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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

からくりからくさ / 梨木香歩

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 「りかさん」の続編にして、梨木香歩文学の一つの到達点ともいえる壮大な作品。蓉子の祖母が他界し、りかさんも喪に服する。蓉子は祖母の家で友人女性三人と暮らすことになる。その家の結界、四人の女性それぞれの結界と繋がり、そして植物、動物の営み、染色、機織等々、これは完全に女性の結界の物語である。最後に紅蓮の炎の中に凄まじい「竜女」が完成する。りかさんはお浄土送りを終えて蛹から孵化して旅立つのだろう。

りかさん / 梨木香歩

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    梨木香歩流の人形のお話し。りかさんはリカちゃん人形ではなく、日本古来からの「形代(かたしろ)」としての漆黒の髪の市松人形である。「アビゲイルの巻」も良かった。併録の「ミゲルの庭」は「からくりからくさ」と関係してくるのだが、男の私には今一つ。

ポーの一族 春の夢 / 萩尾望都

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  萩尾望都先生、40年ぶりの「ポーの一族」の新刊。昨年から月刊Flowersに連載された新エピソードが完結した。ご自身が述べられているように絵も顔も変わったが、とにもかくにも新しい物語が読めるのは嬉しい限りだ。

冬虫夏草 / 梨木香歩

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  梨木香歩の「家守綺譚」の続編。前作ほどの新鮮な驚きはないが、新米文士綿貫君の鈴鹿行を描く梨木さんの瑞々しく美しい文章にはやはり惹かれるものがある。ハードカバーの装丁が美しいのも魅力である。

 

シャーロック・ホームズ対伊藤博文 / 松岡圭祐

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  ラノベの職人松岡圭祐講談社文庫への単行本書下ろし。ホームズがモリアーティ教授と滝壺に落ちたころ、日本では大津事件が起こっていたという着眼点が面白い。一方伊藤博文が渡英していたころホームズは10歳くらいだったというところを利用したのもうまい。ただ、対決ではなく、両者協力してロシアの陰謀を暴いて解決していく物語である。

村田エフェンディ滞土録 / 梨木香歩

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梨木香歩の「家守綺譚」の兄弟作品。文士綿貫征四郎の友人村田エフェンディ(先生)が主人公、舞台は土耳古、英国人女性の下宿で起こる色々な騒動と下宿人たちとの交流。そして最後にやってくる痛切な哀しみに胸打たれる物語。

 

音楽と私 / 原田知世 (通常盤CD)

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  私の大好きな原田知世さんのベスト盤。選曲や知世さんの歌唱には文句なし。ただ、この頃はもう最近ずっとこの人だな。ボサノバ・ギタリストの伊藤ゴローさん。彼がやっぱり全面的にアレンジしてる。「時をかける少女」はちょっと大仰なアレンジで、「Music & Me」の時のゴローさんのギター一本での歌唱の方がずっと良かった。通常盤が3120円ってのも高すぎ。差別化の意味がない。

 

ディアスポラ / グレッグ・イーガン

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ハードSFの旗手グレッグ・イーガンの代表作の一つ、文学としてのSFを終わらせるような「史上最も難解なSF」(1997年当時)。宇宙における人類の存在意義や宇宙自体の意味を問うた小説は数あれど、ここまでの理論的高みに達した作品はまずないだろう。

春になったら苺を摘みに / 梨木香歩

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梨木香歩さんの下宿の女主人ウェスト夫人の思い出に心打たれるエッセイ集。まるで「西の魔女」の英国での生活を読むような心持がする。表紙の素敵な写真は星野道夫氏の手になるもの。