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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

つくもがみ貸します / 畠中恵

⭐️⭐️⭐️

   そろそろまた新しい作家を開拓せねばなあ、と思ってブックオフへ出かけた時にふと見かけたの畠中恵さんの文庫本。何冊か手に取ってみてみると、殆どがドラマにもなった「しゃばけ」シリーズ。一度に全部買うのはさすがにためらわれたので、まずはお試しで、この「つくもがみ貸します」と「しゃばけ」を買ってきた。

 

お江戸の片隅、お紅と清次の姉弟2人が切り盛りする小さな店「出雲屋」。鍋、釜、布団と何でも貸し出す店ですが、よそにはない奇妙な品も混じっているよう。それらは、生まれて百年を経て、つくもがみという妖怪に化した古道具。気位高く、いたずら好きでおせっかい、退屈をもてあました噂超大好きの妖たちが、貸し出された先々で拾ってくる騒動ときたら…!ほろりと切なく、ふんわり暖かい、極上畠中ワールド、ここにあり。  (AMAZON解説より)

 

   この作品は独立した作品で、出雲屋という江戸深川の岡場所にほど近いところにある小道具屋兼損料屋(貸出業)のお紅清次姉弟が表主人公、そして置いてある器物のうち、齢百年を重ねて化した「付喪神」の野鉄(根付)、月夜見(つくよみ)(掛け軸)、お姫さん(姫様人形)、五位(煙管)、うさぎ(櫛)などがおしゃべりな裏主人公として活躍し、起こる事件の謎を解明していくお話。

 

  序と五編の短編からなるが、前半は説明がてらの独立した話、後半はお紅が気にしている(と血のつながっていない弟分の清次が気にしているだけかもしれない)蘇芳(すおう)という香炉と、その持ち主であった同じく蘇芳という俳号の男の謎について少しずつ少しずつ解き明かされていく。

 

  江戸深川の情緒もたっぷりに人情噺が語られるという常道をきっちりと押さえた語り口なので安心して読めた。敢えて言うと、人と付喪神は直接会話をしないというルールで縛ってあるので、それが時には面白くもあり、時には隔靴掻痒の感もありだった。

 

  「しゃばけ」シリーズではその点付喪神と主人公が自由に話せるらしいので、どんな展開になるか楽しみ。