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続 ゆうけいの月夜のラプソディ 的な

新釈走れメロス / 森見登美彦

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二回目の直木賞候補も惜しくも落選したモリミンこと森見登美彦の、名作パロディ集。安定の京都大学腐れ大学生シリーズだが、さすが名作を下敷きにしているだけあって暴走気味の走れメロスを除いては以外にシリアスだったりする。私の大好きな漱石夢十夜を用いた千野帽子の解説に見事やられた。

樹影譚 / 丸谷才一

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村上春樹の「若い読者のための短編小説案内」で論じられていた六編の短編の中で最も興味をそそられた一編。語り手が丸谷から小説内作家へ変わっていきその作家による小説内小説に移り変わって最後にその作家が異界に落とし込まれる、その手腕は見事。

夜行 / 森見登美彦

⭐️⭐️⭐️⭐️

 惜しくも直木賞受賞を逃した森見登美彦の作品。今までのコミカルな面の裏に隠されていた彼の闇の部分を見事にいたダーク・ファンタジー。でも語り口はやはり森見独特のものがある。

 

若い読者のための短編小説案内 / 村上春樹

⭐️⭐️⭐️

今年二月末に待望の新作「騎士団長殺し」が発売される村上春樹。彼の作品中の読み残しの一つ。第三の新人六人を作家の視点から遠慮なく読み解いていく、読者としての村上春樹、さすがの一言。

 

蜜蜂と遠雷 / 恩田陸

⭐️⭐️⭐️⭐️

 

今頃?と驚いた直木賞受賞作。さすがの表現力には舌を巻くが、コアなクラシック音楽ファンか、のだめカンタービレピアノの森が好きな人向け。

About Grace: A Novel / Anthony Doerr

⭐️⭐️⭐️⭐️

シェル・コレクター」「すべての見えない光」のアンソニー・ドーアの処女長編。予知夢を見る男の波乱万丈の人生。舞台はアラスカからカリブ諸島、そして25年の歳月を経て再びアラスカへ。最終章が深い余韻を残す。が、英語で読むと長い。