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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

SF

あとは野となれ大和撫子 / 宮内悠介

☆☆☆ 久々の「宮内悠介を読もうシリーズ」です。調べてみたら前回の「カブールの園」のレビューからなんと9ヶ月経ってました。サボりすぎだな。 それはともかく、本人はライトなものも書こうとはしておられるんですが、全体にヘビーなものが多い。で、前回の…

クララとお日さま / カズオ・イシグロ、土屋政雄訳

☆☆☆ 先日レビューしたKlara and the Sunの邦訳です。訳者はいつもの通り土屋政雄氏。 第一印象:本が分厚い!、こんな長い話だったのか!! (終了頁はp433) Kindleで読んでいたので分かりませんでした。ストーリーは単純、場面転換もそれほど多くない。に…

Klara and the Sun / Kazuo Ishiguro

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ お久しぶりです。コロナコロナで読む気力も失せてしばらく読書から遠ざかっていました。それでもこれだけは読まなければと3月からぼちぼちと読み始め、GWでまとまった時間を費やすることができ、ようやく完読しました(リンクはハードカバーにして…

カブールの園 / 宮内祐介

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読むシリーズ、今回は2017年の「カブールの園」です。二編の中編小説が収められており、芥川賞候補になり、第30回三島由紀夫賞を受賞しています。 で、いきなりですが、心の琴線をガリガリこすられ、ひたすら圧倒され、KOされてしまし…

アメリカ最後の実験 / 宮内祐介

⭐︎⭐︎⭐︎ 久しぶりの宮内悠介を読もうシリーズ、今回は2016年の作品で山本周五郎賞候補になった作品「アメリカ最後の実験」です。若い頃にアメリカ在住歴があり、ゲーマーでもあり、元プログラマーでもあり、DTMミュージシャンでもあるという彼のキャリアを存…

四畳半タイムマシンブルース / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎ 森見登美彦待望の新刊「四畳半タイムマシンブルース」です。まずは長い前置きをば。 先日レビューしたエッセイ「太陽と乙女」にも書かれていましたが、森見登美彦氏はは2011年8月に連載を抱え過ぎて頭がパンクして連載をすべて中断、長期休養を余儀な…

エクソダス症候群 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介 を読もうシリーズ、今回は2015年の第三作にして初の長編書き下ろしとなる「エクソダス症候群」です。火星の精神病院を舞台に中世から現代までの精神医療史を緻密に考証しつつ描かれる壮大な物語でした。長編をものする実力を遺憾なく示した…

盤上の夜 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 「宮内悠介を読もう」シリーズの五冊目はデビュー作「盤上の夜」です。本来なら真っ先に読まねばならないところなのですが、本作のテーマであるボードゲーム類が全く不得意であることと、紹介文やレビューで「盤上の夜」の主役の設定が嫌だったことで…

ヨハネスブルグの天使たち / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読むシリーズ、今回は「ヨハネスブルグの天使たち」を選んでみました。2013年に発表された第二作となりますが、いやあ凄かったです、私がこれまで読んだ宮内作品中最高の出来でした。 伊藤計畫の「虐殺器官」「ハーモニー」を彷彿とさ…

超動く家にて / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読もう、三作目は前作に続きお笑い系作品「超動く家にて」です。宮内さん待望の初「あとがき」によりますと、 これまで未収録であった短編やショートショートのうち、ネタに偏った作を集めた 16編 が収められています。 最初にちょっと真面…

スペース金融道 / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ 宮内悠介を読もうシリーズ2本目は面白いのが読みたくて「スペース金融道」にしました。なにわ金融道スペース篇みたいなベタな作品かと思いきや、SFと経済小説を融合させて結構ドライでシニカルな笑いをかぶせた、かなりハイブロウな作品になっていま…

彼女がエスパーだったころ / 宮内悠介

⭐︎⭐︎⭐︎ ポスト伊藤計劃として注目され、今や日本を代表するSF作家となっておられる宮内悠介さん。以前「人工知能の見る夢は」というアンソロジー集でショートショートを読んだだけだったのですが、最近efさんが精力的にレビューされておられるので気になって…

EXHALATION / Ted Chiang

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 「The Story of Your Life(あなたの人生の物語)」でアメリカSF界を席巻したTed Chiang(テッド・チャン)待望の新刊「EXHALATION(息吹)」である。彼の作品はハイレベルのハードSFであり、訳なしで読むのは相当難しいと前作で感じたので、今回は邦…

山尾悠子作品集成 / 山尾悠子

⭐️⭐️⭐️⭐️ 「増補・夢の遠近法」に収録されていた「パラス・アテネ」の続編(破壊王シリーズ)を読みたくて、図書館から借りだしてきた。分厚い、重い! 山尾悠子作品集成 国書刊行会から2000年に発行されている。嬉しいことに栞に佐藤亜紀が「異邦の鳥」とい…

銀河英雄伝説大考察(マイウェイムック)

⭐️⭐️ 映画待ちでふらっと本屋に立ち寄って目に入ってしまった。話のネタに丁度よさそう、とパラパラめくっていたが、妙に胡散臭い。このムック、文責ライターが記載されていない。誰が書いたか分からないものには手をつけるべきではないかとも思ったが、カラ…

