Count No Count

備忘録、採点表

泣き虫弱虫諸葛孔明 第5部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 嗚呼、星落秋風五丈原。泣き虫弱虫変質者、そして最高にダンディイな諸葛亮孔明の講談、これにて机を叩くを、さて、終えなん!酒見賢一渾身の最終巻、五丈原での孔明の病死までを面白おかしくと真面目さを両立させて描き切った、その力量に脱帽。…

回転ドアは、順番に / 穂村弘、東直子

⭐️⭐️⭐️⭐️ NHKドラマ「この声をきみに」で麻生久美子と竹野内豊が朗読して話題の恋愛問答歌集。不思議なスリルと高揚感、そしてエロティシズム。う~んこれはいったい何?と、何度も読み返してしまう。 穂波(竹野内豊): 観覧車 昇るよ 君はストローをくわえ…

いつか記憶からこぼれおちるとしても / 江國香織

⭐️⭐️⭐️ 都内の私立女子高生たちの日常に潜むちょっとした心の闇を描いた短編集。「指」「飴玉」のインパクトが強いが、「緑の猫」で親友が精神を病んで二度入院した後、コータロー(高村光太郎と智恵子から)というあだ名をつけられるのが残酷で胸を打つ。

13ヵ月と13週と13日と満月の夜 / アレックス・シアラー、金原瑞人訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ 児童文学作家アレックス・シアラーの原作を、児童文学翻訳に新風を吹き込んだ金原瑞人氏が訳した児童文学の傑作。少女と魔女の対決ファンタジーで「老いる」ということの辛さを子供に伝えようとした物語。金原瑞人氏のスピード感あふれる訳も素敵、…

ブレードランナー2049

⭐️⭐️⭐️ SF映画の名作ブレードランナーの続編がついに公開された。ドゥニ・ヴィルヌーブ監督、ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、それぞれに良かったし、映像も見事だったが、ストーリーの単純さの割に長過ぎた気がする。また、映画.comなどで予習が…

彼女がその名を知らない鳥たち

⭐️⭐️⭐️⭐️ 久し振りに映画を見て泣いた。沼田まほかるの原作も知っているのに、泣くような映画じゃないのに、最後には涙が知らないうちに出ていた。阿部サダヲの演技がほぼ全てだ。改めて凄い俳優だと思った。蒼井優も体当たりの演技でよく頑張った、と思う。…

米澤穂信と古典部 / 米澤穂信

⭐️⭐️⭐️ 米澤穂信の新刊。といっても「氷菓」実写化にあわせた角川書店のメディアミックス戦略の一環。小説はおまけで、古典部シリーズの舞台裏公開的ムック本。古典部メンバーの本棚はそれぞれの個性を反映させて面白いし、古典部ファンには垂涎、読み応えあ…

サロメ / 原田マハ

⭐️⭐️ 原田マハのアート小説シリーズ。オスカー・ワイルドの「サロメ」の挿絵画家オーブリー・ビアズリーと、その姉メイベルが今回の主人公。今回も現代パートと過去パートがあるが、現代パートはほとんど機能していない。文章も相変わらずの修辞の仰々しさが…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第3部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一流三国志講談第三部。いよいよ赤壁の戦いへと突入。今回の表主役は呉のスーパースター美周郎こと周瑜公瑾。呉の期待を一身に背負って赤壁の戦いに勝利し、なお戦闘意欲は衰えず劉備孔明を亡き者にしようとするも病に斃れる。裏主役は敗残の劉…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第2部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一流三国志の第二巻。「あることないことないこと」の三国志の中でもとりわけ怪しい「長坂坡の戦い」がメインの第二巻。これを語るのはいかな酒見と言えど難しい。そこで三国志の「裏設定」である「説三方」を冒頭で紹介した上で、嘘八百と分か…

泣き虫弱虫諸葛孔明 第1部 / 酒見賢一

⭐️⭐️⭐️⭐️ 酒見賢一の「陋巷に在り」に次ぐ長編。前作の雰囲気と異なり、変人酒見の面を強く押し出した、はっちゃけたシニカルで笑える三国志となっている。まずは三顧の礼、マーベラス・クレバー・ワン、スリーピング・ドラゴン、ミステリアス・サノバビッチ…

ピュタゴラスの旅 / 酒見賢一

⭐️⭐️ 中島敦賞受賞作の初期短編集。作者自身は「バランスを取り過ぎている」と思っておられるが、「そうか~?」という雑多な短編の寄せ集めで出来不出来はあり。話としては「虐待者たち」が一番面白く、歴史ものとしては表題作より「エピクテトス」の方が充…

語り手の事情 / 酒見賢一

⭐️⭐️ これも酒見賢一の未読の落穂ひろい。英国ヴィクトリア朝のある屋敷を舞台とした妄想と倒錯の性の饗宴。作者が父親にかんかんに怒られたという異色作だが、あとがきがさらに凄い。酒見賢一に性的タブーはない!

