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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

家守綺譚 / 梨木香歩

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  琵琶湖疎水に近い旧家を預かることになった綿貫征四郎なる駆け出し小説家の書く物語なのだが、サルスベリに懸想されるわ、掛け軸からこの家の息子で同級生で琵琶湖に沈んだはずの高堂がしょっちゅう出てきて平然と話をするわ、河童は出るわ人魚は出るわ、白木蓮の蕾が開いたら白竜の子が天に昇るわ、に騙されそうになって飼い犬のゴローに助けてもらうわ、竜田姫竹生島浅井姫に挨拶に来るわ、啓蟄の候に小鬼フキノトウを取りに来るわ、全く人を喰った話ばかりである。

  しかし四季折々の草花を題名にした二十八の物語はどれも味わい深く、そしてその文章の美しいこと美しい事。夏目漱石の「夢十夜」が好きな人にはたまらない。梨木香歩の才能全開である。