星間商事株式会社社史編纂室 / 三浦しおん
⭐️⭐️⭐️
これもまたブックオフでの拾いもの。いかにも「舟を編む」の二番煎じっぽいのだが、まあちょうど軽い読み物が欲しかったところだったので買ってみた。
川田幸代29歳は社史編纂室勤務。姿が見えない幽霊部長、遅刻常習犯の本間課長、ダイナマイトボディの後輩みっこちゃん、「ヤリチン先輩」矢田がそのメンバー。ゆるゆるの職場でそれなりに働き、幸代は仲間と趣味(同人誌製作・販売)に没頭するはずだった。しかし、彼らは社の秘密に気づいてしまった。仕事が風雲急を告げる一方、友情も恋愛も五里霧中に。決断の時が迫る。(AMAZON解説より)
一言、面白かった。
でおしまいではなんなので真面目にレビューしよう。そもそも、三浦しおんさんの小説は「普通に良い」と思う。起承転結はきっちりとしているし、読みやすいし、適度なユーモアがあるし、取り上げる題材をきっちりと勉強される。
言うことなし!
でおしまいではなんなので(以下略。
ということで、時々ふっとしおんさんの小説を読みたくなる。特に今回は山尾悠子でオーバーヒートしそうなほど神経回路を酷使したので、ブックオフでこの本を見かけて一も二もなく買ってしましまったわけである。もちろんクールダウン目的。
なので全く内容を知らずに買ったわけで、題名から「舟を編む」的な小説を要請されて書いた、あるいは書かされたんだろうな、と思っていた。結果当たらずともかなり遠い内容でビックリしたが、とにかく面白かったので文句のつけようがない。やっぱり、しおんさんの小説は普通に良いなあと感じつつ、あっという間に読んでしまった。
実はしおんさん、腐女子研究の大家、BL小説、コミケ大好き。自分の小説ではさすがにモロなBLは書けないが、そのフラストレーションをこの小説で一気に解消された感じ。主人公に表は左遷された真面目女子社員、裏は高校時代からの筋金入りの腐女子を持ってきて、上司の冴えない中年親父と二人のあんまり働きそうにない同僚とで抱腹絶倒のドラマを展開していく。
当然小説中小説でBL趣味を満開にされているが、上手いのはそれに加えて上司の妙ちくりんな自伝時代劇小説、本筋の鍵となる純愛活劇小説を加えて、三本もの小説内小説で笑わせてくれるところ。
メインストーリーとしては、表の社史を真面目に作るふりをしながら会社の「高度経済成長期の闇」を探り当てて裏社史を作っちゃうという離れ業を展開するところがキモになるわけだが、それはまあ読んでのお楽しみということで。
しおんさんもそのあたりはまじめに書きつつ、話のキーパーソンのダメ課長にBL小説の 「受けキャラ」 を重ね合わせて楽しんでおられるようで、何よりだった。