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続 ゆうけいの月夜のラプソディ

海外文学

Tender Is the Night / F. Scott Fitzgerald

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ Already with thee! tender is the night, ------- But here there is no light, Save what from heaven is with the breezes blown Through verdurous glooms and winding mossy ways. (Ode to a Nightingale by John Keats) すでにして汝(なれ)…

EXHALATION / Ted Chiang

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 「The Story of Your Life(あなたの人生の物語)」でアメリカSF界を席巻したTed Chiang(テッド・チャン)待望の新刊「EXHALATION(息吹)」である。彼の作品はハイレベルのハードSFであり、訳なしで読むのは相当難しいと前作で感じたので、今回は邦…

失われた時を求めて 6 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 光文社古典新釈文庫版「失われた時を求めて」は2019年末現在六冊が刊行されており、現時点での最終巻となる。本巻には第三篇「ゲルマントのほうへ(I)」の後半と「同(II)」の前半が収められている。 三冊(予定)に分かれたちょうどつなぎとなる巻…

失われた時を求めて 5 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ フランス文学の傑作にして長大な「失われた時を求めて」も第三篇「ゲルマントのほうへ」に入る。第五巻はその「I」で、これまでもたびたび憧れの人として顔を見せていたゲルマント公爵夫人への恋心を主人公が募らせていく模様が語られる。 なにせマ…

失われた時を求めて 4 〜第二篇「花咲く乙女たちのかげに II」 / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルースト畢生の大作「失われた時を求めて」、艱難辛苦しながらも読み進めていき、気がつけば早や第四巻。「花咲く乙女たちのかげに」も第二部「 土地の名・土地」に移る。「土地の名・名」が「私」の空想でしかなかったのに対応し、つ…

失われた時を求めて 3 第二篇・花咲く乙女たちのかげに(1) / マルセル・プルースト

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ マルセル・プルースト畢生の大作「失われた時を求めて」も第三巻に入り、第二篇「花咲く乙女たちのかげに」が始まる。本巻には第一部「スワン夫人のまわりで」が収録されている。 まだ「花咲く乙女たち」は登場せず、第一部の「土地と名 ー名ー」の…

失われた時を求めて フランスコミック版 スワン家の方へ / プルースト、ステファヌ・ウエ、中条省平

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 「数多の挫折者」を出してきたことで有名なマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」、それも3000Pの超大作ながら初めの数十Pで大抵の人は脱落するという大変な「20世紀文学の金字塔」。 前回レビューした「第一篇 スワン家の方へ I 第一部 コ…

失われた時を求めて 1 〜第一篇 「スワン家の方へ I 」 〜 (光文社古典新訳文庫) / プルースト、高遠弘美翻訳

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 読書好きなら誰もがその名前は知っている「A la recherche du temps perdu 失われた時を求めて」、フランスの作家マルセル・プルーストが1922年に亡くなるまでの約15年間をこの一作のためだけに費やし、原稿3000枚以上、日本の400字詰め原稿用紙10,…

小鳥たち / 山尾悠子、中山多理

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 山尾悠子待望の新刊である。今回は人形作家の中川多理さんとのコラボレーションで、作品数は掌編三編と少ないが、中川さんの「小鳥たち」や「老大公妃」の人形の写真が多数挿入され、「怖いけれど美しい」という共通する個性が共鳴し合い、とても素…

猫のまぼろし、猫のまどわし / 東雅夫編

⭐️⭐️⭐️ 東京創元社文庫創刊60周年祝企画のリストに「猫のまぼろし、猫のまどわし」という面白そうな本があったのでリンク先を覗いてみた。単独作品ではなく、アンソロジストの東雅夫氏の手になる、猫にまつわる東西の怪奇譚を集めたアンソロジー集だった。…

エミリ・ディキンスン アメジストの記憶 / 大西直樹

⭐️⭐️⭐️⭐️ 先日レビューしたアンソニー・ドーアの短編集「Memory Wall」、その中でもとりわけ秀逸なドーア流ジュブナイル小説が「River Nemunas」。カンサスの少女Allieが両親を事故で亡くし、リトアニアの祖父の元で暮らす物語であるが、リトアニアに旅立つ…

Memory Wall / Anthony Doerr

⭐️⭐️⭐️⭐️ 2002年に短編集「The Shell Collector」でデビューし、最新作でピュリッツァー賞を受賞したAnthony Doerrであるが、2018年末までの著作は下記四作品と寡作である(エッセイを除く)。 長編: About Grace(2004)(未邦訳) All The Light We Cannno…

すべての見えない光 / アンソニー・ドーア、藤井光訳

⭐️⭐️⭐️ このブログも300記事目。そこで、このブログで最初に紹介したアンソニー・ドーアの「All The Light We Cannnot See」の邦訳をレビューしてみよう。 So really, children, methematically, all of light is invisible. 数学的に言えば、光はすべて目に…

マイブック 2018年の記録

「ブクレコ」や「本が好き!」でやっていた年末恒例行事、その年の読書総括である。今年はこちらですることにした。 2018/12/20現在、公開レビューが111本、下書き中が9本ある。下書きからはおそらく選ぶことはないと思うので、この時点で思いつくままに選…

Hyde / Daniel Levine

⭐︎⭐︎⭐︎ スティーヴンソンの名作「The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr.Hyde」をHyde氏側から描いた小説。原作が画期的な名作だったのでそこそこの作品にはなっているだろうとは思ってはいたが、かなりよく考え抜かれた面白い小説になっていた。 作者はDan…

