Count No Count

続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

しゃばけ漫画 仁吉の巻 / 畠中恵、高橋留美子、他

⭐︎⭐︎⭐︎

  しゃばけシリーズの文庫本落穂拾い。2013年、「小説新潮」で人気漫画家によるトリビュート漫画の連載が開始され、翌年それらを集めたアンソロジー集がパンチコミックスから刊行され、2016年には潮文庫から「しゃばけ漫画 仁吉の巻」「しゃばけ漫画 佐助の巻」として刊行された。

 

  まずは「仁吉の巻」

 

原作:畠中恵

キャラクターイメージ原案:柴田ゆう

漫画:

高橋留美子: 屏風の中 

みもり: 仁吉の思い人 

えすとえむ: 月に妖

紗久楽さわ: きみめぐり

鈴木志保: ドリフの幽霊

吉川景都: 星のこんぺいとう

岩岡ヒサエ: はるがいくよ

 

屏風の中」: 言わずと知れた人気漫画家高橋留美子先生のオリジナル作品である。付喪神屏風のぞき」の屏風の世界に入り込んでしまった若だんな。仁吉と佐助に救い出されて、屏風のぞきが怒られる展開は畠中ワールドお約束。安定の畠中路線なのにちゃんとルーミックワールドしてるのもやっぱりすごいなと思うし、一方タッチが柔らかく背景などは繊細で美しいあたり、絵の描きわけもみごと、さすが高橋先生である。

 

仁吉の思い人」: 第二巻「ぬしさまへ」所収、仁吉千年の恋を描いた名作をみもりさんが忠実に漫画化。仁吉の描写はばっちりだが、皮衣様はちょっと可愛過ぎ(幼な過ぎ)?

 

月に妖」: えすとえむという漫画家は存じ上げなかったが劇画調、大人の鑑賞に堪える画風で名月の夜の若だんなと手代二人、鳴家たちを描き出す。

 

きみめぐり」: オリジナルのキャラ、神様の神農様が若だんなに10年かけて作った新薬を持ってくる話。神農さま自体もイケてるが、鳴家に化けた姿もかわいい。一方猫又のおしろ(多分、もしかしたら獺かもしれないが)の妖艶さにはドッキリ。紗久楽さわさんのキャラ作りはなかなか華やか。

 

ドリフの幽霊」: 付喪神と化したアナログ電波の物語。アナログのテレビは1953.2.1-2011.7.24だったから、確かに付喪神化条件の「大事に愛されて50年」はクリアしている。鈴木志保さんの着眼点が良く、題名から想像するようなおふざけではない佳作。

 

星のこんぺいとう」: 「ねこのばば」所収の「ねこのばば」で、猫又の小丸が、見越し入道様が若だんなにくださった「桃色の雲」を食べてしまったというエピソードがあった。その後日譚を描いた吉川景都さんの素敵な作品。成長した小丸がかわいい。その小丸が「桃色の雲」の代わりに探し出してきた藍色の雲」に、若だんなは魅入られてしまう。手代二人になんとかしろと言われた小丸は自らの片目を使って。。。

  オリジナル作品としては二冊の中で一番の出来ではないかと思う、美して粋な作品である。

 

はるがいくよ」: もう待ってました!、と言うしかない、私がシリーズの中でも一番好きな作品。「ちんぷんかん」所収。桜の花の命の短さに、妖と人の寿命の違いを重ね合わせた泣かせるストーリーを岩岡ヒサエさんが見事に漫画化。また泣いてしまった。

 

   さあ、「佐吉の巻」はいよいよあの先生が登場だ!

 

 ファンの皆様の夢が、ここに実現! 高橋留美子先生をはじめ超豪華漫画家が、我らが「しゃばけ」シリーズをなんとコミック化!「はるがいくよ」「仁吉の思い人」などの人気エピソードから、個性たっぷりのオリジナル作品まで。先生たちそれぞれのタッチで、若だんなが、仁吉と佐助が、そして妖たちが大活躍! 「しゃばけ」がもっともっと好きになる、贅沢すぎるコミック・アンソロジー