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備忘録、採点表

書籍

アノニム / 原田マハ

⭐︎⭐︎ 原田マハ版ミッション・インポッシブル、アメリカ現代アートだからハリウッド的ポップさでいいのかもしれないが、ジャクソン・ポロックへの入れ込みように比べれば軽い軽い

すばらしい新世界 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 風力発電機をチベットの秘境に設置に行く企業人と現地の人や自然や宗教との触れ合いが清々しさを感じさせるとともに、オルダス・ハクスリーの同名ディスユートピア小説に挑戦するかのように、20世紀末の彼の持てる全ての世界観を平易な物語の中に…

黒書院の六兵衛(上)(下)

⭐︎⭐︎ 浅田次郎の幕末ものという事で期待して読んだが、とんでもない期待外れ。上巻退屈、下巻で種明かしなしに唖然。何だこりゃ、といいたい。

タマリンドの木 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹が初めて東南アジアを主舞台に据えた、これまた初めての長編恋愛小説。誠実過ぎるほどの大人同士の恋は、東南アジアの複雑な政治情勢との対峙を迫られる。池澤夏樹の暖かい視線と優れた自然描写が光る作品。

天子蒙塵 第二巻 / 浅田次郎

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 浅田次郎の「龍玉」シリーズ五作目も第二巻。いよいよ満州立国を柱に物語は大きく動き始め、舞台も満州・北京・東京と多彩に展開され、「マンチュリアン・リポート」の主要人物も顔を見せた。これでなくっちゃ、と思わせてくれる浅田節ついに復活!

村上春樹は、むずかしい / 加藤典洋

⭐︎⭐︎⭐︎ 硬軟双方持ち合わせる文学評論家加藤典洋が、村上春樹のデビューから2015年執筆時点までの内的変化と小説の変容について分析している。リアルタイムで知っているものからすると突っ込みどころは結構あるが、自分なりの春樹観を持って読む限り良書では…

天子蒙塵 第一巻 / 浅田次郎

⭐︎⭐︎⭐︎ 浅田次郎久々の「龍玉」シリーズ、第五作目。まずは「蒼穹の昴」「中原の虹」の懐かしの主要メンバー顔見世で、ラストエンペラー溥儀と側室の世紀の離婚劇が描かれる。

マリコ/マリキータ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹の五編からなる短編集。表題作はグアム島が舞台で個人的な思い出とリンクして楽しかったが、真の傑作は最後の「帰ってきた男」。短編ハードSFとしてかなりいい線いってると思う。

バビロンに行きて歌え / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹シリーズ、ようやく日本を舞台としたストーリーのしっかりした作品が登場。アラブ人青年兵士が逃亡者として現在のバビロン東京に放り出される。日本語も知らず、パスポートもなく彼は生き延びることができるのか?オムニバス形式で描く大…

真昼のプリニウス / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ つづいてまたまた池澤夏樹シリーズ。敢えて物語性を排除し理系脳と詩人脳の間での言語の揺らぎ実験をしたような作品。火山学者がプリニウスの向こうを張って、易者の預言に反発して「何かが起こる」その時に浅間山に登るが。。。 「プリニウスさん、…

ヤー・チャイカ / 池澤夏樹

🌟🌟🌟 中公文庫版の「スティル・ライフ」に同時収録されている芥川賞受賞後第一作、ファンタジー性と冷戦当時の世界のある断面を表現した二面性が興味深い小品。そして娘のカンナと庭の草原で飼う草食恐竜「ディプロドクス」の最後の別れが切ない。ちなみに「ヤー…

スティル・ライフ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎ 池澤夏樹の芥川賞受賞作だが、彼のキャリアからすると、らしくない作品。詩人的表現に見るべきものがある程度。

猛スピードで母は / 長嶋有

⭐︎⭐︎⭐︎ 長嶋有の初期作品で映画化された「サイドカーに犬」、芥川賞を受賞した「猛スピードで母は」の二篇が収録されている。前者は父の愛人が、後者は母が、ちょっと変わっていて、それを子供視点で描いている。嫌味が無く読んでいて爽快感があり、テンポが…