The Strange Case of Dr.Jekyll and Mr.Hyde / Robert Louis Stevenson

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 「宝島」のスティーブンソンが書いた、もう一つの古典的名作。「ジキルとハイド」の二重人格で有名だが、原作は自分の勝手な想像とあまりにも違っていた。二重人格を描いた恐怖小説と言うよりも、人間の内面にある善悪両面を抉り出した傑作ミステ…

中世騎士物語 / ブルフィンチ、野上弥生子訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ アーサー王伝説を中心とした中世騎士物語の成立とその概要を理解するのに適した良書。「アーサー王の死」だけでなく「マビノジョン」も収録されているのが嬉しい。翻訳はなんと故野上弥生子女史、さすがの文章だ。 中世騎士物語 ブルフィンチ 岩波…

The Crossing / Cormac McCarthy

⭐️⭐️⭐️⭐️ コーマック・マッカーシーの代表作「国境三部作」の第二部。前作と別の少年を主人公に、更に陰鬱な受難の旅が描かれる。文章も内容も極端に難解で濃密、安易な読解を作者が拒否しているかのようだ。 The Crossing: Book 2 of The Border Trilogy Co…

イー・イー・イー / タオ・リン

⭐️⭐️ ポストモダンと言えなくもないが、ネット弁慶の戯言に過ぎないという感じもする。台湾系アメリカ人タオ・リンがひがみ根性丸出しで描くゼロ年代アメリカ。 イー・イー・イー タオ・リン 河出書房新社 1512円 Amazonで購入書評

サロメ / オスカー・ワイルド

⭐️⭐️⭐️⭐️ 以前原田マハのサロメを読んで、押さえておかねばと思っていた。原点となるエピソードは最初にあるが、それを狂恋の戯曲に変えたワイルドはやはり天才、そして邦訳はやはりこの人、福田恆存。 サロメ ワイルド 岩波書店 378円 Amazonで購入書評

トリスタン・イズー物語 / ベディエ編、佐藤輝夫訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ 聞きなれない題名かもしれないが楽聖ワーグナーの歌劇「トリスタンとイゾルデ」の原典にもなった中世有数の悲恋物語である。このベディエ編はベルールの三千行詩を骨子とした恋愛に重きを置いた編集となっている。さすが岩波文庫版、佐藤輝夫氏の訳…

All The Pretty Horses / Cormac McCarthy

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ Cormac McCarthy(コーマック・マッカーシー)の代表作「Border Trilogy:国境三部作」の第一部、邦訳名「すべての美しい馬」。主人公たちの波乱万丈の行動と受難を描く三章と、それを「Fate」と「Responsibility」の問題として洞察する最終章の…

神を見た犬 / プッツァーティ、関口英子訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ プッツアーティの短編集で、岩波文庫版の脇功氏訳と、この光文社関口英子さん訳の翻訳比べをしてみた。詳細は下記書表参照してください。脇氏未収録の中にもたくさん面白いものがあったが、海洋版「タタール人の砂漠」というべき、「戦艦<<死>>」は…

七人の使者 神を見た犬 他十三篇 / プッツァ―ティ 脇功訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ イタリア文学の名翻訳者脇功氏が亡くなられたそうである。享年82歳とお聞きする、謹んで哀悼の意を捧げたい。合掌。 そんな氏の簡潔明瞭で時代を経ても古びない、そしてイタリア語を彷彿とさせる柔らかさも持ち合わせた名訳を楽しめるのが、イタリ…

13ヵ月と13週と13日と満月の夜 / アレックス・シアラー、金原瑞人訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ 児童文学作家アレックス・シアラーの原作を、児童文学翻訳に新風を吹き込んだ金原瑞人氏が訳した児童文学の傑作。少女と魔女の対決ファンタジーで「老いる」ということの辛さを子供に伝えようとした物語。金原瑞人氏のスピード感あふれる訳も素敵、…

祝・Kazuo Ishiguroノーベル賞受賞!

嬉しい、本当に嬉しい!ほとんどの作品を原書・邦訳で読んできたファンとして感無量だ! mainichi.jp

しあわせの理由 / グレッグ・イーガン、山岸真編・訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ グレッグ・イーガンの日本オリジナル短編集「祈りの海」に続く短編集。二冊目でも全くクオリティの落ちないイーガンの凄さ!SFとしては易しく哲学的に深い作品が多いので、SFファンでなくても十分楽しめる。象徴主義の画家クノップフの「愛撫」を題…

ディアスポラ / グレッグ・イーガン

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ ハードSFの旗手グレッグ・イーガンの代表作の一つ、文学としてのSFを終わらせるような「史上最も難解なSF」(1997年当時)。宇宙における人類の存在意義や宇宙自体の意味を問うた小説は数あれど、ここまでの理論的高みに達した作品はまずないだろう…

4321 / Paul Auster

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ ポール・オースターの新作にて70歳間近とは思えない渾身の大作、等身大の主人公の有り得た四つの人生をアメリカ現代史を背景に並行して描く。最後には恒例の大どんでん返し、相変わらず喰えない人だった。

青い脂 / ウラジーミル・ソローキン

⭐️⭐️ ロシアのポストモダン作家ソローキンの1999年発表のエログロ近未来&パラレルワールド的ディスユートピアSF小説。所謂良い子は読んではいけません的な。