童貞 / 酒見賢一

⭐️⭐️ 酒見賢一の中国史ものではあるのだが、異色の作品。太古の黄河の氾濫に悩まされるある邑は完全な母系社会で女尊男卑の世界。いきなり治水を成し得なかった男の酷たらしい処刑で始まり、それを見ていたある少年が成長とともにこの邑のしきたりを拒否し、…

木漏れ日に泳ぐ魚 / 恩田陸

⭐️⭐️ 大風呂敷広げっぱなし、エンディング投げっぱなしジャーマンの恩田陸にしては珍しく、あっさりと破綻もなく語り終える物語。明日同居を解消する男女が夜を徹して語りあう二人の複雑な家庭事情と互いの思い、そしてそれにまつわるある変死事件。交互に綴…

美しい星 / 三島由紀夫

⭐️⭐️⭐️⭐️ 三島由紀夫が冷戦時代に書いた異色SF。UFOを見た家族が自分たちが宇宙人だと信じ込み人類啓蒙救済を目指すが、一方同じくUFOを見た仙台の助教授たち三人も宇宙人であることを悟るが逆に人類は滅亡すべきだと考える。両者を仲介する右翼半日教組政治…

祝・Kazuo Ishiguroノーベル賞受賞!

嬉しい、本当に嬉しい!ほとんどの作品を原書・邦訳で読んできたファンとして感無量だ! mainichi.jp

アミダサマ / 沼田まほかる

⭐️⭐️⭐️⭐️ 今映画界はちょっとしたまほかるブームだが、沼田まほかるの長編小説は五作しかない。この作品はその中でも特異な、彼女の僧侶としての宗教観を前面に押し出した作品。悲痛な最終章とそれを救済するエピローグは、まほかる渾身の文章だ。

ホワイトラビット / 伊坂幸太郎

⭐️⭐️⭐️⭐️ 伊坂幸太郎最新作は、クロスカッティング手法を用いた映画的な展開とトリックが面白い。高台の家での人質立てこもり事件に「オリオン座」と「レ・ミゼラブル」を絡める語り口はやっぱ伊坂流。あの男も健在だ!

しあわせの理由 / グレッグ・イーガン、山岸真編・訳

⭐️⭐️⭐️⭐️ グレッグ・イーガンの日本オリジナル短編集「祈りの海」に続く短編集。二冊目でも全くクオリティの落ちないイーガンの凄さ!SFとしては易しく哲学的に深い作品が多いので、SFファンでなくても十分楽しめる。象徴主義の画家クノップフの「愛撫」を題…

ロミオとロミオは永遠に / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️ 恩田陸が早川書房のJシリーズに書いた近未来ディストピアSF。そのハチャメチャ振りは、本人が「書いた時はハッピーエンドだと思ったけど文庫版出版の際に読み返してみて暗いので書いた自分がびっくりしている!」というくらいぶっ飛んでいる。なお、…

原田知世35周年記念アニバーサリー・ツアー"音楽と私" in 山形 2017

⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ やっぱり原田知世様は最高。バックもこれだけの人たちが来てくれるのはすごい。「ときめきのアクシデント」は予想以上に良かった。「くちなしの丘」は最初アコギで弾き語り、上手くなったね!会場もギネス認定の完全木造世界最大ホールで響きが柔…

美しの神の伝え / 萩尾望都

⭐️⭐️⭐️ これも「ピアリス」と同じく、萩尾望都SF原画展を契機に発売された新刊。全くの新作ではなく以前からある「音楽の在りて」という短編小説集13作品に「クリシュナの季節」「左手のパズル」とショート漫画「いたずら らくがき」の三作を追加したもの。…

刺繍する少女 / 小川洋子

⭐️⭐️ 小川洋子1996年の短編集。十作収められているが、はっきり言って小川洋子としてはそれほどレベルは高くない。ただ、何かを喪失していく人々の、彼女らしいディテイルの書き込みはやはり奇妙で残酷で不条理で美しい。「森の奥で燃えるもの」が一番良かっ…

私は幸せ / 柴田淳

⭐️⭐️⭐️ 柴田淳の新作、オリジナルとしては「バビルサの牙」以来3年ぶり、11枚目となる。シバジュンらしい金太郎飴状態は相変わらずだが、その分安心して聴ける。久しぶりの王子様シリーズ第4弾が入っているのもご愛敬。

ダンケルク

⭐️⭐️⭐️⭐️ クリストファー・ノーラン監督の新作。第二次大戦中の民間船まで動員したダンケルク脱出作戦をコンパクトに多視点のモンタージュ技法で描いた、見事な演出が光る佳作。映像も見事。ポール・ギャリコの「スノー・グース」でラヤダー老人が向かったダ…

魔王 / 伊坂幸太郎

⭐️⭐️⭐️⭐️ 大義なき衆議院解散総選挙が噂される今読んでみるのもいいかもしれない、非政治的人間伊坂の政治的作品。ファシストはまずは正論を吐く。国民は魔王がやってきたのに気づかない。

寡黙な死骸 みだらな弔い / 小川洋子

⭐️⭐️⭐️⭐️ 11の短編が絡まり合いもつれながら織りなす残酷で淫らで静かで美しい弔いの物語。之もまた紛れもない小川洋子の世界である。

氷山の南 / 池澤夏樹

⭐️⭐️⭐️⭐️ 2009-2010年に新聞連載された池澤夏樹の長編小説。南極の流氷をオーストラリアに曳航して灌漑水に利用とする壮大な計画、その船に密航したアイヌと和人のハーフの青年の成長譚、その船の多彩な国籍、宗教を持つ人々が活写され、前半は清々しい雰囲…

ぐるぐる問答:森見登美彦氏対談集 / 森見登美彦

⭐️⭐️⭐️ 先日森見登美彦氏と萩尾望都様の対談を聴く機会に恵まれたが、予想通り、その作品のハチャメチャさに反してとても真面目な方だった。だから対談もそれほど得意ではない感じだったが、なんと14名との対談と自身の今昔問答が収載されている。やはり親友…