Voices in the Night / Steven Millhauser

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 短編の名手スティーブン・ミルハウザーの16の短編集。出来不出来はあるものの、「Phantoms」、「Mermaid Fever」、「A Report on Our Recent Troubles」などはミルハウザーらしさが出ていて素晴らしい。そして最後の表題作でのユダヤ人としての自身…

ビアンカ・オーバースタディ / 筒井康隆

⭐︎⭐︎ 筒井康隆先生がラノベに挑戦したら、自ら「時をかける少女」をパロディにしちゃってしかも超お下劣な小説になってしまった。 でも、ハイブリッドカエル対巨大カマキリの戦闘は捧腹絶倒!

ミーナの行進 / 小川洋子

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 阪神大震災で損なわれる以前、1972年を芦屋の伯父の大邸宅で過ごす少女と従妹ミーナとコビトカバのポチ子の物語。懐かしさと切なさと喪失と、そこからの成長の物語。岡山出身で芦屋に暮らされているだけあり、小川洋子の作品の中でも出色の出来。

君のそばで会おう / 銀色夏生

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 銀色夏生さんの、いつもわたしを励ましてくれる詩集。君のそばで、はBy your side=君の味方、という意思が込められていると思う。

南の島のティオ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 南洋の、広い海の中の、静かな明るい島。きれいな海と椰子の木とのんきな人たち。それに親切な男の子ティオ。あなたもきっと行ってみたくなる、精霊の宿る環礁の島の不思議な物語。

私だったらこう考える / 銀色夏生

⭐︎⭐︎⭐︎ 銀色夏生さんがどんな人か知りたくて読んでみた。常識をわきまえて生きている方でよかった。人に自分の意見や頼みを一方的に押し付ける人、鈍感で頭の悪い人は嫌い、というのは全く同感。言葉はそれだけ取り出して見ても無駄だ、というのもわかる。

池澤夏樹 詩集成

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹の原点である詩集。「塩の道」には本人曰くの「若気の至りの稚拙さ」はあるが、父母のマチネ・ポエティクの影響、のちの彼の小説群の萌芽が見られて興味深い。

マシアス・ギリの失脚 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 池澤夏樹の作品の中でも最良の一冊だろう。自然、政治、歴史観、霊性、性、超常現象を全て等価に語り尽くす。マシアスを失脚させるのが、平易な言葉であったことが重い。

ドミノ / 恩田陸

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 恩田陸流スラップスティック喜劇。こんなライトで楽しい小説も書けるのかと感心。8000ccのバイクとホラー監督のペットが秀逸。

双頭の船 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 東日本大震災の鎮魂、そして再生の願いを込めて池澤夏樹が書いた幻想的小説。非現実と現実が混在していて、やや軽い感は否めない。

カデナ / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ 1968年夏のアメリカ統治下の沖縄で、北ベトナムのためにスパイ活動を行う四人の物語。素人の個人が危なっかしく行うところに味がある。スノブな前書きと長いエピローグは要らない、と思う。 https://www.amazon.co.jp/カデナ-新潮文庫-池澤-夏樹/dp/4…

花を運ぶ妹 / 池澤夏樹

⭐︎⭐︎⭐︎ バリ島を舞台とした兄と妹のモノローグで構成された池澤夏樹の小説。ヘロインの恐ろしさがリアル。バリ島もよく描けている。ラストがご都合主義的にハッピー過ぎる。 https://www.amazon.co.jp/花を運ぶ妹-文春文庫-池澤-夏樹/dp/4167561069

水鏡推理6 クロノスタシス / 松岡圭祐

🌟🌟🌟 安定のラノベ職人松岡圭祐の水鏡推理シリーズ早第6巻。今回は電通社員女性の死亡で注目されている過労死がテーマ。あざとい感じもするが、もうまとめ上げるスキルと取材力には脱帽。前書きをきっちりと読むべし。 水鏡推理6 クロノスタシス (講談社文庫) h…

騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編 / 村上春樹

⭐︎ 村上春樹の新作第2部。前巻からのナチス問題に加えて南京大虐殺、エルサレムの壁とどんどん大風呂敷を広げといてほとんど何の回収もされず、話はどんどんつまらなくなって行く。もしこれで終わりなら、失敗作としか言いようがない。

騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編 / 村上春樹

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ エッセイで披露した健全なる創作活動で書かれたであろう村上春樹の新作、新たな文体に挑戦はしているが、相変わらずの性描写の氾濫には辟易。オートグラフとマランツ#7&9(多分)で奏でられるショルティ&VPOの薔薇の騎士は聴いてみたい。

聖なる怠け者の冒険 / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎ シリアスな幻想小説だった「夜行」とは対極にある、いつもの森見登美彦節が楽しめる京都シリーズ。「有頂天家族」「宵山万華鏡」と通底するとの作者弁だが「夜は短し歩けよ乙女」と表裏一体な感じがする。「僕は人間である前に怠け者なのです」の主人…

不時着する流星たち / 小川洋子

⭐︎⭐︎⭐︎ 小川洋子の新作。ヘンリー・ダーガー、パトリシア・ハイスミス、グレン・グールド、エリザベス・テイラー、牧野富太郎等、実在の人物や出来事を題材をとって小説世界を構築した短編10編が収められている。で、十話とも現実と非現実の狭間を行きつ戻り…

新釈走れメロス / 森見登美彦

⭐︎⭐︎⭐︎ 二回目の直木賞候補も惜しくも落選したモリミンこと森見登美彦の、名作パロディ集。安定の京都大学腐れ大学生シリーズだが、さすが名作を下敷きにしているだけあって暴走気味の走れメロスを除いては以外にシリアスだったりする。私の大好きな漱石の夢…

笹まくら / 丸谷才一

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 丸谷才一がジェイムズ・ジョイス的手法を駆使し、徴兵忌避者の戦中戦後を描いた傑作反戦小説。戦中の行きずりの女との優れた恋愛小説ともなっている。

樹影譚 / 丸谷才一

⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で論じられていた六編の短編の中で最も興味をそそられた一編。語り手が丸谷から小説内作家へ変わっていきその作家による小説内小説に移り変わって最後にその作家が異界に落とし込まれる、その手腕は見事…

夜行 / 森見登美彦

⭐️⭐️⭐️⭐️ 惜しくも直木賞受賞を逃した森見登美彦の作品。今までのコミカルな面の裏に隠されていた彼の闇の部分を見事にいたダーク・ファンタジー。でも語り口はやはり森見独特のものがある。

若い読者のための短編小説案内 / 村上春樹

⭐️⭐️⭐️ 今年二月末に待望の新作「騎士団長殺し」が発売される村上春樹。彼の作品中の読み残しの一つ。第三の新人六人を作家の視点から遠慮なく読み解いていく、読者としての村上春樹、さすがの一言。

蜜蜂と遠雷 / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️⭐️ 今頃?と驚いた直木賞受賞作。さすがの表現力には舌を巻くが、コアなクラシック音楽ファンか、のだめカンタービレやピアノの森が好きな人向け。

About Grace: A Novel / Anthony Doerr

⭐️⭐️⭐️⭐️ 「シェル・コレクター」「すべての見えない光」のアンソニー・ドーアの処女長編。予知夢を見る男の波乱万丈の人生。舞台はアラスカからカリブ諸島、そして25年の歳月を経て再びアラスカへ。最終章が深い余韻を残す。が、英語で読むと長い。

海賊とよばれた男 / 百田尚樹

⭐️⭐️⭐️ 映画を観てのあと読み。稀代の経営者出光佐三の生涯を描く。百田流美化はあるにしても偉大な経営者であったことは間違いない。

いまさら翼といわれても / 米澤穂信

⭐️⭐️⭐️⭐️ 米澤穂信待望の古典部シリーズ新刊 短編集だがファンには嬉しい一冊 最後の二編は少しビターだ