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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

七人の使者 神を見た犬 他十三篇 / プッツァ―ティ 脇功訳

⭐️⭐️⭐️⭐️

  イタリア文学の名翻訳者脇功氏が亡くなられたそうである。享年82歳とお聞きする、謹んで哀悼の意を捧げたい。合掌。

  そんな氏の簡潔明瞭で時代を経ても古びない、そしてイタリア語を彷彿とさせる柔らかさも持ち合わせた名訳を楽しめるのが、イタリア幻想文学の巨匠プッツァ―ティのこの短編集。表題作で時間と距離の永遠性の中に迷い込んだ旅人の不思議に静かで達観した心理を描く「七人の使者」、神をコミカライズした最後のツイストが効いている「紙を見た犬」をはじめ、不条理文学の傑作「七階」、母への思慕の情が時間と距離の歪んだ世界で語られる「急行列車」、古きよきものが現代文明に駆逐される哀しみを象徴的に描く「竜退治」などが素晴らしい。


七人の使者・神を見た犬 他十三篇

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書評