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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

ネクロポリス / 恩田陸

⭐️⭐️

  投げっぱなしジャーマンとの評価も高い(?)恩田陸さん。今回は投げっぱではなかったものの、例によって例の如く上巻上々、下巻はひどい。前半星四つ、後半一つで平均2.5と言いたいところだが、結末があまりにもひどいので星二つ。

 

  この作品、興行プロレスに例えると分かりやすい。

 

  異界ファンタジーと、

  パラレルワールドSFと、

  殺人推理小説と、

  日英原住民比較文化人類学と

 

異種格闘技バトルロワイヤルで、前半はそれぞれが華麗な技を見せつけておいて、後半は収拾がつかなくなり、終盤は何じゃそれ状態になり、結局場外乱闘全員反則負け、みたいな。

 

 『懐かしい故人と再会できる場所「アナザー・ヒル」。ジュンは文化人類学の研究のために来たが、多くの人々の目的は死者から「血塗れジャック」事件の犯人を聞きだすことだった。ところがジュンの目の前に鳥居に吊るされた死体が現れる。これは何かの警告か。ジュンは犯人捜しに巻き込まれていく―。 』(上)『聖地にいる173人全員に殺人容疑が降りかかる。嘘を許さぬ古来の儀式「ガッチ」を経ても犯人は見つからない。途方にくれるジュンの前に、「血塗れジャック」の被害者たちが現れて証言を始めた。真実を知るために、ジュンたちは聖地の地下へ向かうが…。 』(下)

 

  大体四分の三のところあたりまで正統派ファンタジック・ミステリーでワクワクドキドキさせておいて、終盤にいきなりアナザー・ヒルパラレルワールド全てが合体するというのもひどいが、引用文の下巻解説の「真実を知るためにジュンたちは聖地の地下へ向かうが...。」の無意味さには呆然とする。

  パラレルワールドが合体してできた奇妙奇天烈な「祈りの城」にビビってしまい、もとへ、そこへ挑むべく、原住民ラインマンと犬のクロ、正体を現したキーパーソン・ケント叔父さん、そして主人公のジュンの三人と一匹は、一旦アナザー・ヒルから脱出し、船で祈りの城の海側へ回り、そこから岩壁を登っての、裏手からの侵入を試みる。

  この決死行が延々と描かれるのだが、普通ここからハラハラドキドキのバトルを展開していかなければいかんところだろう。それが結局何の邪魔だても入らず、誰にも襲われず、岸壁には登り路があり、裏手の門の閂は開いておりで、

 

  ただ、おりて船に乗ってまた上がってきました、閂開いてました。入りました、もうみんな揃ってネタバレ説明してました。。。。

 

一体何のためにこんな無駄なエピソードを書かねばならなかったのか。。。他にも本筋と関係ない無駄話はいっぱいあるが、これは極めつけ。ついでに言うと鳥居と祈りの城に吊るしてあった死体二体が誰だったか、と言う説明には開いた口が塞がらない。

 

  萩尾望都先生が真面目にこの架空の国の場所を検討しておられるのがお気の毒でしょうがない。先生、陸さんですからそんなに真面目に考えちゃダメですよ。。。

 

  ということで、安定の恩田陸クオリティを期待する方以外にはお勧めできない作品。