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備忘録、採点表

日本文学

貴婦人Aの蘇生 / 小川洋子

⭐️⭐️⭐️ 小川洋子流「閉じた世界」が今回はロマノフ王朝を通じて現実界とつながっている。その扉の鍵は「蘇生」という言葉。 貴婦人Aの蘇生 小川洋子 朝日新聞社 525円 Amazonで購入書評

センセイの鞄

⭐️⭐️⭐️⭐️ 川上弘美初挑戦、まずは一番有名なこの作品から。ゆる~い感じが良い作品。江國香織とお互いを意識しているそうだが、この作品はどこか梨木香歩に近い感じがする。ゆるい感じで章を重ねてきて、最後にこの文章は見事。 「そんな夜には、センセイの…

がらくた

⭐️⭐️⭐️ 江國香織独特の恋愛小説。最初の恋愛小説「きらきらひかる」から16年の歳月が流れ、江國香織の文章は成熟し過ぎたきらいがある。主人公の言葉を借りれば、ある種の完璧=A kind of perfect = UNIQUE な小説。 息を吐くように恋情やセックスを文章にす…

オールド・テロリスト / 村上龍

⭐️⭐️⭐️⭐️ 村上龍の2015年の長編小説の待望の文庫化。80万人の中学生が不登校化した「希望の国のエクソダス」の続編的作品で、今回は70-90台の老人が日本を一旦リセットするためにテロリストとなる世界を描いている。東日本大震災の原発事故も暗い影を落とし…

夕方らせん / 銀色夏生

⭐️⭐️⭐️ 詩人銀色夏生さんの珍しい短編小説集。やっぱり詩人らしい文章が心地良い。 夕方らせん 銀色夏生 新潮社 円 Amazonで購入書評

ターゲット / 清水義範

⭐️⭐️ パスティーシュの名手清水義範のホラー集。怖いけどあまり面白くない。それにしても清水は猿蟹合戦が好きだな。 ターゲット 清水義範 新潮社 500円 Amazonで購入書評

ぬるい眠り / 江國香織

⭐️⭐️⭐️ 江國香織の短編集で、1989年から2003年までの作品があるので質量ともばらつきはあるが、表題作がやはりよい。その他には「きらきらひかる」の続編「ケイトウの赤、やなぎの緑」、「清水夫妻」、「とろとろ」あたりが読みどころ。 ぬるい眠り 江國香織…

ことり / 小川洋子

⭐️⭐️⭐️⭐️ 小川洋子らしい無名性の世界の中で描かれる小鳥の小父さんの一生。 ことり 小川洋子 朝日新聞出版 626円 Amazonで購入書評

象と耳鳴り / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️ 恩田陸のデビュー作「六番目の小夜子」の関根春(しゅん、男)の父、元名判事の関根多佳男を主人公とした短編ミステリ連作集。過去の名作ミステリへのオマージュともなっているが、私にそう言うものへの親和性がないのか、イマイチしっくりこなかった…

超・殺人事件 - 推理作家の苦悩 / 東野圭吾

⭐️⭐️⭐️ 東野圭吾のユーモア短編集。これに出てくる高機能読書マシン・ショヒョックスに『甘口』モードと『酷評』モードで書評を書いてもらおう。下記のリンク先書評サイト「本が好き」に書いてます。。 超・殺人事件―推理作家の苦悩 東野圭吾 新潮社 460円 A…

流しのしたの骨 / 江國香織

⭐️⭐️⭐️ 夜の散歩を趣味とする19歳の女性が淡々と綴る、仲の良い宮坂家六人のちょっと風変わりな日常。江國香織が「家」「家族」をテーマとして描いたいとおしい物語。題名は本当は怖い童話「カチカチ山」から。 流しのしたの骨 江國香織 新潮社 540円 Amazon…

ブランコのむこうで / 星新一

⭐️⭐️⭐️ 星新一さんらしい、やさしい目線と端正な文章で描かれるジュブナイル・ファンタジー ブランコのむこうで 星新一 新潮社 420円 Amazonで購入書評

きらきらひかる / 江國香織

⭐️⭐️⭐️ シャンパンを陽の光に透かして見るようなような透明感の中に、切なさの細かい泡が立ち上っていく、江國香織らしいラブ・ストーリー。 きらきらひかる 江國香織 新潮社 420円 Amazonで購入書評

こうばしい日々 / 江國香織

⭐️⭐️⭐️⭐️ 全く関係のない二つの中編小説が一冊の文庫本に収められ、見事に呼応しあっている。十代前半の男女を主人公に据えた語り口が上手く、初期の作品ながらもう江國香織の天性の才能が花開いている。

泣き虫弱虫諸葛孔明 第5部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 嗚呼、星落秋風五丈原。泣き虫弱虫変質者、そして最高にダンディイな諸葛亮孔明の講談、これにて机を叩くを、さて、終えなん!酒見賢一渾身の最終巻、五丈原での孔明の病死までを面白おかしくと真面目さを両立させて描き切った、その力量に脱帽。…

回転ドアは、順番に / 穂村弘、東直子

⭐️⭐️⭐️⭐️ NHKドラマ「この声をきみに」で麻生久美子と竹野内豊が朗読して話題の恋愛問答歌集。不思議なスリルと高揚感、そしてエロティシズム。う~んこれはいったい何?と、何度も読み返してしまう。 穂波(竹野内豊): 観覧車 昇るよ 君はストローをくわえ…

