文庫版の「失われた時を求めて」も第10巻、第5篇「囚われの女」に入ります。ここから先はプルーストの死後、遺稿を元にして出版が続けられたので、本文の解読や配列、改行の有無、イタリック体使用の有無等、刊本による異同がかなりあるそうです…

超動く家にて / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読もう、三作目は前作に続きお笑い系作品「超動く家にて」です。宮内さん待望の初「あとがき」によりますと、 これまで未収録であった短編やショートショートのうち、ネタに偏った作を集めた 16編 が収められています。 最初にちょっと真面…

失われた時を求めて 9 / マルセル・プルースト、吉川一義

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルーストの「失われた時を求めて」岩波文庫版も第9巻に入ります。サブタイトルは「ソドムとゴモラ II」で、後半第二、三、四章が収められています。 舞台は前巻に引き続き避暑先であるノルマンディー地方ですが、ホテルのあるバルベッ…

逆ソクラテス / 伊坂幸太郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私のお気に入りの作家伊坂幸太郎待望の新作で、少年少女の学校生活の思い出を描いたライトな作品集となっています。 あいかわらず飄々とした筆致なのでファンとしては安心して読めるのですが、彼にしては珍しく低年齢層を主人公に持って来たな、と…

失われた時を求めて 8 / マルセル・プルースト、吉川一義

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 20世紀フランス文学の記念碑的大作「失われた時を求めて」もいよいよ後半、第四篇「ソドムとゴモラ」に入ります。ってか、これだけ読んできてまだ折り返し地点なのか、と思うと気が遠くなりそうなんですが。。。 題名の「ソドムとゴモラ」は皆さん…

スペース金融道 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読もうシリーズ2本目は面白いのが読みたくて「スペース金融道」にしました。なにわ金融道スペース篇みたいなベタな作品かと思いきや、SFと経済小説を融合させて結構ドライでシニカルな笑いをかぶせた、かなりハイブロウな作品になっていま…

彼女がエスパーだったころ / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ ポスト伊藤計劃として注目され、今や日本を代表するSF作家となっておられる宮内悠介さん。以前「人工知能の見る夢は」というアンソロジー集でショートショートを読んだだけだったのですが、最近efさんが精力的にレビューされておられるので気になって…

時代へ、世界へ、理想へ 同時代クロニクル2019→2020

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私が尊敬してやまない孤高の作家高村薫女史の新刊である。今回は小説ではなく評論集、週刊サンデー毎日誌の「サンデー時評」に2019年1月から2020年3月まで掲載された時評の単行本化である。 歯に衣着せぬ高村薫女史のこと、帯からして煽ること煽る…

ドミノ IN上海 / 恩田陸

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ こういう時節ですから、お気楽脳天気な作品を。。。 こういう時節に中国が舞台の作品をレビューしてどうする、という声も聞こえますが。。。 めげずにいきます! 「蜜蜂と遠雷」で直木賞を獲ってしまい、すっかり真面目な作家だと思われてしまって…

ままならないから私とあなた / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、今回は「ままならないから私とあなた」です。2016年の作品で昨年文庫化されました。 「レンタル家族」 「ままならないから私とあなた」 の二作が収録されています。なお単行本化されるにあたり「ままならないから私とあ…

MISSING 失われているもの / 村上龍

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 私の世代には絶大な影響力のあったW・MURAKAMIの一人村上龍の、 「オールド・テロリスト」以来5年ぶりの長編となります。 1976年の衝撃のデビュー作「限りなく透明に近いブルー」以来、殆どの小説につきあってきましたが、今回は本当に驚きました…

もういちど生まれる / 朝井リョウ

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 朝井リョウを読むシリーズ、今回は2011年の「もういちど生まれる」です。大学4年時に書かれた「星やどりの声」(2010)の一年後、西加奈子さんの解説によると、サラリーマンと作家の兼業時代の作品ですが、前作から著しい進境を見せていると感じま…

バベル九朔 / 万城目学

⭐︎ 面白くてサクサクっと読める本がないかな、と探していてみつけたのがこの文庫本。モリミーのライバル、マキメーこと万城目学の「バベル九朔」です。2016年の作品で、昨年文庫化されました。 俺は5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしながら作家を…

約束された移動 / 小川洋子

⭐︎⭐︎⭐︎ 久々の小川洋子。去年末に出た新刊です。 「ブクレコ」や「本が好き!」などで私はこれまで、 「静謐で美しい」 「どこか狂っている世界」 「独特のエロティシズム」 「小川洋子は細部に宿る」 といった表現で小川洋子を評価してきました。 今回も例…