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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

とっぴんぱらりの風太郎 / 万城目学

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

  マキメーこと万城目学の長編時代小説。いやあ畏れ入った。傑作だ。

 

  最初はマキメー流の、ヒョウタの物の怪(因心居士)に憑りつかれた忍び崩れの少年風太(プウタロウ)を主人公としたコミカルな忍者小説かと思わせておいて、最後は大坂夏の陣を舞台に、壮絶で感動的なクライマックスに登りつめていく。

 

  風太郎と犬猿の仲の、悪賢い女百市大阪城に詰める忍びで絶世の美女常世、南方出身の忍者黒弓、敵方(京都所司代方)の忍びの棟梁で凄腕の残菊、そして高台院(=ねね様)、謎の貴人ひさご、等々のキャラが立ち、虚実のバランスが実によく取れ、非常な階級社会の実相も丁寧に書かれており、読み始めたら最終章で涙するまでやめられない、まさしくページターナー

 

  マキメーの会心作、お勧めである。

 

 

『時は戦国、豊臣から徳川の時代への大転換期。 重なり合った不運の末に、あえなく伊賀の国を「クビ」になった忍びの者、風太郎。 しかたなく出た京でぼんくらな日々を送るなか、彼が出会ったのは一個の「ひょうたん」。 老獪に語りはじめる謎の「ひょうたん」に誘われるようにして、風太郎の人生は時代に翻弄されながらも転がり始める。 「ひさご様」こと豊臣秀頼。恐ろしさと美しさをたたえる高台院ねね。ねねからのミッションで邂逅することになる大芸術家・本阿弥光悦マカオから来た黒弓、大阪城に仕える美忍者・常世、幼なじみのくノ一・百、対立する忍び・蟬――。 やがて豊臣と徳川の「いくさの気配」は法螺貝の音とともに開戦へ。 (上)

徳川方として従軍する風太郎。冬の陣での真田丸との闘い、戦間期に芽生えた「守るべきもの」への思い――。 和議成立ののち、平穏な日々が戻ったのも束の間、血なまぐさい因縁が風太郎を追い立てることとなる。 最後の大決戦。燃え盛る大坂城目指し、だましだまされ、斬っては斬られ、忍びたちの命を懸けた死闘が始まる。崩れ落ちる天守閣、無情の別離、託された希望、圧巻のクライマックス。堂々の完結!(下)(AMAZON解説より)