彼女がその名を知らない鳥たち

⭐️⭐️⭐️⭐️ 久し振りに映画を見て泣いた。沼田まほかるの原作も知っているのに、泣くような映画じゃないのに、最後には涙が知らないうちに出ていた。阿部サダヲの演技がほぼ全てだ。改めて凄い俳優だと思った。蒼井優も体当たりの演技でよく頑張った、と思う。…

米澤穂信と古典部 / 米澤穂信

⭐️⭐️⭐️ 米澤穂信の新刊。といっても「氷菓」実写化にあわせた角川書店のメディアミックス戦略の一環。小説はおまけで、古典部シリーズの舞台裏公開的ムック本。古典部メンバーの本棚はそれぞれの個性を反映させて面白いし、古典部ファンには垂涎、読み応えあ…

サロメ / 原田マハ

⭐️⭐️ 原田マハのアート小説シリーズ。オスカー・ワイルドの「サロメ」の挿絵画家オーブリー・ビアズリーと、その姉メイベルが今回の主人公。今回も現代パートと過去パートがあるが、現代パートはほとんど機能していない。文章も相変わらずの修辞の仰々しさが…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第3部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一流三国志講談第三部。いよいよ赤壁の戦いへと突入。今回の表主役は呉のスーパースター美周郎こと周瑜公瑾。呉の期待を一身に背負って赤壁の戦いに勝利し、なお戦闘意欲は衰えず劉備孔明を亡き者にしようとするも病に斃れる。裏主役は敗残の劉…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第1部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一の「陋巷に在り」に次ぐ長編。前作の雰囲気と異なり、変人酒見の面を強く押し出した、はっちゃけたシニカルで笑える三国志となっている。まずは三顧の礼、マーベラス・クレバー・ワン、スリーピング・ドラゴン、ミステリアス・サノバビッチ…

ピュタゴラスの旅 / 酒見賢一

⭐️⭐️ 中島敦賞受賞作の初期短編集。作者自身は「バランスを取り過ぎている」と思っておられるが、「そうか~?」という雑多な短編の寄せ集めで出来不出来はあり。話としては「虐待者たち」が一番面白く、歴史ものとしては表題作より「エピクテトス」の方が充…

語り手の事情 / 酒見賢一

⭐️⭐️ これも酒見賢一の未読の落穂ひろい。英国ヴィクトリア朝のある屋敷を舞台とした妄想と倒錯の性の饗宴。作者が父親にかんかんに怒られたという異色作だが、あとがきがさらに凄い。酒見賢一に性的タブーはない!

童貞 / 酒見賢一

⭐️⭐️ 酒見賢一の中国史ものではあるのだが、異色の作品。太古の黄河の氾濫に悩まされるある邑は完全な母系社会で女尊男卑の世界。いきなり治水を成し得なかった男の酷たらしい処刑で始まり、それを見ていたある少年が成長とともにこの邑のしきたりを拒否し、…

木漏れ日に泳ぐ魚 / 恩田陸

⭐️⭐️ 大風呂敷広げっぱなし、エンディング投げっぱなしジャーマンの恩田陸にしては珍しく、あっさりと破綻もなく語り終える物語。明日同居を解消する男女が夜を徹して語りあう二人の複雑な家庭事情と互いの思い、そしてそれにまつわるある変死事件。交互に綴…

美しい星 / 三島由紀夫

⭐️⭐️⭐️⭐️ 三島由紀夫が冷戦時代に書いた異色SF。UFOを見た家族が自分たちが宇宙人だと信じ込み人類啓蒙救済を目指すが、一方同じくUFOを見た仙台の助教授たち三人も宇宙人であることを悟るが逆に人類は滅亡すべきだと考える。両者を仲介する右翼半日教組政治…

アミダサマ / 沼田まほかる

⭐️⭐️⭐️⭐️ 今映画界はちょっとしたまほかるブームだが、沼田まほかるの長編小説は五作しかない。この作品はその中でも特異な、彼女の僧侶としての宗教観を前面に押し出した作品。悲痛な最終章とそれを救済するエピローグは、まほかる渾身の文章だ。

ホワイトラビット / 伊坂幸太郎

⭐️⭐️⭐️⭐️ 伊坂幸太郎最新作は、クロスカッティング手法を用いた映画的な展開とトリックが面白い。高台の家での人質立てこもり事件に「オリオン座」と「レ・ミゼラブル」を絡める語り口はやっぱ伊坂流。あの男も健在だ!

美しの神の伝え / 萩尾望都

⭐️⭐️⭐️ これも「ピアリス」と同じく、萩尾望都SF原画展を契機に発売された新刊。全くの新作ではなく以前からある「音楽の在りて」という短編小説集13作品に「クリシュナの季節」「左手のパズル」とショート漫画「いたずら らくがき」の三作を追加したもの。…

刺繍する少女 / 小川洋子

⭐️⭐️ 小川洋子1996年の短編集。十作収められているが、はっきり言って小川洋子としてはそれほどレベルは高くない。ただ、何かを喪失していく人々の、彼女らしいディテイルの書き込みはやはり奇妙で残酷で不条理で美しい。「森の奥で燃えるもの」が一番良かっ…