バナナ剝きには最適の日々 / 円城塔

⭐︎⭐︎ 円城塔の作品の中では比較的わかりやすい短編集だというので読んでみた。 。。。。。どこが?。。。。。 まあ、「Self-Reference ENGINE」は短編集といっても相互連関があるのでなかなか途中ではやめにくい。でも、この作品集はそれぞれが独立した作品…

屍者の帝国 / 伊藤計劃 X 円城塔

⭐️⭐️ 伊藤計劃の未完の遺作「屍者の帝国」を、円城塔が遺族の了解を得て、3年という年月を費やして完成させた壮大なスケールのSF作品。 とは言ってみたものの、パラレルワールドSFと呼べばいいのか、スチームパンクと呼べばいいのか、19世紀オールスター・…

Self-Reference ENGINE / 円城塔

⭐️⭐️ P, but I don't believe that P. で始まる円城塔の短編集。二部20編で構成され、プロローグとエピローグがつく。 第一部: Nearside う~ん。。。。。 下記のキャッチコピーはよくできている、としか言いようがない。 円城流「夢十夜」だと言われれば、…

The Indifference Engine / 伊藤計劃

⭐️⭐️⭐️ 盟友円城塔の「Self-Reference ENGINE」とよく似た題名の伊藤計劃の短編小説集。実際円城塔と合作した「解説」という実験的な(あまり面白くはないが)作品もある。 元々一つのまとまった短編集として書く(描く)意図があったわけではなく、彼の遺し…

ハーモニー / 伊藤計劃

⭐️⭐️⭐️⭐️ 伊藤計劃の第三作である「ハーモニー」。処女作の「虐殺器官」の後の世界を描きながらも、打って変わって穏やかな題名。巻末対談によると、「虐殺器官」という題名だけで母に本を捨てられてしまった、という少年のブログ記事があって申し訳なく思い…

虐殺器官 / 伊藤計劃

⭐️⭐️⭐️⭐️ 読んでおかねばと思いつつ、未読という作家が何人かいるのだが、伊藤計劃もその一人。この度やっとこの処女作を手に取った。 私は日本のSF小説は海外、特にアメリカのSFに比して停滞気味だと長く思ってきた。実際SFマガジン700の海外篇と国内篇を比…

銀河英雄伝説 全15巻BOX SET / 田中芳樹

⭐️⭐️⭐️⭐️ 銀河英雄伝説、通称「銀英伝」、SFファンのみならず、本好きアニメ好きの方なら知らぬ者はないだろう傑作大河スペースオペラ、田中芳樹の代表作である。 もともとは徳間書店から出ていたが、田中芳樹曰く「創元SF文庫を終の棲家と定めた」そうで、…

バルタザールの遍歴 / 佐藤亜紀

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 佐藤亜紀の処女小説にして第三回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。文章の完成度と欧州現代史の知識を縦横無尽に使いこなす技術は圧倒的。ただ、その完成度に比して着想をうまく活かしきれていない。 バルタザールの遍歴 佐藤亜紀 文藝春秋 660円 …

銀の三角 / 萩尾望都

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 萩尾望都SFの最高峰にして超難解かつ美しい傑作。 銀の三角 萩尾望都 白泉社 650円 Amazonで購入書評

天使 / 佐藤亜紀

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 気を許せば脳を燃やしてしまう火酒のような文章。知性と教養を強要する内容。思惟できない低能な者は読まなくていい、とでも言いたげな高慢なまでの読者への挑戦。大好物だ。ちなみにこれでもSF。 天使 佐藤亜紀 文芸春秋 620円 Amazonで購入書評

10月の少女たち / 萩尾望都

⭐️⭐️⭐️ 萩尾望都の1970年代の短編集。初期故にさすがに絵もストーリーも少女漫画してる。そんな中でも「精霊狩り」シリーズが魅力。解説はなんと吾妻ひでおしぇんせい! 10月の少女たち 萩尾望都 小学館 710円 Amazonで購入書評

エデン2185 / 竹宮恵子

⭐️⭐️⭐️ 竹宮恵子のコミカルSF「私を月まで連れてって」から派生した、壮大な宇宙船の年代記。 エデン2185 竹宮惠子 eBookJapan Plus 円 Amazonで購入書評

スター・レッド / 萩尾望都

⭐️⭐️⭐️⭐️ 出色のキャラクター、レッド・星(セイ)を主人公とした、壮大なSF漫画。萩尾望都先生の代表作の一つ。 スター・レッド 萩尾望都 小学館 840円 Amazonで購入書評

ちぐはぐな部品 / 星新一

⭐️⭐️⭐️⭐️ ショートショートの名手星新一の作品30編を収録。「殺し屋ですのよ」等からまだ短編集に収録していなかった作品を集めているので雑多な内容となっているのでこの題名にしたとあとがきで書いておられる。しかしクオリティは驚くほど一定していてさす…

失われた世界 / コナン・ドイル

⭐️⭐️⭐️⭐️ コナン・ドイルは推理小説だけでなく、SF文学の祖でもあった。ホームズに負けず劣らず濃いキャラの連中が繰り広げるジュラパ的冒険譚は今でも色褪せない面白さだ。良くも悪くも七つの海を支配していた大英帝国ならではの小説だが、構成に与えた影響…