Count No Count

続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

ころころろ / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️

   しゃばけシリーズ第八作。いつものように五編の短編が並んでいるが、今回はその全てを貫いて、若だんなの失明騒動を描いているところが面白い試み。

 

  まず一作目の「はじめての」では、若だんな一太郎12歳の頃のほのかな初恋が描かれる。その初恋の少女の母が目を患っており、目の神様「生目神(いくめがみ)」のことにさらっと触れられる。

 

  そして二番目の「ほねぬすびと」冒頭、一太郎が突然失明してしまい、大騒ぎに。そんな折も折り、長崎屋はある武家からの依頼を断りきれず困り果てている。それは、何度やっても失敗するから長崎屋の船で魚の干物を運んでほしいというもの。主人である一太郎の父は渋々ながら引き受け、無事干物を入れた籠は長崎屋の蔵に到着するが、その夜全ての籠から干物がなくなってしまい、父は窮地に立たさる。

 

  目の見えぬ一太郎だが、そこは推理力でことの真相にたどり着き、武家の対面を汚さない解決法も思いつき、万事丸く収まる。が、一太郎は失明したまま。そしてこれは病ではなく、ある玉を紛失したためくだんの生目神が怒ってやったことではないか、ということに。

 

  そして三番目の「ころころろ」は、手代の大妖白沢こと仁吉が若だんなの目を元に戻すべく、前作で河童に持ち去られたらしい玉を探して江戸中を奔走。手がかりはすぐに見つかるが、貧乏神金次のなせるわざか、やたらと妖たち、そしてあやかしの見世物小屋から逃げてきた少年に頼られてしまい、立ち往生。さらには悪鬼や見世物小屋の人間たちと対決する羽目になり。。。 仁吉の困りっぷりが笑える、一番躍動的な作品。

 

  一方、四番目の「けじあり」は雰囲気が一変。今度は犬神こと佐吉の出番だが、なんと、その佐吉が嫁をもらい独立して小間物屋の主人となっている。その小間物屋に朝になると「けじあり」という文字が書かれた紙が貼られる。なんのことかさっぱりわからない佐吉。

  そして鬼をやたら恐れ、退治してくれとすがる嫁。どんどん店構えが大きくなっていく小間物屋。この世のものと思えぬ妙な雰囲気が漂う中、後半物語は急展開、一太郎の失明騒動との関連が最後に明かされる。本巻でも一番幻想的な佳作。

 

  最後の「物語のつづき」はいよいよ生目神と、一太郎&仁吉、佐助をはじめとする長崎屋の常連の妖たちとの対決。場所は例の、金には汚いが霊能力は極めて高い僧寛朝のいる上野広徳寺。神様にしては聞き分けのないひねくれ者の生目神一太郎の目を元に戻したくば物語の続きを答えてみよと無茶な注文。桃太郎、浦島太郎、さらには自身の悲恋物語と提案していき、、、

 

  面白いし、日本の神に関する考察がなかなか鋭いとは思うが、前二作で仁吉と佐助が見つけ出した玉との関連があまりはっきりと語られていないので、これまでの流れが断ち切られた感あり。

 

  試みは面白いが、やや残念な印象を拭えない巻であった。

 

ある朝突然、若だんなの目が見えなくなってしまったからさあ大変。お武家から困ったお願いごとを持ち込まれていた長崎屋は、さらなる受難にてんやわんやの大騒ぎ。目を治すための手がかりを求め奔走する仁吉は、思わぬ面倒に巻き込まれる。一方で佐助は、こんな時に可愛い女房をもらっただって!?幼き日の一太郎が経験する淡い初恋物語も収録された、「しゃばけ」シリーズ第八弾。