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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

Tightrope Walker / Rachael Yamagata

⭐️⭐️⭐️⭐️

 

 

 待望のレイチェル・ヤマガタの新譜。ミニアルバムの「Heavyweight」を別にすれば、前回の「Chesapeak」から4年振りとなる。前作と同じく、Pledgemusicという、大手レーベルから離れてファンの寄付でアルバムを作るという姿勢で発表されたが、公式サイトのMLによると好調な滑り出しをみせており、ファンにとっては朗報だ。

 

  プロデュースはデビュー作以来の長い付き合いであるジョン・アレイジアとRY本人の二人。なので、基本的な音楽性に特に変化はみられない。  タイトル曲の綱渡り師(「Tightrope Walker」)を題材にしたダークでヘビーなナンバーで幕を開け、終曲の「Money Fame Thunder」で再び「綱渡り師のように顔を上げ、下を向かずにスタートしよう」というポジティブ志向な歌詞で一曲目に回帰するという、アルバムであることを十分意識した構成。

 

 ただその間の曲構成がやや疑問。同じ傾向の曲を固め過ぎなのだ。1-3曲目は初期の代表曲「Sunday Afternoon」に通じるようなダークでヘビーなロック志向のナンバー、4,5曲目はデビュー作「Happenstance」に見られたようなキャッチーなメロディのポップな売れ線曲、そして6曲目から9曲目まで4曲連続でミニアルバム「Heavyweight」に似たスローバラード。

 この三つの個性が彼女の持ち味ではあり、どの曲もレイチェルにしか歌えない歌ばかりではあるが、こう固めてしまわないで適度にばらけさせた方が飽きずに聴けるのにな、とちょっと惜しい気がする。好きな曲をDLして聴く時代ではこういうことはあまり考えなくてもいいのかもしれないが。

 

 そんな中でも、ライブで盛り上がるだろうタイトル曲とアンサーソングの「Money Fame Thunder」、  もうおしまいよ、あなたと私は別の道を行きましょう、という破れた恋を歌っていながら不思議な明るさのある「Over」、  シングルカットするならこれかなというポップな佳曲「Let Me Be Your Girl」、  あなたが私を好きになってくれなかったら、私は壊れてばらばらの破片になってあなたの周りに散らばってしまう、という痛切な歌詞をじっくりと歌い上げる「Break Apart」、  黒羊(≒厄介者)が夜明け前に目を覚ますだろう、それを倒せるのはあなただけ、というちょっとシュールな歌詞をカントリーフォーク調のギター伴奏で歌う「Black Sheep」などが聴きどころかなと思う。

 

 Facebookで彼女の動向はフォローしているが、とにかく彼女の新譜を聴きことができてうれしい。ライブも予定されているが残念ながらまだ日本は含まれていない、久しぶりに彼女のライブを見たいものである。