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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

しゃばけ / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️

  「つくもがみ貸します」に次いで、いよいよ長大なシリーズの起点となった「しゃばけ」を読んでみた。

 

江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけなのだ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う…。愉快で不思議な大江戸人情推理帖。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞。(AMAZON解説より)

 

  解説にもあるように2001年の日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞を受賞している。この時の大賞は粕谷知世 の「太陽と死者の記録」という作品。う~ん、知らん。  

  冗談はともかく、ファンタジーノベル大賞の歴史の中でもこの「しゃばけ」ほど成功した作品はないのではないか。その後シリーズ化されて現在第14巻まで出ているし、ドラマ化、アニメ化とメディアミックスが展開されたのも周知の事実。

 

  ファンタジーノベルとしては内容的には優秀賞でも仕方ないかな、とは思うが、ヒットする要因がたくさん詰まってることは確か。

 

・ 江戸時代を舞台にした時代物

・ 主人公一太郎がヘタレにみえて意外に芯がしっかりしている

・ 主人公の世話役の大妖、佐助仁吉をはじめとする妖(あやかし)の面々がなかなか魅力的

・ ストーリーがべただけど面白い

・ 人情噺でほろりとさせる

 

  これだけ揃えば、あとは作者の文章の力量次第だが、デビュー作にして時代ものをこれだけ書ければ十分。「高直」(こうじき、高価の意)なんて古い単語が頻出するが、それが違和感なくストーリーに溶け込んでいる。ちなみにAMAZON解説にあるあやかしの名前「鳴家」は「やなり」と読ませる。

 

  と言うわけで、この「しゃばけ」、猟奇殺人事件の謎を追う単独作品としてよく出来ているのはもちろん、Retrospectiveに見れば長大なシリーズの第一弾として病弱な若だんな一太郎のとんでもない出生の秘密を解き明かし、この作品の世界観を説明する役割を十分に果たしている。

 

  第二巻以降も、ぼちぼちと読んでいきたい。