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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

しゃばけ漫画 佐助の巻 / 畠中恵、萩尾望都、他

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  しゃばけシリーズの文庫本落穂拾い、人気漫画家によるトリビュート「しゃばけ漫画」、仁吉の巻についで今回は佐助の巻。ついに真打モー様の登場!

 

原作:畠中恵

キャラクターイメージ原案:柴田ゆう

漫画:

萩尾望都: うそうそ 箱根の湯治についての仁吉と佐助の反省会議(ミーディング)

雲田はるこ: ほうほうのてい 〜落語「千両みかん」より

つばな: 動く影

村上たかし: あやかし帳

上野謙多郎: 狐者異

安田弘之: しゃばけ異聞 のっぺら(坊に✖️)嬢

柴田ゆう: しゃばけ4コマ

 

うそうそ」 何と言ってもモー様が本巻のハイライト、本腰を入れての約30Pという読み応えのある作品。

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萩尾望都「うそうそ」表紙

 


  第二巻以降唯一の長編である「うそうそ」を丸々取り上げ、手代二人の反省会議として全編をうまく要約、本編ではできなかった湯治を最後に若だんなにさせてあげるというサービスぶり。

 若だんな、佐助、仁吉もイケテルが、山神の娘、お比女がもう全くのモー様タッチになっているが嬉しい。

 

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萩尾望都先生のお比女

 

  もう、読むべし、の一言である。

 

ほうほうのてい」 佐助がついはずみで、若だんなの「みかんが食べたい」というリクエストに応える約束をしてしまい、真夏に江戸中を探して回る苦労譚。雲田はるこさんが落語の「千両蜜柑」に目をつけたところが炯眼。重病の若だんな、番頭、主人という取り合わせとそのストーリー展開はまさに「しゃばけ」の世界そのもの。残念ながら落語では番頭が三房(三百両相当)を持ったまま逐電するが、まさか佐助がするはずはない。そこはうまく雲田さんが処理している。

  先頃亡くなられた桂米朝師匠の十八番だったことを思い出し、そこにもちょっとほろっとした。

 

動く影」  これまたシリーズ名作の一つ、「おまけのこ」所収の「動く影」をつばなさんが漫画化。仁吉と佐助が手代として入る前の若だんな幼少の頃が舞台であり、まだ祖父も健在だった頃で、その頃独特の雰囲気をうまく表現しておられる。人情噺のまとめ方もうまい。

 

あやかし帳」 舞台は現在、クラスでいじめにあっている少年が、すべてあやかしのせいとしてやり過ごそうとするが。。。う〜ん、あまり好きではない題材なので。。。

 

狐者異」  これも「おまけのこ」所収の人気作「こわい」を上野謙多郎さんが漫画化。しゃばけシリーズのあやかし達の中では異質な「本人がどう思っていようが関係なしに妄念と執着の塊で、人と交わらないのは勿論、妖からも嫌われており、さらには仏様にさえ厭われているという、恐ろしいといえば恐ろしい、哀しいといえば悲しい存在」である「こわい」を上手く視覚化しておられる。若だんなの底なしの好意が届かないラストのまとめ方もよかった。

 

しゃばけ異聞」 これは現代少女がしゃばけの世界に入り込むという面白い設定。のっぺらぼうの少女に若だんなやあやかしたちが目、耳、口をつけていく、という安田弘之さんのアイデアはよかった。そう言えば菓子職人栄吉の出番が今までなかったが、この作品でやっと登場(「動く影」では活躍するがこれは子供の頃の栄吉)した。

 

しゃばけ 4コマ」 最後を締めるのはやはり柴田ゆうさん。4コマ漫画4本は安定の面白さ。

 

  以上、二冊楽しませてもらった。このアンソロジーが編まれて以降もたくさんの作品や新キャラが生まれているので、ぜひまたやってほしい企画である。

 

若だんなや妖たちに漫画で会える! 萩尾望都先生をはじめとする超豪華漫画家たちが、なんと「しゃばけ」の世界をコミック化!「うそうそ」「狐者異」といった人気エピソードに、新鮮な視点で描かれるオリジナル作品、そしておなじみのしゃばけ絵師・柴田ゆう先生の四コマもあり。シリーズ初心者からマニアまでが大満足間違いなし、しゃばけ愛があふれる奇跡のコミック・アンソロジー